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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
〈番外編〉 恐怖の脅迫状?!
84/111

2.


「……そこ!動きをもっとしなやかに!!」


 演劇部の牧村まきむらの指導で颯希たちは日々劇の練習に明け暮れていた。毎日、遅くまで練習して帰り道もみんなで一緒に帰る。途中で美優と雄太と別れて、その次に颯希と静也と別れる。最後に亜里沙と来斗がいつも残り、二人で帰り道を歩いて行く。


「……お前、セリフの飲み込み、はぇーよな~」

「あれくらいなら簡単よ。私を誰だと思っているの?」

「相変わらずの性格だな……。可愛くねぇ……」

「来斗みたいな運動バカに言われたくないわ」

「……うるせぇ」


 亜里沙と来斗が二人になると帰り道はいつもこの調子だ。クールでミステリアスな亜里沙から見たら、来斗は運動神経が良いだけの「運動バカ」に映っているらしい。決して来斗も馬鹿ではないのだが……。


「……はぁ、なんかとんでもないことになっちまったな」


 来斗がため息を吐きながら言葉を綴る。勝手に役を決められ、練習に明け暮れる日々に少し疲労が溜まっていた。しかし、みんな頑張っているので手を抜くことはない。


「今日もセリフ合わせ、付き合ってくれな……」

「はいはい」


 ここの所、来斗は亜里沙に頼んで電話でセリフ合わせに付き合って貰っていた。最初はセリフ合わせに亜里沙は渋ったのだが、ある一言を付け加えてそれを了承することにした。


「セリフ合わせをして欲しい?!」

「あぁ!頼むよ!亜里沙!」

「……うーん、そうね……。なら、『お願いします、女神様』といえば付き合ってあげるわよ?」


 この時の亜里沙の顔はどこか小悪魔のように妖艶な表情を浮かべながら微笑んでいる。


「な……なんだよそれ?!」

「あら?イヤ?なら、この話は無かったことになるわね♪」

「ぐっ……」


 亜里沙の言葉に来斗が言葉を詰まらす。


「お…お願いします……女神様……」


 半ばやけくそで言葉を綴る来斗。


「気持ちがこもってない!!」

「お願いいたします!女神様!!」


 亜里沙の言葉に来斗が手を合わせながら叫ぶように言う。そして、亜里沙はセリフ合わせに付き合うことになり、今に至る。


「じゃあ、また後でな~」

「じゃね~」


 T字路のところで亜里沙と来斗が別れる。


 そんなこんなでドタバタしながら練習の日々が過ぎていった。


 そして本番当日。

 体育館には全校生徒が集まっていた。有名な双子が台本を書いた劇という事もあり、あちらこちらから劇の開幕を心待ちにしている声が聞こえる。


「どんな劇かな?」

「例の双子が台本を書いたって話だぜ」

「主役の子たちって事件を解決している子たちでしょう?」

「この前の連続殺人事件も解決したみたいだぜ」

「すごいわよね~」


 観客席からそんな声が聞こえる。



 そして、開演ブザーが鳴り響き、幕が上がった。物語は光の国と闇の国が互いにいがみ合っており、好奇心旺盛な光の国の姫が闇の国に足を踏み入れることから始まる。そして、そこで、闇の国の王子に出会い、仲良くなっていく。しかし、それを知った光の国の住民が「姫を闇の者が誑かした!」と言い、光の国と闇の国で戦争が始まる。そこへ、割って入るようにその場に来た光の国の姫が強く言い放つ。


