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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
第四章 青い炎は恵みの雨を受ける
59/111

13.


「……と、いう事があったのです」


 友成との話が終わり、颯希たちも家に帰った。まさか、玲奈があんなことをしているとは思わなかったので颯希の中で怒りの感情が湧いてくる。それを静也が宥めながら帰り道を歩いていた。そして、家に着くと颯希は真っ先に透の部屋に向かい、友成から聞いた話を透に話した。


「やっぱり本当の顔があったんだな。その玲奈って人、かなりの悪徳人間じゃないか……」


 颯希の話に透が「やっぱりな」と言う顔をする。


「許せないのです……。人を陥れる行為は……」


 颯希が怒りながら言う。


「お兄ちゃん、このことって何かの罪に問うことは出来ないのですか?」


「そうだな……。多分、名誉棄損罪や相手を精神的に苦しめたとして傷害罪が適用される可能性はあるかもしれないな。でも、証拠がなければ逮捕は出来ない。なにか証拠のようなものはないのか?」


 透の言葉に颯希は「うーん……」と考える。そして、あることを思い出し、口を開く。


「証拠になるかどうかわかりませんが、玲奈さんが書き込みをしているという裏アカウントでしょうか……?」


「裏アカウント?」


 颯希の言葉に透が反応する。なので、颯希はその裏アカウントについて透に説明する。


「……成程な。なら、その中に逮捕に繋がる何かがあるかもしれないってことか」


「はい。その裏アカウントのコピーを工藤さんには渡したみたいです」



「透ー。颯希ー。夕飯よー!」


 佳澄の声が聞こえて、颯希と透は返事をするとキッチンに行った。


 キッチンに行くと、テーブルには誠がもう座っている。颯希たちも座り、和やかな夕飯を過ごす。


「そうそう、佳澄。今度の土曜日は飲み会があるから夕飯はいらないよ」


「お父さん、飲み会に行くのですか?」


「あぁ。いつもは哲司君が日を決めて行くんだけどね、今回は珍しく工藤君から連絡があったんだよ。久々に三人で飲みに行かないかってね」


 誠の言葉に颯希が「もしかして……」と、心の中で呟く。


 その後も和やかな夕飯が続き、家族の団欒を過ごした。




(ふふっ!今日は楽しめたわ♪)


 玲奈は上機嫌で玄関の扉を開いた。


「おかえり、玲奈さん」


「た……大河さん!」


 玄関を入ってすぐのところに大河が立っていたので、玲奈が驚いて声を上げる。


「遅かったね。友達とそんなに盛り上がったの?」


 大河が笑顔で言葉を綴る。


「え……えぇ。久々だったので話が盛り上がってしまったの……」


 玲奈が咄嗟に嘘をつく。本当は彰人とレストランに行った後、ちょっとおしゃれなバーに行っていた。そこで、ある事をしようとしたが、彰人がそれを止めて、家まで送っていくという言葉でこのマンションの前まで送って貰い、今に至る。


「今日会った女友達ってどんな人なの?玲奈さんの友達なら僕も会ってみたいな」


 大河の言葉に玲奈が少し戸惑う。


「そ……そうね。次はいつこっちに来るか分からないから、次はいつになるか分からないけど……」


「そうなんだね。今度来た時はぜひここに遊びに来てもらうといいよ」


「えぇ……、そうね……。あっ!私、お風呂に入ってきますね!」


 玲奈がそう言って浴室に消えていく。玲奈の先程の様子で大河は違和感を抱き、しばらく浴室の扉を見ていた。


(……さっきの大河さん、なんか様子がおかしい気がしたけど、もしかして何か感づかれた?いや、あの鈍感バカ真面目男に限ってそれはないか……。きっと、気のせいよね……)


 大河の様子がおかしいことに気になったが、気にし過ぎだと思い直し、シャワーを浴びながら、バーで彰人に言われた言葉を思い出す。


(……それにしても、彰人さんってイケメンなうえに紳士なのね♪大切にしたいだなんて♪そんな人に好きになってもらえる私って最高にイイ女ってことだわ!)


 自画自賛するような言葉を心で呟きながら鼻歌交じりでシャワーを浴びていく。その扉のすぐ外で大河に鼻歌を聞かれているという事を知らずに……。




「悪いな、夜遅くに……。上がってくれ」


 彰人から友成に連絡があり、彰人が今日のことを報告すると、友成に「家に来て欲しい」と言われてデート後に友成の家に来た。彰人が今日の様子を伝える。カラオケに行ったことやレストランで食事したこと、そして、その後でバーに行ったこと……。


「……で、そのバーで飲んでいたらあの女が色目使って『ちょっと酔っぱらったみたいだから、どこかで休みたいわ』って言ってきたんだよ。軽い女だなって思ったぜ」


「で、どうしたんだ?」


「あぁ、大切にしたいからそういうところに行くのはお互いをよく知ってからにしましょうって言ったら顔を赤らめて了解してくれた。んで、家まで送るよって言ってマンションの前まで送ってったよ。そしたら、マンションに着いて、サヨナラしようとしたら急に抱き付いてきやがった。マンションの前でだぜ?旦那になる人が見ているかもとか全く考えないんだな」


 彰人が呆れたようにため息を吐く。


「なーんか、旦那になる人が不憫に思えてきたぜ……」


 玲奈の軽い行動を見て、大河が不幸に見えているのか、彰人がそんな言葉を漏らす。


「実はその婚約者に会ってきたんだ」


「えっ!」


 友成の言葉に彰人が声を上げる。


「なんでまた……?」


 彰人が驚くように言葉を言う。


「実はな……」


 そう言って、友成は自分が玲奈の番号から裏アカウントのことを突き止め、そこに大河の悪口も書かれていたことが分かり、そのコピーを大河に渡したことを伝えた。


「……マジかよ。まぁ、友成のパソコンのスキルは半端ないものだとは知っているけど、良く見つけることができたな……。じゃあ、例のことも分かったのか?」


「あぁ。その時のことも書き込みがあったよ。他にも何人か同じ手口で被害に遭っていることも分かった」


「あの女の『遊び』は悪戯で済まされることじゃないからな……」


「あぁ、そうだ。だからあの女にはその報いを受けてもらう。俺を含め他の被害者たちも望んでいるはずだ。俺があの女を地獄に叩き落としてやる……」


「……じゃあ、そろそろ最終ステージに入るか?」


「そうだな……」


 玲奈を地獄に叩き落とすための計画が順調に進み、最後の仕上げをするために綿密な計画を立てる。


 玲奈は何も気づいていない。


 大河の中では玲奈に対する疑いがどんどん膨らんでいく。


 ひっそりと……。


 ゆっくりと……。


 最後の幕が上がろうとしていた……。




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