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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
最終章 そして、白い鳥たちは大空へ向かう
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2.


「……はぁ~。最高に美味しかったのです!」


 颯希が幸せそうな顔でケーキと紅茶を綺麗に平らげると、嬉しそうに言葉を綴る。


「でしょ?♪良かったらまたみんなで来ましょうよ♪」


「はい!今度はみゅーちゃんたちも誘いたいですね!!こんなに美味しいのなら、是非とも味わって欲しいのですよ!」


 月子の言葉に颯希が嬉しそうな表情でそう語る。


「確かにうまかったな。紅茶も美味しいし」


 静也が紅茶を啜りながら満足そうに言葉を言う。


「この店は両親が教えてくれたんだよ♪一度行ったらまた行きたくなるってね♪」


 月弥が楽しそうに言葉を綴る。


 そして、時間が夕刻に差し掛かったのでそれぞれ帰路に着くことにした。




「はぁ~……!楽しかったし美味しかったですね!!」


「そうだな。あいつのおちゃらけた感じはなんとなく鼻につくけど、悪い奴ではないんだなという事は分かるし……」


 帰り道、途中で月子たちと別れて颯希と静也が並んで帰り道を歩く。相変わらず、静也はあまり月弥のことをよく思っていない感じだが嫌いではないのだろう。ただ単に性格が合わないだけのような感じがする。


「あははっ!静也くんは月弥くんのこと苦手ですよね!」


「まぁ……な……。軽い奴だけど、片割れのことを大事にしているのは見ていて分かるぜ?きっと、あいつ的に片割れを守らなければって言うのがあるんだろうな……」


 先程のカフェでも、月弥は月子をとても気遣っている場面が多々あった。月子を守るのは自分の役目だともいっても過言ではないくらい、月子のことを大切にしているのが伝わってくる。月子もそんな月弥を慕っているのか、素直に応じている。きっと二人の仲に他の人が割り込めないくらいの強い絆があるという事が傍から見ていても感じ取れる。


「……仲が良いのはいいことだけどさ、どちらかに彼氏か彼女ができたらどうなっちまうんだろうな?」


 静也が二人のあまりの仲の良さにそう疑問を呈す。


「確かにそうですね!でも、そうなってもきっと仲は良いままだと思いますよ!」


「……そうかな?」


 颯希の言葉に静也は曖昧な返事をする。なぜなら、静也の中である一つの疑問があるからだった。




「お父さん、ちょっと聞きたいことがあるのですがいいですか?」


 夕飯が終わり、リビングでくつろいでいる誠に颯希がそう言葉を発する。


「ん?どうした?」


 読んでいた新聞から誠が顔を上げる。


「その……、十二年前に起きた放火事件の事が聞きたいのです」


「十二年前……、あぁ………あれか……」


 颯希の言葉に誠は少し考えると、何のことか分かったらしくその話をしてくれた。



 事件は八月十一日の夜に起こった。場所は海に近い、小高い丘のような雑木林の中にある廃屋になった建物で、夜の八時頃に火が立っていることが分かり、消防署が消火に当たった。幸い、近くに民家がなかったので被害はその建物と周りの木が燃えたくらいで済んだという。当時、放火の疑いが出てきたので警察が犯人を捜したが、なぜか途中からその捜査がされなくなった。警察関係者も特に被害はないという事でそのことに特に気にする人はいなかったとのこと。そうしていく内に事件は風化されて何事もなかったように過ぎ去っていった。



「……じゃあ、その放火の犯人も分かっていないという事ですか?」


 颯希が驚いたように言葉を発する。


「あぁ、急にその捜査が打ち切りになってね……。もしかしたら、子供の悪戯だったかもしれないという事もあり、捜査はされなくなったんだ」


 誠が少し不満げに言葉を綴る。


「でも、実際のところは分からない……という事ですよね?」


「そうだな……。でも、どうして十二年前の放火事件のことを聞きたくなったんだ?」


 颯希が急に十二年前の放火事件のことを聞くので、誠が疑問に思い颯希に問う。


「その、実は――――」


 そう言って颯希は月子と月弥に言われたことを話した。二人に頼まれて、一緒に十二年前の放火事件を調べることになったこと。理由は母親がミステリー小説家で話の種がほしいということを誠に説明していく。


「まぁ、調べるのは構わないがくれぐれも危険なことはするんじゃないぞ?」


「はい、そこは気を付けます」


 誠の言葉に颯希は素直に返事をする。


 そこへ、食後のお茶を入れた佳澄がやってきた。


「あら、何の話をしていたの?」


 佳澄がお茶をローテーブルに置きながら言う。颯希は先程の話を佳澄にも話した。


「……そう、月子ちゃんと月弥くんに頼まれたのね」


「お母さん、月子ちゃんと月弥くんのこと知っているのですか?」


 佳澄の言葉から二人のことを知っているのかもしれないと思い颯希がそう尋ねる。


「えぇ。ほら、そこで家政婦している知登世さんっているでしょう?お母さんと知登世さんは同じ家政婦協会の人でね。私はもう辞めているのだけど、今でも時々連絡を取ったりするのよ」


