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第十五話:閉鎖に向けた攻防

数日のうちに、病院の関係者たちによる「施設の部分封鎖」が現実味を帯びてきた。具体的には、例の巨大肉塊がある隔離室を中心に、一帯を徹底的に物理的遮断する。そこに至る廊下にはバリケードや仮設の壁を築き、外気への通気口も防毒処置を施す。さらに緊急用の排気ダクトを設置する計画も立てられたが、予算もスタッフも足りない。

一方で、完全放置になれば院内に染み渡った悪臭や液体は、いずれ施設の土台や下水管、あるいは建材の継ぎ目を通して外部に漏れ出すだろう。それを食い止めるだけの工事をするには時間も手間もかかり、なにより作業中のスタッフへの危険が大きすぎる。こんな途方もない対策を、誰がどうやって進めるというのか。


さらに、火葬や焼却に対する議論も、いまだ根強く続いていた。

「強引でも何でも、爆破に近い形で一気に焼き尽くしてしまえばいいんじゃないか?」

一部の過激な意見を持つ者はそう主張する。だが、もしそれが失敗に終われば、肉塊は外部へ飛散するリスクを高める。爆発や炎の衝撃によって飛び散った破片が広範囲に落下し、そこからまた増殖が始まる可能性は否定できない。実際、この未知の組織はどこへ飛んでも、養分となる物質さえあれば成長を続けるのではないかと恐れられているのだ。

こうして議論は平行線をたどり、一度は「閉鎖」へ傾きかけた計画も、次々と現場の難題につまずく。連日、緊迫した会議が行われても、最終的な結論は出ないまま時間だけが過ぎていった。


その間にも、隔離エリアの“穴”は静かに、確実に、広がりを増しているという報告が聞こえてくる。先日までは高さが腰程度だった黒紫の膨塊が、もう胸のあたりにまで達しているかもしれない――そんな噂すら(ささや)かれるほどだ。流れ出す液体を拭き取るスタッフも数を減らし、結果として一段と広範囲に薄黒い水溜まりができやすくなっていた。放置された水溜まりから立ち上る臭気は凄絶で、遠く離れた廊下まで鼻を突くほどである。

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