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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
第一章 赤い炎は優しい雨に打たれる
5/111

5.


 放課後になり、颯希と美優と亜里沙、そして、来斗と雄太が学校の中庭で円になるような形で芝生の上に座っていた。

まず、お互いの自己紹介から行う。

「私は二組の結城颯希です。そして、二人は同じ二組で友達の新海美優ちゃんと御影亜里沙ちゃんです」


 颯希がまず美優と亜里沙も含めて自己紹介をした。


「俺は一組の峯塚来斗。隣にいるのは同じ一組の柴崎雄太。静也も含めて幼馴染同士で少し前までは三人でよくつるんでたんだ……」


 苦い顔をしながら、どこかやりきれない思いで来斗が言葉を綴る。その表情はどこか苦しんでいるようにも見えた。


そして、自己紹介が終わり、本題に入った。


「とりあえず……、静也とお前らはどういう関係なんだ?」


 真っ先に口を開いたのが来斗だった。その問いに颯希が答える。


「あっ!あのなんちゃってヤンキーくんのことを知っているのは私だけなのです。昨日、私の近所の公園でパトロール中に会ったのですよ」



「「パトロール??」」



 颯希の言葉に来斗と雄太がはてなマークを頭に浮かべる。


「颯希は将来警察官を目指していてね。その訓練も兼ねて日曜日はパトロールをしているのよ」


 亜里沙が説明すると、二人は「すごいな……」とか言いながら感心している。


「結城って、もう将来の目標が決まっているんだな。俺はとりあえず高校でバスケが続けられればいいなーぐらいにしか考えてないぜ……」


「あぁ、だから結城さんの研究のテーマが『町の安全性を守るにはどうしたらよいか』っていうテーマなんだね」


「はい!そういうことも研究しながらパトロールに役立てているのです!」


 颯希が嬉しそうに話す。


「ふふっ、颯希ちゃんの警察官の姿、早く見てみたいなぁ~」


 美優がおっとりとした口調で言う。


「……で、静也とはパトロール中に会ったっていうことみたいだが、あいつ、公園で何してたんだ?」


「それは……えっと……その……」


 来斗の問いに颯希は言葉を詰まらす。タバコを吸っていたということを話していいかどうか悩んでいた。その様子に雄太が何かに気付いたのか言葉を発する。


「……もしかして、静也くん、タバコ吸ってた?」


 雄太の問いに颯希は「なんで知っているの?」という感じで目を大きく見開いた。美優や亜里沙も驚きの顔をして颯希の方を見る。来斗も驚きを隠せない様子だ。


「やっぱりそうなんだね」


「なんで分かったのですか?」

 

 雄太の言葉に颯希が疑問を問う。雄太はそれに関してある話を始めた。


「来斗くん、覚えてる?小学生の時に良く三人で学園ものの漫画をよく読んでは三人で語り合ってたじゃない」


「あぁ、覚えてるけど……。でも、それとタバコが何か関係あるのか?」


「僕たち三人のお気に入りの漫画で不良が隠れてタバコを吸うシーンがよく出てきたんだけど、静也くん、それを見て『これが不良の定義なんだな!』とか言うことを言ってたんだよね。だから、静也くんの中では不良は隠れてタバコを吸うものっていう理論があるんじゃないのかな?昔から、こう思ったらこう!っていうところがあったからさ。だから、もしかしてって思ったんだ」


「あー……、確かに一度そう思うとそうなるかもしれないな……」


 雄太の言葉に颯希は目をキラキラさせながら言葉を綴った。


「凄いですね!柴崎くん!やはり、心理学を研究しているだけのことはありますね!!」


「そんなでもないよ。静也くんのことは昔からよく知っているからね。だから、そう思っただけだよ」


 ちょっと照れたように顔を赤らめながら雄太が言葉を綴る。


「じゃあ、静也の奴、本当にタバコを吸っていたのか……?」


 来斗の言葉に空気が一変した。


 しばらくの間、静寂が流れる……。

 

 その静寂を颯希が破った。


「その……、タバコを吸っていたのは本当なのですよ。でも、無理に吸っているような感じで……。で、私が「誰かへの当てつけ?」みたいなことを聞いたら、走って逃げちゃいました……」


 颯希の言葉に雄太が言葉を発する。


「当てつけだとしたら……、多分、拓哉さんじゃないかな?」



「「「拓哉さん??」」」



 雄太の言葉に颯希と美優と亜里沙が同時に声を出す。


「拓哉さんって言って、静也くんの父親なんだけど……、本当の父親ではなくて育ての親なんだ。静也くんの本当の両親は静也くんがまだ生まれて間もない頃に事故で亡くなってる。そして、本当の父親の弟である拓哉さんが静也くんを引き取ったんだ。それに、定番だけど、子供がそんなことをして一番困るのは親だよね?だから、当てつけだとしたら拓哉さんしかいないと思ったんだ」


「なんだか、複雑な環境なのですね……」


 雄太の話に颯希が少し影がある表情を見せる。


「てことは、親子関係はあまり良くなかったということなのでしょうか……?」


「いや、むしろ逆だよ。静也くんと拓哉さんは本当の親子以上に仲が良かったよ。拓哉さんは仕事もしているから忙しいのに、静也くんのこと考えて御飯もちゃんと作っていたんだ。静也くんも拓哉さんとは本当の親子じゃないにしてもすごく懐いてた。拓哉さんのことがとても大好きだったと思うよ……」


「じゃあ、いったい何があったのですかね……?」


 本当の親子以上に仲が良かったのに、突然静也の態度が一変。その理由が全く分からない状況……。


 颯希たちは頭を悩ませた。特に反発する理由が何処にもないのに、なぜ、静也はあんな風になってしまったのか?


「今日、俺と雄太で静也の家に行こうと思っているんだ。拓哉さんならもしかしたら何か知っているかもしれないしな」


 来斗がそう言った時だった。颯希が立ち上がり、言葉を発した。



「でしたら、私も一緒に連れて行ってください!!」



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