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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
第二章 籠の中の鳥は優しい光を浴びる
29/111

14.

 

 次の土曜日の午後、颯希は南警察署に訪れた。パトロールの時の姿で、ある部屋に設置された椅子に座り、目的の人物を待つ。



 ――――ガチャ。



 部屋の扉が開いて、手を拘束された状態の理恵が警察官付き添いのもと、部屋に入ってくる。そして、颯希と対面になるように座ると颯希が静かに声を出した。


「中学生パトロール隊の結城颯希と言います。今日は理恵さんに伝えたいことがあって、ここの署長である父に頼み、面会を許可させていただきました」


 颯希が丁寧な言葉で理恵に説明する。理恵は黙ったまま、何も言葉を発しない。睨みつけるように颯希をじっと見つめている。


「理恵さん、理恵さんから見て私はどう見えますか?」


 颯希の言葉に理恵が怒りを孕みながら言葉を綴る。


「……あんたたちみたいな子は、いかにも毎日幸せで苦しむこともない、とても幸せですって感じの子たちよ……。あんたみたいな子に私の苦しみが分かるわけないわ……」


 その声色には怒りと悲しみが混じっているように見える。


 颯希がその言葉に言葉を綴る。


「確かに、私にはあなたの苦しみは分からないです。でも、私も凛花ちゃんも辛い時もあるし、苦しい時もあります。でも、些細な事にも感謝して笑って前向きに生きていけば、周りの人たちはきっと味方してくれるって信じています。自分に辛いことがあってもそのことを乗り越えるために頑張れば、いろんな人が手を差し伸べてくれると信じています。だから、自分のためにも周りのためにも頑張ろうって思えるのです」


 颯希はそう言い終わると、深く深呼吸をする。そして、更に言葉を綴る。


「誰かのせいにばかりしていても自分は成長できません。ヒーローになりたかったと言っていたそうですが、それは間違っています。本当に自分のような子のためにヒーローになりたのなら、こんなやり方ではなく、その子たちの心に寄り添ってあげて欲しいです。理恵さんの苦しみは理恵さんにしか分かりませんが、その経験はいつか、本当にそういった子を救うことも出来るんじゃないのでしょうか?だから、理恵さん――――」


 颯希がそこまで言うと、真剣な顔つきで言葉を発した。



「ちゃんと罪を償って、苦しんでいる子たちの本当のヒーローになってあげてください」




「じゃあ、囮になった子って颯希ちゃんだったの?!」


 ベッドの上で凛花が警察から事件が解決したことを聞いたと同時に、犯人を捕まえるためにある子が囮になったという話を聞いて、凛花は驚きを隠せなかった。


 颯希は南警察署を出ると、その足で病院に行き、凛花に面会した。そして、颯希が囮になったことを話すと、凛花が驚きの声をあげたのだった。


 病室には凛花の母親の他に道明と由美子がいる。


「それにしても……、まさか凛花を襲った犯人が、まさか凛花がいじめから助けた子だったなんて……」


 凛花の母親が「信じられない」というような顔でぽつりと言葉を漏らす。


「でも、凛花ちゃんの目が覚めて良かったわ。また、元気になったら遊びに来てね。一緒にお庭のお花を眺めながらおしゃべりしましょうね」


 由美子が笑顔で言葉を綴る。


 可愛い孫が無事に目を覚まし、道明と由美子はよくお見舞いに来ては凛花とお話ししているようだった。



 病室に穏やかな空気が流れる……。



 颯希は、またみんなでお見舞いに来ることを伝えると、病院を出た。


 帰り道、一人で道路を歩く。いつもなら隣に静也がいるのにいないことが不思議な感じがして思わずため息が漏れる。


「独りってなんか変な感じなのです……」


 そう呟きながら道路を歩く。いつもは家までの距離はそんなに長く感じないのだが、それは、隣に静也がいたから時間を気にしていなかっただけなのかもしれない……。


(明日は、静也くんのお見舞いに行きましょう……)



 そう言って、颯希は一つの洋菓子店に入っていった……。



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