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第四十七話:連鎖する怪現象

雨の夜。とある封鎖線の外側を警戒していた兵士が、遠方にある廃ビルの壁面に「何か動く黒い塊」を目撃した。懐中電灯を当てようとすると、それはぬるりと壁から垂れ下がるような姿をしており、一瞬にして地面に落下し、ドロリと広がって消えたという。翌日、現場を確認すると、そこには赤黒い粘液の跡がはっきり残されていた。

さらに、夜ごとに同様の目撃例が増える。まるで壁や天井から“瘤”のように出現し、重力に耐えかねて崩れ落ちるか、あるいは配管の隙間に吸い込まれて消えるらしい。出現場所はクレーターから離れた場所でも報告されるようになり、しかも建物の構造を問わず多数確認されている。

これらの正体は不明だが、先に述べた“再生力をもつ肉塊”のごく一部が地下水や配管を通じて流れ込み、ビルの内壁や天井にまで浸透しているのではないか――と推測される。もしそうなら、もはやクレーターだけを封鎖しても意味はない。街全体の裏側を“穴”の子孫が這い回り、時折その一端が壁の表面へ突き破るのだろう。


廃墟の建物はすでに老朽化が進んでいるが、その崩落速度があまりに速い――という声もある。わずか数年で、鉄骨が途中から折れ曲がり、コンクリートは砕け、壁の一面がずり落ちる。しかも、崩れた断面には、おぞましいほど黒く染まった金属や骨材がむき出しになっているケースが増え始めた。まるで肉片が張り付いたかのようにベタベタとこびりつき、異臭を放ち、酸化などとは異なる化学反応で腐食している。

まるで建物自体がゆっくりと“食われている”かのよう。金属、コンクリート、塗料、断熱材――あらゆる素材が肉塊の栄養源となり、次第にこの街の物質が“おじさんの尻の穴”の巨大ネットワークへ組み込まれていっている――そう考えると、背筋が凍る。

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