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「無人島に動物を一匹だけ連れて行けるとしたら、次のうちからどれを連れて行く?馬、羊、孔雀、虎」
そんな性格分析が一昔前に流行したことがあった。
馬は仕事、羊は家族、孔雀は金、虎は栄誉を人生において一番大事に考えているというオチだ。
早川は必ず馬を連れて行くと答えた。馬=仕事が一番大事という答えを早川は最初のうちは否定をしていた。
自分が馬と答えた理由は、馬は従順で一度信頼されれば裏切らない生き物だし、移動手段にも使える。食料も飼葉を与えておけばいい。
無人島に飼葉など当然用意できないだろうから、その辺に生えている雑草でも馬は十分に生きていける。共に無人島生活という、窮地を乗り越えるには、最良の動物である。という理由から早川は馬を選んだ。
理由はそれだけで、馬を選んだことが、仕事第一主義と捕らえられてしまうのは、ナンセンスだと早川は思っていた。
だが、何人かの女性と付き合っていくうちに「あながちはずれてはいないかも」と思いだした。
F1推進事業部の仕事は春から秋のレースシーズン中、世界各地を回る。広報の早川ももちろんチームに帯同して世界各地をまわる。その期間は仕事一筋で、他の事は見えなくなる。
デートよりもチーム、家族団欒よりもチームミーティング、ロマンチックな乾杯よりも表彰台でのシャンパン。
早川がプライオリティとして一番に上げるのはF1で、自分の子孫を残すという、生物としての本能は二の次、三の次に値した。そんな早川は女性という生き物にとって、結婚の対象としては不適格な要素を多分に持ち合わせている生物なのかもしれない。
早川に向けられる女性の愚痴は、決まっていた。
「あなたはいつも仕事。そんなに仕事が好きなら仕事と結婚すればいいわ」
そんな言葉を何人もの女性から浴びせられると、「自分は人生の中で仕事が一番大事なのかもしれない」と思うようになってきた。
早川は結婚願望がなかったわけではない。結婚よりも少しだけ仕事に興味があっただけだ。F1の仕事に。
と、自分では思っている。
つづく