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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
第五章 花を愛でる小人たちは悲しみの雨を降らせる
76/111

12.


「はぁ~……、なかなか手掛かりがつかめません……」


 颯希たちが近所の聞き込みをしてみたが、特に今回の事件の情報は得られなかった。三人で公園のベンチに座りながら特に情報が得られないことに落胆する。


「お父さんも、今回の事件は難航しているとは言っていましたが確かに犯人になり得そうな人が多すぎて何処から捜査をすればよいかが見当つきませんね……」


 颯希がため息をつく。


「どうする?これ以上聞き込みをしても有力な情報は得られないと思うぜ?」


 静也もため息を吐きながらどうすれが良いのか分からない表情になっている。


「警察も今回の事件は手を焼いているくらいだからね……。僕たちではなかなか無謀なことかもしれない……」


 雄太が弱気な言葉を言う。



「やっぱり、颯希ちゃんに静也くんじゃない!」


 そこへ、掛けてきた声に三人が顔を上げる。


「凛花ちゃん?!」


 声を掛けてきたのは制服姿の凛花だった。


「どうしたの?三人で項垂れていたけど。なにかあった?」


 凛花の言葉に颯希が今回の事件のことを調べているが手掛かりがないことを話す。そして、雄太とは初めて会うのでお互いに軽く自己紹介を交わした。


「……そっか~。事件の捜査かぁ~。で、煮詰まっているわけね。なら、そういう時は気分転換も必要なんじゃないかな?」


 凛花が微笑みながら言う。


「良かったら、また施設にボランティアに来る?入間さんがまた来て欲しいって言ってたよ!」


 凛花の言葉に颯希たちがどうしようか考える。


「……そうですね。ちょっと気分を変えるためにもいいかもしれませんね」


「決まりね!じゃあ連絡入れるからちょっと待ってね!」


 颯希たちが行くことになり、凛花が入間に連絡する。すると、入間から「ぜひ!」と言う言葉が返ってきたらしく、颯希たちは凛花に付いて行き、また施設にお邪魔することになった。



「おう!颯希ちゃんに静也くんじゃないか!」


 施設に入ると、真っ先に八木が颯希たちに声を掛けてきた。


「こんにちは!八木さん!」


 颯希たちが笑顔で挨拶する。


「……おや?今日は見慣れない子もいるんだな。友達かい?」


 八木が雄太を見て頭にはてなマークを浮かべる。


「はい!私たちの友達で柴崎雄太くんと言います!」


 颯希が八木に雄太を紹介する。雄太が「初めまして」と言ってお辞儀すると、八木が雄太の背中を叩きながら笑顔で答える。


「雄太くんって言うんか!なんか頭の良さそうな子だな!勉強もいいが時には遊ぶことを忘れるなよ!」


 八木がいつものように「わはは!」と笑いながら言う。


「その子たちは八木さんの知り合いなのか?」


 八木と颯希たちのやり取りをしていた斉木が声を出す。


「あぁ。ほれ!話したことあるだろ?パトロールしがてら町の清掃活動を行っている中学生がいるって」


「……あぁ、八木さんが働いているところに町で集めたゴミを持ってくるという子たちか……」


 八木の話に斉木が「なるほど」と言う顔をする。


「斉木さん、この前居なかったから紹介できなかったからな!雄太くんとは初めて会うが、颯希ちゃんと静也くんはよく知っておるよ。今時、感心な中学生だなと思ってるんだ」


 そして、八木が颯希たちに斉木を紹介する。颯希たちも挨拶を交わしてみんなで雑談する。


「……ほう、中学生で心理学の研究を……」


 雄太が心理学のことを研究していることを話すと、栗田が感嘆の言葉を漏らす。


「……心理学と言っても、僕はまだ中学生なので中学生ならではの心理学になります。他にも哲学にも興味があるのでそちらの方も時折研究したりしますね」


 雄太の言葉に浅井も感嘆の声を出す。


「雄太くんは凄いのですよ!人を見る目がとてもあっていつも冷静沈着なのです!それに、静也くんは本能的に良い人、悪い人を見分ける力がありまして、この前の事件に役に立ったのですよ!」