「えぇっ!!お母さん、家政婦の仕事をしていたのですか?!」


 佳澄の過去にしていた仕事を知り、颯希が驚きの声を上げる。


「そうよ。その仕事の関係でお父さんと出会ったんだから」


「えぇっ!!!」


 更なる佳澄の言葉に颯希は更に驚きの声を出す。


「え……えっと……、お父さんとお母さんが出会った関係が家政婦というのはどういうことでしょうか??」


 家政婦と警察官がどこでどうつながっているか分からずに颯希の頭の上ではてなマークが飛び交う。


「お母さんね、お父さんの実家に家政婦として働いていたのよ。そこで、お父さんに見初められてね……。それで、結婚した……ということなの」


「そ……そうだったのですか?!全然知らなかったです……」


 両親のなれそめ話を聞いて颯希が驚くと同時に少し放心している。


「颯希はこういった話はあまり興味ないと思ったから話したことがなかったわね。……颯希もそういうことが気になる年齢になってきたのかしら?」


 佳澄が微笑みながらどことなく気になる言い方をする。


「ふふっ。恋の相談ならお母さんがいつでも聞いてあげるわよ?」


「いや……えっと……大丈夫です……」


 佳澄の言葉にどう反応していいか分からずに颯希が困ったような言葉を発する。どことなく顔を少し赤らめている颯希に佳澄が心の中で何かに気付くが、あえて何も言わない。


「あ……明日の準備をしてきますね!!」


 颯希が急に立ち上がり、リビングを出ていく。


「……颯希は急にどうしたんだ?」


 颯希の行動に誠は何も分からないのか頭の上ではてなマークを浮かべながら言葉を綴る。


「……そうね。どうしたのかしらね?」


 佳澄がその様子にくすくすと笑いながら返事をした。




「十二年前の放火事件?」


 キッチンで拓哉がてんこ盛りのご飯を盛りながら、静也の話に声を出す。


「あぁ、ちょっと訳あってさ、その事件を調べることになったんだ」


 拓哉からてんこ盛りのご飯を受け取りながら静也が答える。


「へぇ~。そういえばそんな事件があったような……」


 拓哉が昔のことなので、記憶を辿りながら答える。


「まぁ、別にいいんだけどさ。これも勉強だと思えば」


 静也がご飯とおかずをかき込みながら言葉を綴る。


「四人で捜査ねぇ~。ちょっと心配だな……」

「は?何がだよ?」

「いや、その月弥くんって子に颯希ちゃんが持ってかれないかなぁーって……」

「……は?」

「静也は月子ちゃんに恋しないようにね!」

「するかよ!」

「いつでも颯希ちゃんを一途に想っていないとだめだよ?」


「う……うるせぇぇぇぇぇ!!!」


 拓哉のとんちんかんな言葉に静也が叫び声を上げる。その後も、拓哉は心配なのか、「その月弥くんはカッコイイの?」とか「月子ちゃんに恋しちゃだめだよ?」とか、よく分からないことを話し続けていた。



「……全く、父さんは何を言ってるんだか……」


 夕飯が終わり、自室に戻った静也はお腹いっぱいで少し横になるためにベッドに入った。拓哉の言葉の意味がよく分からなくてため息を吐く。


「……颯希があいつを好きになるなんて……ない……よな?」


 小さな声でポツリと呟く。それと同時になんだか不安も押し寄せる。


 自分はまだ告白もしていない。ぐずぐずしていたら他の奴に颯希を持っていかれるかもしれない……。


 そんな不安が静也の中で駆け巡っていった……。




「月弥……」


「……また、不安が押し寄せてきた?」


 月弥がお風呂から出て自室に行こうとしたら先にお風呂から出ていた月子が枕を持って不安そうな顔で立っていた。


「大丈夫だよ……。今日も眠るまで傍にいてやるから……」


 月弥がそう言って月子の部屋に一緒に行く。


 部屋に入ると、ベッドの上で二人で横になり、月子の頭を優しく撫でる。


「……ねぇ、また子守唄を歌ってよ……」


 月子のお願いに月弥が頭を撫でながら優しく子守唄を歌う。


 優しい歌声が部屋に響く……。


 しばらくして、月子から寝息が聞こえてきたので月弥はそっとベッドから降り、静かに部屋を出ていった。




友理奈ゆりな、夕飯よ……」


 有子が友理奈の部屋の前に食事を持ってくる。


 カフェの仕事が終わり、旦那と家に帰ってくると、有子は急いで夕飯の準備に取り掛かった。そして、いつものようにお盆にのせて友理奈の部屋に夕飯を運ぶ。


「ねぇ……、たまにはお父さんと三人で夕飯を食べましょうよ……。このままじゃ――――」


 そこまで有子が行った時だった。


 部屋のドアがゆっくりと開き、友理奈が顔を出す。


「出来るわけないじゃない……。だって……私の……」




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