「私たちは同じ人間です!いがみ合い、戦争をしても苦しむ人が増えるだけです!」


 凛としながら言い放ち、戦争を止める。そして、歩み寄ろうと努力することを提案する。双方はそれを受け入れて、お互いの国が歩み寄る努力をすることを誓う。


 物語の終盤は光の国の姫と闇の国の王子が手を握り締めながら言葉を綴る。


「二つの国が友好的な国になるように、僕が大人になったら君を迎えに行くよ」

「はい、お待ちしています……。王子……」


 そこで舞台の幕が下りた。



 観客席から盛大な拍手が巻き起こる。中には涙ぐんでいる者もいる。劇は大成功し、幕を閉じた。


 そして、最後に颯希たちが再度、舞台に並んで出てきてお辞儀をする。その時、一人の生徒が瞳をキラキラさせながらある人物を食い入るように見つめていた……。




「「「お疲れさまでしたー!!」」」


 無事に劇が終わり、颯希たちが仲間内で乾杯をする。


「なんだか楽しかったですね!」


 颯希が嬉しそうな顔で言葉を綴る。


「はぁ~……。やっと肩の荷が下りたぜ……」


 静也が首を鳴らしながら一息つく。


「ふふっ。最初はどうなるかと思ったけど成功して良かったね!」


 美優がおっとりした口調でそう話す。


「そうだね。まさか劇で役をやる事になるなんて予想外だったけど……」


 雄太も無事に終わってホッとしたのか、安心したように言葉を綴る。


「やーっと、これでセリフ合わせから解放されるわ!」


 亜里沙が「やれやれ」という感じでため息を吐きながら言う。


「でも、なんやかんやで颯希の言う通り確かに面白かったな!役を演じると違う自分になったみたいで結構楽しかったぜ!」


 来斗が無事に終わった安心感とちょっとした気持ちを述べる。


「みんな、お疲れさま♪」


「月子ちゃん!月弥くん!」


 そこへ、双子の片割れである月子が声を掛けた。隣には月弥もいる。双子たちの手にも飲み物があり、仲良く葡萄ジュースを飲んでいた。


「なかなかいい演技だったよ。やっぱり劇にして正解だったな♪」


 月弥が嬉しそうな顔でそう言葉を綴る。


「てめぇらのお陰で大変だったがな……」


 静也がどこか怒りの表情で低い声を出しながら言う。


「でも、静也くんの演技もなかなか良かったじゃないか♪」


「気やすく名前で呼ぶんじゃねぇよ……」


 月弥が「あはっ♪」という感じでなれなれしく名前で呼ぶことに静也が怒りモードで言う。


 しばらく、ニコニコ顔の月弥と怒りモードの静也の睨み合い(?)が続く。


「まぁまぁ、月弥もそれくらいにしておきなさい♪」


 月子がそう言って二人の間に入る。


「……まぁ、これからも機会があったらよろしく♪」


 月子がにっこりと微笑みながらそう言葉を綴ると、月弥と共にその場を去っていく。


「……でも、さすがミステリー作家の母親の血を引くだけのことはありますね!今回の台本を読んだ時はびっくりしました。中学生であれだけのものを書ける人が本当にいるんだなって思いましたよ!!」


 颯希が興奮状態で話す。


「確かにすごいよね。将来作家と脚本家を目指しているだけのことはあるよ」


 雄太が颯希の言葉に同意するように言葉を綴る。


「凄いかもしれないが、俺はさっきの最後の言葉がなんか引っ掛かるぞ?」


 静也が腑に落ちない顔でそう言葉を吐く。



 そんなこんなで打ち上げも終わり、颯希たちは学校を出た。みんなで仲良く話しながら帰り道を歩く。そして、それぞれが家に帰り、家でのんびりとくつろいでいた。



「お疲れ様、颯希」


 佳澄が食後のお茶を入れながら颯希に労いの言葉を掛ける。


「とても良かったわよ。役もとても颯希らしかったわ」


 佳澄が嬉しそうに話す。


「観に来てくれたのですね!ありがとう、お母さん!」


 佳澄が見に来てくれていたことが嬉しくて颯希の顔から笑みがこぼれる。


「ほう……、そんなに良かったのか?なら、お父さんも見たかったな」


 誠が新聞を広げながらそう言葉を綴る。


「でしたら、学校のホームページにアクセスしてみて下さい。そこで、今日の劇を後日、ホームページで流すって言っていました!」


 颯希の言葉に誠が「じゃあ、今度見せてもらうよ」と言って、颯希からホームページのアドレスを聞く。


「あっ、じゃあ俺も見てみたい」


 その場にいる透も颯希からアドレスを聞く。


 結城家の和やかな一コマだった。



「静也~!!すごく良かったぞ!!」


 静也が家に帰るなり、拓哉がいつものようにてんこ盛りのご飯をよそいながら嬉しそうに口を開く。


「……観に来ていたのか?」

「うん!メールで回ってきたからね!」


 どうやら、連絡網で二年生が劇をするので親御さんは良かったら見に来てくださいという連絡メールが送られてきて、拓哉は見に行ったのだという。今回劇に出るという事を拓哉に話していたが、仕事の関係で無理と思っていたので「観に来られる」という事は伏せていたのだった。


「仕事が立て込んでいるって言ってなかったか?」

「うん!だから、抜け出してきた!!」

「はぁっ!!」

「そりゃそうだろう!大事な息子が劇で主役をやるんだから仕事を抜け出してでも見に行くさ!!なぁに、仕事のことなら問題ないよ!今から神業で仕上げるから♪」


 そう言いながら、またどこから取り出したのか、夕飯を食べながらデザイン画に取り掛かる。ペンを本当に神業のようにすらすらと動かし、デザイン画を仕上げていく。


「食べてる時に仕事すんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」


 静也の中の変な真面目さか、食事中にスマートフォンを見るのは行儀が悪いとかいう理由で静也が拓哉に怒る(ふつうは逆だが)。そして、「食べている時はちゃんと食べろ!」と、どっちが大人でどっちが子供か分からない会話をする。


 そんな夕飯を過ごしながら夜が更けていった。



「うーっす!静也!」


 登校途中で来斗が静也に会い、声を掛ける。


「よう、来斗」


 静也が寝ぼけ眼をこすりながら挨拶をする。


「おはよう。静也くん、来斗くん」


 途中で雄太と合流して三人で仲良く登校し、学校に着くと玄関で上履きに履き替えるのに来斗が下駄箱を開く。


「あれ?」


 来斗が下駄箱の中にある手紙を見て声を出す。来斗の様子に気付いた二人が靴箱を覗き込む。


「手紙……?」


 雄太が呟く。


「……てことはまさか……ラブレター?!」


「声がでかい!!」


 静也の出した大声を叱咤するように来斗が声を上げる。そして、手紙を取り出た。


「俺についに春が……!あぁ………、嬉しすぎて焼きそばパンが食べたい……」


「「なんで焼きそばパンなんだよ?」」


 来斗の言葉に静也と雄太がすかさずツッコミを入れる。


「とにかく、開けてみたら?」


 雄太が言う。


「爆弾手紙だったりしてな!」


 静也がからかうように話す。


 そんな二人に急かされて、来斗がいそいそと手紙を広げる。


 次の瞬間…………。



「……なんじゃこりゃ?!」




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