3. 異なる世界
平和な国の、平凡な日々の中で
事件や事故は、
ブラウン管の向こうの出来事だった。
暗いニュースに眉をひそめるけれど
怖いね。なんていうけれど
所詮他人事だったんだ・・・・・
何だろう・・・・・?
嗅ぎなれない、けれど身近だったような臭いがする
なんだか眩しい。
その臭いは、認識したと同時にどんどん強くなる
もう耐えられない!!
「・・・・・・・・・・・・・・・うそでしょ?」
目を開け飛び込んできた景色は、信じられないものだった。
身近だったはずだ。それは病院勤めだったからこそ。
それでも耐え切れないほどの・・・・血の臭い。
そこは、
見渡す限りの戦場だった。
・・・それも、おびただしい数の死者が横たわる。
眩しいはずだ。
焼け野原なのだから・・・
生の気配のない、音のない世界。
誰も生きていない、希望のない世界。
夢なんかじゃないと突きつける、死の臭い。
「いやぁ・・・・」
せめて視界を防ごうと
この世界を否定しようと
ピチャ・・・
濡れた感触に思わず手を引いた
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・・・・・・・!!!!!!」
一面の赤、赤、赤。
引いた手は血に塗れ、その先に見開いた目があった。
一目で生きていないとわかる。その首にはあるはずの身体がない・・・
グエエエッ、ゲホッゲホッ
耐え切れずに胃の中をすべて嘔吐しても、
知らぬ間に涙がほほを濡らしていることさえ、
気づかなかった。
私はどこに来てしまったのだろう・・・・
それとも
目を瞑れば、覚める夢なんだろうか・・・
夢なら早く覚めればいい。
この、救いようのない世界から。