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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
第四章 青い炎は恵みの雨を受ける
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18.&エピローグ


「いや~、今回の事件もすごかったな」


 学校の帰り道で颯希と並んで歩いている静也が、今回の事件を振り返りながら言葉を綴る。


「でも、無事に解決できてよかったのです!」



 あの後、誠から玲奈が起こした事件の裏付けが全て取れた警察は玲奈を傷害罪で正式に起訴した。玲奈が引き起こした事件で何人もの人がその後で、家庭崩壊を起こしていたり、精神を病んで入院している人もいることが分かった。


「……中には玲奈さんが万引き事件を引き起こして罪に問われた人もいるんだってな」


「はい……。その事件も玲奈さんが引き起こしたという事が例のサイトから分かり、犯人だと思われていた人は釈放されたそうです」


 いくつかの事件を引き起こした玲奈は「世紀の大悪党女」として、しばらく世間を騒がせた。テレビにも取り上げられ、玲奈の顔写真も出回ったという。


 大河の職場である役所にも報道陣が来たらしく、大河はその報道に真摯に対応した。


「今回、役所で生活安全課として働いている自分の元婚約者が皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまい、心からお詫びと謝罪を申し上げます。これからは、生活安全課の人間として、この件に関しまして、心に傷を負った方々に真摯に対応し、心のケアをして参ります。本当に申し訳ありませんでした」


 大河の言葉に報道陣は拍手を送り、更にこの事件をどう思うかという内容を質問した。


「私は『悪』は決して許してはならないと思っています。『悪』に屈しる事もしてはなりません。今後もその信念を崩さずに仕事を行っていきたいと思っています」


 テレビのニュースで流れる報道を颯希も見ていた。そして、大河の言葉に賛同するように心の中である言葉を呟く。


(私もいつか、地域の人のために工藤さんみたいな立派な大人になるのです!)



「なんか、事件を引き起こされた人たち、可哀想だな……。元の生活に戻れるといいんだけど……」


 静也が辛そうな表情で言葉を綴る。


「……玲奈さんにとってはただの悪戯程度のことだったかもしれません。でも、時にはその悪戯が悲劇を引き起こし、取り返しのつかないことになる状況になってしまうケースもあるという事です。悪戯でも、いじめでも、それはやってはいけないことです。そして、そんなことをしている人はいつかその報いを受けます。私は『悪』を許しません。絶対に……」


 颯希が強い瞳でそう語る。


 『悪』は許してはいけない……。


 『悪』を許せば、沢山の人が苦しむ……。


 そして、『悪』を行なえばいつかは裁きの鉄槌が下される……。


 

 こうして、玲奈の引き起こした悪戯がきっかけで起こった事件は幕を閉じた……。




~エピローグ~


「颯希ー!手を怪我しないように軍手しとけよー!」


 ある日の日曜日、颯希と静也は海岸の清掃活動を行っていた。


「いやぁ~、二人とも精が出るのぉ~」


 幸雄が釣りに来ると、二人が海岸のごみ拾いを行っていたので感心したように声を上げる。



「颯希お姉ちゃん!静也お兄ちゃん!」


 そこへ、小春が駆け寄ってくる。


「小春ちゃん!」

「よぉ、小春」


 颯希たちが小春に返事をする。


「今日ね、パパとママの三人で海にピクニックに来たの!」


 小春が笑顔でそう言葉を綴る。離れたところで恵美子と茂明がシートを広げてお弁当の準備をしていた。


「そういえば、颯希お姉ちゃん。お姉ちゃんはしず……」


 小春がそこまで言いかけて、慌てて口を押える。


「私がどうかしましたか?」


 小春の言葉に颯希は頭にはてなマークを浮かべる。隣では静也が慌てるように「しーっ!!」というジェスチャーを小春に送っている。


「小春ちゃん??どうかしましたか??」


 颯希が不思議そうな顔をする。


「えっと……えっと……、さ……颯希お姉ちゃんは……、シズッターへっぽこぴーマンって好きですかー!!」


 小春が叫ぶように言うその「シズッターへっっぽこぴーマン」という言葉に颯希ははてなマークを浮かべ、静也はずっこけている。


「えっと……、なんですか?それは??」


 颯希が不思議そうに尋ねると、小春が焦りながら答える。


「えっとね……えっと……、シズッターへっぽこぴーマンって言って、へっぽこな顔をしたヒーローがいるの!」


 勿論、そんなヒーローはいない。小春の咄嗟の誤魔化しで言った言葉だ。


「あははっ!そんなヒーローがいるのですね!初めて知りました!!……って、あれ?静也くん、ずっこけていますが、どうかしましたか?」


「いや……、なんでもない……」


(……小春から見たら、俺ってそんなにへっぽこなんかな……)


 何気にその言葉にショックを受けながら、静也が「とりあえず、ゴミ拾いしようぜ……」と、力なく答える。


 そして、いつもの日常風景が繰り広げられる……。




 そんな、穏やかな日々の中である事件が静かに幕を開けようとしていた……。



(第四章 完)


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― 新着の感想 ―
[良い点] 裁かれるべくして、裁かれる。人を傷つけてしまったことに対して、ついに報いがありましたね。大河さんが心配でしたが、報道陣に対して毅然とした、そして真摯な態度で、さすがですね。 中学生パトロ…
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