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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
第五章 花を愛でる小人たちは悲しみの雨を降らせる
69/111

5.


「……なに?!また死体が?!」


 朝早く、颯希が朝食を食べていると、誠の携帯が鳴り響いた。そして、誠はその電話に出るとそう叫んで慌てて家を出ていく。その様子を颯希が眺めていた。


(また、殺されたのでしょうか……?)


 静かな町でこうも連続で死体が発見されることは少ない。もしかして、前の刺殺体と何か関連があるのではないかと考えてしまう。


「颯希?どうしたの?ぼんやりしていたら遅刻するわよ?」


「あっ!はーい!ごめんなさーい!」


 佳澄の言葉に颯希が慌てて朝食を食べる。自分も捜査したいが、何も手掛かりがない。心の中でため息を吐き、早く本物の警察官になって事件を解決できるようになりたいと願う。


「いってきまーす!!」


 朝の支度が終わり、颯希が元気よく家を出る。


 颯希は中学校まで徒歩で登校している。時折、近所の人に会って挨拶をしながら学校に向かう。


「また、死体が発見されたんですって……」

「どうやら屋上からの飛び降りみたいじゃない……」

「えーっ!てことは、自殺ってこと?」

「まだ何も分かっていないみたいよ?」

「亡くなったのは前田さんの息子さんらしいわね……」

「えぇ、そうみたい。昔から悪さばっかしている子だったわよね……」


 登校途中で近所の人たちが三人固まって話している。颯希はその話を通り過ぎながら聞いていた。


(やっぱり、この前の刺殺体と何か関連があるかもしれません……)


 颯希が歩きながら今回見つかった死体とこの前の刺殺体がどこかで繋がっているのではないかと考える。


(私でも捜査ができるぐらいの材料があればいいのですが……)


 中学生の身では捜査をするにしても出来る事は限られている。それに、自分が捜査したことの内容ぐらいは警察が早々に調べているだろうと思い、まだ自分が子供だという事を痛感させられる。


 そんなことを思いながら歩いていると、学校に到着した。




「……死体で発見された前田まえだは上田ほどではないにせよ、近所では悪さばかりしていると有名だったそうです」


 今回発見された前田が、上田とよく一緒につるんでいたことも分かり、今回の事件と前回の事件は何かしら関連があるとみて警察は「連続殺人事件」として捜査する方針になった。


「後、殺された二人ですが上田のスマホの中にある動画から二人とも、婦女暴行事件を起こしていることが確認できました。資料に書いてある通り、上田がそれを動画撮影していたので、被害者が訴えることができなかったと思われます」


 木津が婦女暴行事件を説明していく。


「よし!じゃあ、この顔写真にある男、そして、被害に遭った女性たちに事情聴取しろ!特に事件を起こした男たちは一人残らずに確保しろ!以上!!」


「「「はい!!!」」」


 芝原の号令で捜査員たちが捜査を開始した。




「連続殺人……?」


 お昼休み、颯希たちがいつもの場所でお昼を食べながら発見された死体のことで颯希が口を開いた。


「はい、どうやら前に刺殺体で発見された人もかなりの悪い人だったみたいなのですが、今回発見された死体の人も悪い人だったみたいです」


 颯希が、今日の朝に通学途中で偶然聞いた話をする。


「確かにどこかで繋がりはありそうね……」


 亜里沙がカフェオーレのパックをストローで吸いながら答える。


「僕、今回発見された人は知っているよ?」


「「「えっ!!!」」」


 雄太の言葉にみんなが声を上げる。


「殺された人、前田さんって言う人なんだけど、母親同士の仕事場が一緒なんだ。母親から話を聞いたことがあるんだよ。前田さんの息子さんがグループでよく悪さをしているって……。今回死体で発見されて、母親に前田さんから連絡があったんだ。……どうやら、警察の話ではグループでレイプするようなことをしていたみたい……」


 雄太の話にしばらく沈黙になる。


「……じゃあ、今回の連続殺人事件はその被害者が復讐のために行っている可能性もあるってことか?」


 雄太の話に来斗が言う。


「もしそうだとしたら、殺されて当然かもしれないね……」


 雄太が淡々と言葉を綴る。その言葉に憎しみが込められているようにも感じ取れる。


「雄太くん……」


 雄太の様子に美優が心配そうな顔をする。雄太がその表情に気付き、いつもの顔に戻ると、美優に優しく微笑みかける。


「大丈夫だよ。ごめんね、美優さん」


 雄太がいつもの顔に戻り、美優が安心する。


「お前ら……、付き合っているのか……?」


 二人の様子に静也が二人の関係に疑問を問う。


「……違うけど?」


 雄太が「なんで?」と言う顔をする。隣で美優もはてなマークが頭に浮かんでいる。


「みゅーちゃんと雄太くんは仲良いですよね!二人で図書館に行くことがあるって聞いています!」


「図書館?」


 颯希の言葉に今度は静也の頭の上ではてなマークが飛び交う。


「うん。たまにだけど、美優さんとは話が合うから図書館で哲学や思想の本を読みながら二人でいろいろ語り合っているんだよ。なかなかこういう話ができる人っていなかったからね」


「ふふっ、そうだね。私も雄太くんとそういう話ができるってすごく楽しいんだ」


 雄太の言葉に美優も笑顔で答える。思春期真っただ中でこれで恋愛に発展しないのがある意味不思議だなと颯希以外がそう感じながら、お昼休みが過ぎていく。




「くそ!空振りか!」


 警察では今回の連続殺人の捜査が思うように進まなくて難航していた。暴行罪で一人はすぐに分かって引っ張ることができたが、その人物は上田たちに脅されて見張り役をさせられていただけで、グループのメンバーの名前や何処に住んでいるかは全く分からないと言う。友成の画像解析で映像はクリアになったが、実際に犯行を行っていた男たちの顔は動画にあまり映っておらず、首より下の動画がほとんどだった。唯一顔が分かったのは前田と見張りのその男の顔だけだった。


 捜査が思うように進まないことに刑事たちが焦りを感じる。今回の事件はまだこれで終わりではないのかもしれない……。そう思わずにはいられなかった。




「なんだか、雄太くん、様子がおかしかった気がします……」


 学校が終わった帰り道、颯希がポツリと呟く。


「……まぁ、色々思うところがあるんじゃないのか?」


 颯希の横を歩きながら静也が言う。


「何か知っているのですか?」


 静也の言葉に颯希が問う。


「……どうだろうな」


 静也のその言葉で何か知っているのは分かったが、話したくないことだと分かり、敢えて聞かないことにする。




「……急がないと、全員刈れなくなるぞ」

「あぁ、急ごう……」

「まだ俺たちは警察にマークされていない……」

「刈るやつはまだ残っているからな……」


 ある一室で数人の人影がこそこそと話している。


「……必ず、俺たちが葬ってやる……」


 一つの人影がそう言葉を綴る。


 その言葉に他の人影たちも強く頷いた……。




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