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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
第五章 花を愛でる小人たちは悲しみの雨を降らせる
81/111

17.


「木津警部補から聞いたよ。今回の連続殺人事件を見事解決したそうだね」


 夜、夕飯が終わり、颯希がリビングでくつろいでいると誠がそう声を掛ける。


「凄いじゃないか、事件を解決するなんて……」


 同じようにリビングでくつろいでいる透が感心したように言葉を発する。


「あの……、お父さん、八木さんは何かの罪に問われるのでしょうか……?」


 事件を解決したのにどこか顔が浮かない表情をしていた颯希が気になっていたことを思い切って尋ねる。


「あぁ………、その人は悪意があってしたわけじゃないからね。だから、今回は厳重注意で済んだよ。どうやら、栗田と言う人から『眠れないから睡眠薬を少し分けて欲しい』と頼まれて、放っておけなかったんだそうだ……」


 颯希がその話を聞いてホッとする。八木の性格を考えると困っている仲間をそのままにしておけなかったのだろう……。そう考えると、栗田たちが八木の好意を利用したという事に悲しさも感じる……。


「まぁ、勘違いで犯行をしたとはいえ、元々は被害者が暴行事件を起こさなければ今回の事件は起きなかったんだからな……。今回の犯人たちもある意味被害者だよな……」


 透が今回の事件をそう話す。


 確かにその通りだった。この事件の発端は「暴行事件」がきっかけで起こった。あんな事件が起きなければ今回の事件は起きなかったわけだし、殺された人たちは周りからもよく思われていない悪党ばかりだった。唯一生き残った岡本も上田たちに脅されて犯行に及ぶ羽目になった。


 考えれば考えるほど、悲しい事件……。


 犯人を捕まえることができたのは良かったが、これは果たして良かったことなのだろうか……?



(なんだか、今回の事件はとても気持ちを複雑にさせます……)



 颯希が心の中でそう呟いた。




「事件解決おめでとう!疲れただろ?静也の好きなエビフライとハンバーグだよ!」


 拓哉がてんこ盛りのご飯を静也に渡しながら笑顔で言葉を綴る。


「……まぁ、解決したとはいえ、複雑だけどな」


 静也がてんこ盛りのご飯を受け取りながらそう言葉を綴る。


「いやぁ~、もう立派な警察官だね!静也の将来が楽しみだよ!」


 拓哉がウキウキしながらそう言葉を発する。


「あっ!でも、静也と颯希ちゃんが警察官になったら結婚のタイミングを逃すかもしれないから、警察官になる前に結婚した方がいいのかな?」

「な……何言って?!」

「だって、その方が結婚式もあげやすいしさ!」

「と……当分先の話を今すんじゃねぇ!!」


 静也がゼイゼイと言いながら反論する。


「……と、いう事は、静也……」


 急に拓哉の表情が真剣なものになる。


 そして……、


「やっぱり静也も颯希ちゃんと結婚するつもりでいるんだね!!」


 拓哉が真剣な表情から一転、満開の笑みになり嬉しそうに言葉を綴る。


「ち……ちがっ……!!」


 慌てて静也が顔を真っ赤にしながら否定しようとする。だが、反論の言葉が出てこない。


「うんうん。静也と颯希ちゃんはお似合いだからね!颯希ちゃんの性格でいくと、静也が好きになるのも無理ないよね!じゃあ、やっぱり結婚のタイミングは警察学校を卒業したらすぐだね!」


 拓哉がそう言いながら「急いで結婚式の衣装のデザイン画を描かなきゃ!」と言いながら、どっから取り出したのか、食事中にも関わらずにデザイン画の作成に取り掛かる。



「や……やめんかぁぁぁぁぁぁ!!」


 二人だけの家に静也の叫び声が響く。


 相変わらずの親子漫才を繰り広げながら楽しい夕飯が続いた。




「ただいま、姉さん……」


 雄太は帰ってくるなり、仏間に行き、手を合わせながら姉に自分が帰ってきたことを報告する。


「あら、雄太。帰ってたの?」


 仏間に入ってきた母が雄太に声を掛ける。


「ただいま、母さん」


「……あれから、もう二年が経つのね……」


 母も仏壇の前に座り、手を合わせる。


「……いつだったかね、警察が来たの。暴行事件のことで……。その事件で一人の死亡が確認されたそうよ……」


「……うん……」


「雄太……、やっぱり知っていたのね……。真莉愛が事故ではなく自殺だってこと……」


 母の問いに雄太は何も答えない。


「……そろそろ、夕飯の準備をするわね」


 母がそう言って席を立つ。そして、仏間をそっと出る。


「……姉さん……」


 雄太がそう呟き、一筋の涙を流す。


 そして、その涙を拭うと仏間を後にした……。




「……今度、みんなで美亜さんの墓参りに行こうと思っているのです」


 颯希がリビングで新聞を広げてくつろいでいる誠にそう話す。


「うん、そうだね。行ってくるといいよ」


 誠が優しく微笑みながらそう言葉を綴る。



 美亜が自殺ではなく、事故だったという事が警察の調べでも判明した。


 そして、あの事件解決の日、凛花や理人もいる前で、颯希が美亜の墓参りに行こうという提案をしたのだった。




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