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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
第二章 籠の中の鳥は優しい光を浴びる
25/111

10.


 凛花が長い眠りから目を覚まし、母親は安堵した。事件のことの話はもう少し体が落ち着いてから行うことにし、しばらくは回復の方を優先することになり、落ち着いてきたら連絡をくださいと刑事が伝える。母親も「娘が話せるようになったら連絡します」ということを伝えて、二人の刑事は帰っていった。




「えっ!凛花ちゃん、目を覚ましたのですか?!」


 美優から凛花が目を覚ましたことを知り、颯希たちは安堵の声を出す。

 いつものように、昼休みに中庭に集まり、お昼を食べている時に美優が報告をする。ただ、今はまだ話せる状態ではないので、しばらくは家族以外の面会はしないようにと病院から言われているらしい。でも、面会ができるようになったらお見舞いに行く予定をしていると言う。


「よ……良かったのです……。無事に目を覚ましてくれて本当に良かったのです……」


 颯希が涙目になりながら声をあげる。


「面会できるようになったら颯希ちゃんと静也くんも一緒にお見舞い行こうよ!」


 美優の言葉に颯希と静也は「もちろん!」と言いながら、今度のお見舞いは何を持っていくのか相談する。



 そんなことを話しながらお昼休みが終わりを告げた。



 それから数日後、凛花が話せるようにまでなり、心身ともに落ち着いているということから、警察は事件の日の事を聞いた。


「凛花さん、犯人の顔は見ていますか?」


 どこか屈強な顔をした刑事が事件のことを聞く。


「思い出されるのは辛いかもしれませんが、凛花さんをこんな目に合わせた犯人を捕まえるためにも協力してください」


 もう一人のちょっと低姿勢で温和な雰囲気のある刑事が穏やかに言葉を綴る。


「その……、犯人の顔は分かりません。一瞬の事だったので……。分かるとすれば黒色の服を着ていたということくらいしか……」


 凛花が申し訳なさそうに答える。その近くで母親が心配そうにその様子を伺っている。


「いえ、辛いことをお聞きして申し訳ありません。後、不躾な内容で申し訳ありませんが、犯人に心当たりはありませんか?」


 刑事の言葉に凛花は考えるが特に思い当たる人がいない。二人の刑事は凛花のことを気遣い、ある話を振った。


「……そういえば、凛花さんはとても正義感に溢れている方みたいですね。いじめられている子を助けたこともあるとか……。いやぁ、なかなか人っていうのはそういうことを見て見ぬふりするものですから、凛花さんのその勇気は素晴らしいものですな」


 屈強な顔をした警察官が凛花を褒め称える。その言葉に凛花はちょっと照れながら言葉を綴った。


「その、私の中でいじめっていうのが許せなかったところがあるんです……。いじめる人も何か理由があっていじめるかもしれませんが、いじめられている人はきっと心に沢山の傷を負っていると思います……。だから、理恵ちゃんの事、心配で声を掛けたりもしていました……」


「理恵……ちゃん?」


 警察官がその名前にもしやと思い、声を出す。


「はい、『桃田理恵』ちゃんです。励ますために何度も声を掛けていました。でも、もしかしたらちょっとうっとおしかったのかもしれません……。あんたなんかには分からないって言われてしまいましたからね……」


 刑事がその名前を聞いて、顔を見合わせる。実はこの二人の刑事は理恵の母親が毒を盛られた事件を捜査している刑事だった。意外なところで理恵の名前が出てきて二人の刑事が驚きの表情を隠せない。


 しばらく話をして、刑事は病室を出ていった。



 病院を出て車に乗り込むと二人の刑事が言葉を吐く。


「もしかしたら、『無差別殺人未遂事件』と今回の『毒物混入事件』は、どこかで繋がっているかもしれないな」

「まさかとおもいますが、凛花さんを襲った犯人も桃田理恵の可能性もあるかもしれませんね」

「しかし、理恵は凛花に助けられている。助けてくれた人を襲う理由があるのか?」

「そうですよねぇ……。被害者がいじめている人なら分かるのですが……」

「詳しく調べてみるか……」


 そう言って、車を走らせた。



 理恵の母親に起こった事件は『毒物混入事件』として捜査が行われていた。しかし、この事件もなかなか進展がない。内部の犯行の可能性が高いが、理恵の家に行っても居留守を使っているのか、話を聞くことができないでいる。母親に話を聞くにも毒のせいで今もまだ意識が朦朧としており、話を聞ける状態ではない。



「……とりあえず、理恵のマークを続けよう」




 颯希たちはお見舞い品としてクッキーを買うと、それを手に病院に向かった。


「ふふっ、凛花ちゃん甘いもの好きだし、ここのクッキーはお気に入りって言っていたからきっと喜ぶと思うよ!」

「確かにモロコスのクッキーは美味しいですよね!凛花ちゃん、喜んでくれると嬉しいのです!」

「颯希、美味しそうだからって言って欲しい光線出すんじゃねぇぞ?」

「そんなことしないですよー!!」

「いやぁ、お前のことだから一応釘差しとこうと思ってなぁ~」


 茶化すように静也が言う。その言葉に颯希がピコピコハンマーで何度も静也の頭を叩く。


 今日は日曜日ということもあり、颯希と静也はお見舞いの後でパトロールをすることになっているため、二人は制服姿だった。



 病院に着いて、面会の手続きをすると病室に向かう。


 そして、そっと病室のドアを開ける。


 そこには、目が覚めた凛花がベッドに座りながら本を読んでいた。




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