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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
第二章 籠の中の鳥は優しい光を浴びる
26/111

11.


「こんにちは、凛花ちゃん!」


 美優が挨拶をする。


「美優ちゃん!来てくれたの?」


 凛花が美優を見て嬉しそうな声をあげる。


「えっと、そちらの方は……?」


 凛花が颯希と静也を見て首を傾げる。


「こんにちは!初めまして!みゅーちゃんの友達で中学生パトロール隊員の結城颯希です!」

「同じく、隊員の斎藤静也です」


 二人が敬礼のポーズをしながら凛花に挨拶をする。


「へぇー、中学生パトロール隊かぁ~。いいわね!なんだか楽しそう!」


 颯希と静也の話に凛花が興味津々で聞いている。パトロールをしながら清掃活動を行なったり、時には小さい子が手から離してしまった風船を取ってあげたりという地域のために活動を行っていることを話す。そして、二人とも将来は警察官になるのが夢だということを語った。


「……そっかぁ、颯希ちゃんも静也くんも将来は警察官になるためにパトロールしているんだね。私は福祉施設で働きたいって思っているの。心に傷を負った子のケアがしたくてね」


 凛花はいつ頃からかそんな仕事に就きたいと考えるようになった。家庭不和やいじめで心に傷を負っている子は世の中に沢山いると思い、そんな人たちのために何かをしてあげたいと思ったのだ。なので、高校も福祉の勉強ができる高校に行く予定をしていた。


「……で、高校も推薦で決まっていたから高校側が遅れての入学になるけど、退院したら受け入れますって言ってくれてるの。だから、回復したらその高校にちょっと遅くなったけど通う予定よ。退院したら遅れを取り戻さなきゃね!」


 颯希たちが病室に入った時に読んでいた本はどうやら高校の教科書だったらしい。少しでも遅れを取り戻すために勉強をしているということだった。


 しばらくみんなで雑談をしながら時間を過ごす。



 ――――ガラッ!



 病室の扉が開いて、凛花の母親が顔を出した。


「あら、美優ちゃん。それに、前もお見舞いに来てくれてた颯希ちゃんと静也くんじゃない。今日もお見舞いに来てくれたのね」


 凛花の母親が嬉しそうに言葉を綴る。


「そうそう、凛花。見たいって言っていた中学の卒業アルバム、持って来たわよ」


 そう言って、母親が凛花にアルバムを手渡す。


「ありがとう、お母さん。ずっと見たかったんだ!」


 凛花がアルバムを開き、懐かしむように写真を目で追っていく。部活の写真、運動会の写真、修学旅行の時の写真……。凛花が颯希たちにも見せながらアルバムを捲っていく。


 その時だった。


「あれ……?」


 颯希がある人物の写真に目がいく。


「この子……」


 颯希がその人物を指で差す。


「あぁ、理恵ちゃんね」


 凛花がその人物の名前を言う。


「お友達ですか?」


 颯希の言葉に凛花はちょっと悲しそうな顔をしながら理恵のことを話した。


「……理恵ちゃんはね、いじめを受けていたの。実際にどんないじめを受けていたか、詳しいことは分からないのだけど、放っておけなくてね。それで、よく声を掛けていたのよ。なんとかしてあげたくてね。でも、話しかけてもちゃんと答えてくれないし、目を逸らされることもよくあるしで、ちょっとお節介だったかもしれないね」


 凛花がそう言いながら、「てへっ!」と笑う。すると、急に真面目な顔つきになり、話し始めた。


「理恵ちゃんはご両親とあまり仲が良くなくてね。特にお母さんが厳しい人だったみたいなの。世間体を気にするお母さんみたいで、昔から躾が半端なかったって聞いてる。いじめられていることを言った?って、理恵ちゃんに聞いたら、「たかがいじめでしょう?」って言われて、何もしてくれなかったんだって。聞いたときは信じられなかったんだ。そんな母親がいるなんて思ってもみなかったからね……。だから、できることなら理恵ちゃんに寄り添って力になれないかなって思ったのよ……。今頃どうしてるのかな……」


 そう言いながら、心配そうに窓の外を眺める。凛花は理恵のことを本気で心配しているのだろう……。それを考えると、事件のことをいろいろ聞いていいかどうかが分からない。



 すっかり長居してしまい、気が付くと面会時間が終わりを告げている。結局、事件のことは聞けないままだった。回復したばかりのところに、警察でもない自分が事件のことを聞くわけにいかないと感じた。でも、颯希の中であることが引っ掛かっている。そのことで気分がもやもやしている。



 凛花にまたお見舞いに来ることを伝えると、颯希たちは病院を後にした。




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