7.
数日は特に何事もなく過ぎていった。
そして、いつものようにお昼休みに中庭に集まり、お弁当を広げる。
「……なんか、最近視線を感じるのよね……」
みんなでお昼を食べている時に亜里沙がポツリと呟く。
「「「視線?」」」
亜里沙の言葉に颯希たちの声が重なる。
「まぁ、嫌な視線ではないんだけどね。なんとなく見られているようなそんな感じよ」
「被害はない感じなのでしょうか?」
「全くね」
亜里沙の言葉に少し不安になった颯希だったが、大丈夫という事を聞いて安心する。
そして、いつものようにお昼休みを過ごした。
その次の日だった。
来斗がいつものように登校するために学校に向かっている時だった。
「ん?」
前方にロープが見えて、ふいに足を止める。ロープは道の幅を一直線になるように置かれている。もしやと思い、気を付けながら歩く。そして、ロープの近くまで行くと、急にロープが足元まで上がった。
――――ヒョイっ!!
来斗がそのロープを足を上げて避ける。
(……やっぱり仕掛けてきやがったな)
一人になったら恐らくまた狙われる可能性があるというのを颯希と静也に聞いていたのでこういうことがあるのは前もって予想している。
「おはよー、来斗」
「おはよう、来斗くん」
来斗が学校に着き、教室に入ると静也と雄太が声を掛けてきた。
「ちーっす!……とうとう仕掛けてきたぜ」
「そろそろだとは思ったけど、やっぱりきたか……」
来斗の言葉に静也が「やはりな」という感じで言葉を綴る。
「とりあえず、昼休みにみんなに報告だね」
雄太がそう言ってその場を締めくくる。
「あっ、僕、ちょっと図書室に行ってくるね。今のうちに本を返しておくよ」
雄太はそう言って教室を出ていく。図書室に向かう廊下を歩いているところだった。二人の女子生徒の話し声が聞こえてくる。
「亜里沙先輩、綺麗だったわね~!」
「相変わらず大好きよね」
「だって、素敵なんだもん!!」
二人の女子生徒が話をしている。
その横を雄太が通り過ぎ、女子生徒の横を通る。その時に雄太が何かに気付いたが確信がないため、そのままその場を通り過ぎる。
「……やはり、仕掛けてきたのですね」
お昼休みになり、来斗が登校途中で起こったことを話す。その話を聞いて颯希がそう言葉を綴る。
その時だった。
「……?」
亜里沙が何かを感じ、視線を感じた方に向ける。
「あっちゃん??」
颯希が亜里沙の様子に気付き、声を掛ける。
「気のせいかしら……?」
「また、視線を感じたのですか?」
「なんとなく……だけどね。まぁ、嫌な感じはないし、大丈夫よ」
颯希は亜里沙の言葉に少し引っ掛かりは感じるものの、嫌な感じはないというので安心できる。だが、一体誰がその視線を送っているのかが気になっていた。
「……ねぇ、その『妃』って亜里沙さんの可能性はないかな?」
「「「え?」」」
雄太の言葉に颯希たちが声を上げる。
「ほら、美優さんも光の国の妃役だけど、亜里沙さんも闇の国の妃役じゃない?だから、脅迫状にあった『妃』って亜里沙さんの可能性もなるんじゃないのかな?」
確かに脅迫状には『妃』というだけで、『光の国の妃』とは書かれていない。確かに来斗の役の相手でいけば美優になるが、絶対とは言い切れない。その可能性は十分にある。ただ、その場合は雄太に脅迫状が来るはずだ。しかし、脅迫状が送られてきたのは来斗の方だ。
「これは僕の推測だけど、劇の練習の間ってみんなで帰ってたでしょ?それで、最後に来斗くんと亜里沙さんが二人になるよね。もしかして、それを見て来斗くんに脅迫状を送ったんじゃないかな?後、もう一つ気になる事があるんだ」
雄太がそう言ってある事を話す。その話に颯希たちは驚きを隠せないが、その可能性である計画を立てた。
学校が終わり、来斗は一人で帰り道を歩いていた。その後をある影がこっそりと付ける。見つからないように影に隠れながらタイミングを見計らっている。
そして、人通りが少ないところでその人影が野球ボールを手に持ち、来斗に投げつけようとした時だった。
「待ちなさい!!」
そこへ、後ろから声がして人影がその方向に顔を向けた。
「なっ?!」
後ろにいる人たちを見て人影が驚きの声を発する。
そこにいたのは、颯希や静也たちだった。