「それはそれで凄いな!生まれつきそういう能力を持ち合わせているってことか!」


 颯希の話に八木が感心したように言葉を綴る。栗田たちも「それは凄い……」と、驚きの表情をしている。


「じゃあ、俺や栗田さんたちは静也くんから見てどう見えるんだ?」


 八木が急に話を静也に振る。静也がその言葉に「え?」と声を上げる。


「うーん……。八木さんも含め、特に悪い感じはありませんよ?むしろ、どの方も大切な人はとても大事にするような感じですかね?」


「そうだろそうだろ!みんないい人たちばかりでな!ここに来ると楽しいんだよ!」


 八木が楽しそうに笑いながら言葉を綴る。


「職員さんや、バイトの子たちもいい子ばかりでな!……亡くなった美亜ちゃんも歌が上手くて優しい子だった……」


 八木が美亜のことを思い出したのか、少し悲しそうな顔をする。


「美亜さんってどんな子だったのですか……?」


 颯希の言葉に八木が「ちょっと待ってくれ」と言って、ポケットからスマートフォンを取り出す。そして、年齢の割に器用にスマートフォンを操作して一枚の写真を颯希たちに見せた。この施設で取られた集合写真のようで何人かが映っている。その写真のある人物を器用にスワイプする。


「この子が美亜ちゃんだよ!」


 八木がスワイプした写真を颯希たちに見せる。長い栗色の髪をなびかせながら笑っている女の子が映っていた。


(あれ?この子……)


 颯希が写真を見てあることに気付く。


「美亜ちゃん、将来は歌う人になりたいって言ってたんだ……。ここでもよくコンサートみたいな感じで歌を披露してくれてたんだよ……」


 八木が懐かしそうに言う。栗田たちも悲痛そうな表情をしている。


「美亜ちゃんは優しくて歌が上手で私たちにとってはアイドルみたいな子だったよ……。なのになんで……」


 浅井が悲しそうに言葉を綴る。その様子に颯希たちは何も言えない。


「浅井さん……、俺たちがいつまでも悲しんでいたら美亜ちゃんは浮かばれないよ……。元気出そうや!」


 八木がそう言って浅井を励ます。


 そして、気を取り直してみんなで雑談をしながら和やかな時間を過ごした。




「……じゃあ、君も犯人に心当たりがないというわけか……」


 警察病院の一室で容体が回復しつつある岡本に今回の連続殺人事件で何か知っていることがないか聞くが、犯人を特定できる情報は特に得られなかった。


「ちなみに、その小岩井さんに恋人がいるという話は聞いたことあるかな?」


 呉野が暴行事件で入院している小岩井のことを聞く。


「いえ、聞いたことないです……」


 岡本の返答に木津と呉野が落胆の色を示す。


「……まぁ、君が暴行事件に加わってしまったことは気の毒なことだが、だからと言って許されることでもない……。ちゃんと罪を償うことだな……」


「……はい」


 木津の言葉に岡本が素直に返事をする。


 そして、木津と呉野は「お大事に」と言うと病室を後にした……。




 楽しい時間はあっという間に過ぎ、颯希たちは施設を出た。すると、施設を出てすぐ、颯希がある事を話す。


「……静也くん、雄太くん。これはあくまで私の想像なのですが、もしかしたら今回の事件って――――」


 颯希がそう言って一つの仮説を話す。


「――――と言うのが考えられるのですが……」


「もしそうだとしたら、警察がなかなか犯人を見つけられないのも納得いくかもしれないね……」


 颯希の話に雄太が同意する。


「でもさ!あくまで推測だろ?」


 静也が異論を唱える。


「……もし、良かったら私たちはこの方面で調べてみませんか?」


 颯希の言葉に静也と雄太が「うーん……」と唸る。


「……まぁ、可能性がゼロと言うわけでもないから一応やってみるか」


「そうだね……。調べてみよう」


「では、まず美亜さんのことから調べてみましょう!」


「おう!」

「うん!」


 颯希の言葉に二人が力強く返事をする。



 こうして颯希の提案を元に三人で手始めに美亜の自殺の件を調べることにした。




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