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1000字短編

コンビニ弁当。からの、紙飛行機。

作者: 蘭鍾馗

サラリーマン時代のことをちょっと思い出しながら書いてみました。

レシートは、1品だけ買ったときのやつが、縦横比が一番良くて、よく飛びますね。

 今日の夕飯はコンビニの唐揚げ弁当。


 食べ終わってレシートを取り出し、紙飛行機を折る。上手くやるとこれが結構飛ぶ。それ。

 って、しまった。向こうの机に飛び込んだ。


「何やってるんですか。」

 ごめん。ちょっと飛びすぎた。

「そうじゃなくて。」

 食事してたんだよ。

「報告書の5章は?」

 まだだよ。最後の考察をいま書いてる。


 明日は、この業務の完了検査。客先の検査官に報告書の内容を説明して、検査に合格しなくてはならない。報告書がないと検査が受けられないので、今日は徹夜なのである。


「5章以外の所、出力してパイプファイルに綴じますね。あと空のCDに表書き書いて印刷しときます。」

「うん、お願い。」


 昔は金文字黒表紙の表紙を印刷業者に注文して、特記仕様書にある部数を作らなければならなかったが、今はメインの納品物は電子データの入ったCDであり、紙の報告書はあくまでおまけ。だから紙報告書は質素だ。


「いい時代になったなあ。」


「何がですか?」

「報告書何部も作らなくて良くなったし、中身もPCの中で全部作れるし、出力も1部ずつソートしてA3折込まで機械がやってくれる。昔は全部手作業だったんだよ。」

「えー。」

「たとえば写真。昔はデータ上で画像が貼れなかったから、写真別に用意して、文章は写真の所のスペース開けといて、出力してから糊で貼ってたんだよ。」

「うそ!?」

「で、そうやるとコピー機の自動送りにかけられないから、そのページだけ別にコピーして、あとで差し込む。」

「信じられない。」


「糊はね、貼ったあとでも剥がせるペーパーボンドを使うんだ。こんなやつ。」

 机の引き出しにあった未使用品を見せる。糊のチューブと、小さな短冊状のゴムの塊が入ってる。

「これは何ですか?」

「これはね、こうやるんだよ。」

 短冊の両端を合わせて指で押さえると、くっついて輪になる。それを机の上に置く。くっついた所がだんだん剝がれてきて、全部剥がれた瞬間ゴムの弾力で飛び上がる。


 ぴょーん。


「面白いでしょ?」

 彼女が笑い転げる。本当は糊を除去するリムーバーなんだよ。


「食事買ってきます。」


 5章ができた。彼女に送って納品データを作ってもらう。

 しばらくすると、レシートの紙飛行機が飛んできた。


「できました。」

 納品物を確認する。うん大丈夫。


「私、5月で退職するんですよ。田舎帰って結婚します。」

「そうなんだ。」

「じゃ、お先です。」


 紙飛行機には、「唐揚げ弁当」と印字されていた。













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