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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
第四章 青い炎は恵みの雨を受ける
55/111

9.


「……え?」


 後ろから突然声を掛けられて、友成は声をあげた。声を掛けてきた中学生の男女に「誰?」と言うような顔をする。


「あの、突然申し訳ありません。その……玲奈さんのお知り合いですか?」


「?!」


 友成が颯希の言葉に驚きの顔を見せる。颯希たちはその表情で友成が玲奈たちを見ていたことを確信する。


「……君たちは?」


 友成が平静を装いながら、颯希たちが玲奈とどういう関係なのか聞き出そうとする。


「私たちは玲奈さんの旦那さんになる人の知り合いです。あの……あなたは……?」


「……近くに広場がある。付いて来てくれ……」


 颯希たちの登場に友成はここにいるのはまずいと判断し、そう言葉を掛ける。


「どうしますか?」


 颯希が静也の顔を見て声を掛ける。


「うーん……。悪い人ではない感じだから大丈夫だと思う……」


 静也の勘を信じることにして、颯希たちは友成に付いて行くことにした。


 広場に着き、テーブルと椅子が設置してある屋根付きの場所で颯希と静也は並んで腰を掛けた。その前で友成が腰を下ろす。


「……で、君たちはあの女の旦那になる人の知り合いだと言っていたがどういう知り合いなんだ?」


 友成が颯希の質問を流して逆に質問する。


「えっと……、工藤さんという方なのですけど、ある事件をきっかけに知り合ったのです。この前、工藤さんのお家にお邪魔させていただいて、その時に玲奈さんと会いました」


「事件?」


 颯希の口から出た事件と言う言葉に友成が怪訝な顔をする。


「あっ!申し遅れました!私、中学生パトロール隊の結城颯希と言います!」

「同じく、中学生パトロール隊の斎藤静也です!」


 そう言って、座ったままの状態で仲良く敬礼のポーズをする。


「中学生パトロール隊……?」


 颯希たちの口から出てきた言葉に友成がはてなマークを浮かべる。


「私たちは中学生パトロール隊として、地域のために清掃したり、時には事件に関わったりしているのですよ!」


 颯希のある意味とんでもないとも取れるような説明に友成は驚きを隠せない。


「じゃあ、その工藤って人とは何かの事件で知り合ったってこと?」


「はい、そんなところなのです!……ところで、あなたは玲奈さんお知り合いか何かですか?」


 颯希が友成のことを尋ねる。


「……君たちには関係のないことだ。この件には首を突っ込まないでくれ……」


 結局、友成は何も話さずにその場から立ち上がると、去っていこうとした。


「……一つだけ言っておく。あの女とは関わらない方がいい。あいつは極度の子供嫌いだ」


 颯希たちに背を向けたまま、友成が颯希たちに忠告のような言葉を言う。そして、友成はその場から離れていった。



「……なんだか、玲奈さんのことを嫌っているような感じでしたね……」


 友成が去っていき、しばらく二人とも言葉を発しなかったが、颯希が先程の友成の様子を見て口を開く。


「というか、憎んでいるっていう感じだったな……」


 友成が探偵とかの類ではないという事は分かる。そして、友だちとか言う類でもない。むしろ、玲奈が憎悪の相手だという事が分かった。


「放っておいていいのでしょうか……?」


「事件ってわけでもないから下手には関わらない方がいいんじゃないか?」


 静也の言葉に颯希は「うーん……」と、頭を唸らせる。


「……結局、玲奈さんと一緒にいた人が誰なのか分からなかったですね」


 玲奈と一緒に喫茶店にいた謎の男が、友だちなのか、それとも、浮気相手なのか、全く分からずに疑問だけが残る。


「……図書館はどうする?今日は止めておくか?」


 先程のことで図書館に行く予定が狂ってしまい、静也がそう提案する。


「……いえ、せっかく本も買ったので行きましょう」


 颯希は考えた末、図書館に予定通りいくことを静也に伝える。静也もそれに同意し、図書館に行くことにした。




「……じゃあ、また連絡しますね!」


 喫茶店を出て、玲奈にそう告げると玲奈は「はい!」と嬉しそうに返事し、そこでサヨナラをした。


 玲奈が言ったのを見届けると、彰人はスマートフォンを取り出し、友成に電話する。コール音が二回響いて友成が電話に出る。


『もしもし』


「友成、今どこにいる?作戦は上手くいったぜ!」


『噴水広場を出たところだ』


「噴水広場?なんでそんなところにいるんだ?近くで待機するって言ってなかったか?」


『ちょっと思わぬトラブルがあってな。とりあえず合流しよう』


「分かった」



 それから、約三十分後、友成と彰人がある居酒屋で合流した。テーブルに向かい合うように座り、彰人がビールを飲みながら今日のことを報告する。


「……で、学歴とか務めているところを話したら目をキラキラさせて食いついてきたぜ。あの女、男は高学歴でエリート勤めっていうただのバカ女だな。婚約者いるのに、いないって噓までついていたぜ?でも、婚約者って本当にいるんかな?」


 彰人がそんな苦言を呈する。


「婚約者がいるって言うのは本当みたいだな」


 レモンチューハイを飲みながら友成が淡々と言う。


「そうなのか?あれ?でも、あのバカ女の最近の近況は全く分からないって言ってなかったか?」


「実はな……」


 友成はそう言うと、喫茶店の外で影から二人の様子を伺っていた時に颯希と静也に声を掛けられたことを話した。そして、その二人が玲奈の婚約者の知り合いだという事を伝える。


「……てことは、婚約者がいるって言うのは本当ってことか。それにしても、中学生パトロール隊ねぇ……。そんな漫画に出てきそうな子たちがホントにいるんだな……」


「あぁ、そうだな……。ちなみにあの女の婚約者は役所の人間らしい」


「成程な……。定年後も安泰ってわけか……。でも、この計画にその子たちが絡んできたら厄介なことにならないか?」


「一応、釘はさしたが、この計画に関わってくる可能性はあるかもしれないな……」


「大丈夫なのか?」


「今の段階では何とも分からないよ……」


 計画に支障をきたすかもしれないが、ここまで来て止めるわけにもいかないと感じ、計画はそのまま続行されることになった。そして、彰人は玲奈の番号を友成に伝える。しばらくは彰人が玲奈とやり取りをして、彰人に気が向くように仕向けることとなった。




 その頃、玲奈は家に帰ると、鼻歌交じりで裏アカウントにつぶやきを書き込んでいく。


『私、今、モテ期突入!今日、すっごいイケメン金持ちに声掛けられちゃった!話も合うし、食事に行く約束もしたよ!場合によっては真面目堅物男から乗り換えるのも悪くないわね!』


 嬉しそうにメッセージを書き込んでいく。


(ふふっ♪やっぱり私のような美人にはああいう男がふさわしいのよね♪)


 この出会いが当たり前とでも言うような言葉を心で呟く。



 これが玲奈を地獄に叩き落とすための作戦だとは知らずに、上機嫌でつぶやきを書き込んでいった。




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