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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
最終章 そして、白い鳥たちは大空へ向かう
108/111

18.


「……この中に入れて連れて行くぞ」


 一人の男が他の男に指示をして、颯希と静也を大きなキャリーバッグの中に押し込む。そして、二人掛かりで一つずつキャリーバッグを車まで運んでいく。


「なぁ……、本当に良いのかよ……。こんな事して……」


 一人の男が顔を青ざめながらそう言葉を綴る。


「俺たちに拒否権はないさ……。あのお人の言うことには逆らえんよ……」


 指示を出している男がそう小さく言う。


「なんでこんなことに……。こんな事になるならあんなことしなきゃよかったぜ……」


 別の男が悔しさが入り混じった声でそう言う。


「まさか、殺人を手伝うことになるとはね……。なんであんなことしちゃったんだろ……」


 更に別の男が悲しそうな表情でそう言葉を綴る。


 そして、二人掛かりで二つのキャリーバッグを車に押し込み、その場を去っていく。



 その後ろを木津と呉野が追っていることを知らずに……。




「……ここに運ぶぞ」


 指示役の男がそう言う。


 そこは一つの人里離れた小さな倉庫だった。今はもう使われていないらしく、廃屋と化している。


 男たちはそこにキャリーバッグを運び込むと、倉庫の中でキャリーバッグを開けて颯希たちを床に放り投げる。


「うっ……」


 床に叩きつけられた衝撃で颯希と静也が苦しみまみれに声を出す。電気を流されたせいか、体がまともに動かない。


「……全く、忠告したよな?十二年前の放火事件を捜査するなと……。捜査を続けなかったら命を奪うまではしなかったんだよ?これは、忠告を無視した君たちが悪い。約束通り、死んでもらう……」


 指示役の男が静かな声でそう言葉を綴る。


 颯希たちの身体はまだ動かない。


「で……ですが、あの事件には……被害に遭った人がいます……。その人は未だに苦しんで……います……。放っておくことはできません……」


 フラフラの頭で颯希が必死の想いで言葉を綴る。


「全く、正義感の強い嬢ちゃんだな……」


 指示役の男が颯希の髪を乱暴に掴み、どこか憐れむような目で見る。


「その正義感が命を奪われることになるとは思っていなかっただろうよ……」


 そう言って指示役の男が颯希の頭を床に叩きつける。


「颯希……!!」


 静也が力が入らない声で颯希の名前を呼ぶ。


「じゅ……準備ができました……」


 いつの間にか、居なくなっていた男が戻って来てそう言葉を綴る。


「……あの世で自分の正義感を呪うんだな……」


 男たちがその場を離れていく。


 その時だった。



 ――――ボウッ!パチパチパチ……。


 火が放たれて倉庫の中でゆっくりと広がっていく。



 ――――ガチャーン!……ガリっ!!



 倉庫の扉が閉まり、中から出られないために何かを扉の外から挟む音がした。




「……戻ってきましたね」


「……あぁ」


 影からこっそりと様子を伺っている木津と呉野が小さく言う。男たちが車に乗り込む前にタバコを取り出し、吸っている。その時、呉野がある事に気付く。


「木津さん!例のキャリーバッグがありません!!」


「てことは……?!」


 そう言うと、二人は顔を合わせ、その場から飛び出した。


「おい!お前ら!!」


 木津が力強い声で叫ぶ。


「「「なっ……!!!」」」


 木津と呉野の登場に男たちが驚きの顔をする。


「お前ら、持っていたキャリーバッグはどうした?あの中には何が入っていたぁぁ?!!」


 一人の男の襟首を鷲掴みにして、木津が怒鳴るように叫ぶ。


「い……いや……その……」


 襟首を鷲掴みにされている男が戸惑ったような声を出す。


「あれくらいの大きさならちょっと成長している子供でも、一人くらいは入るよね?」


「「「!!!」」」


 呉野の言葉に男たちが驚愕の表情を見せる。


「やはり、お前ら……」


 木津がそこまで言いかけた時だった。


「……なんだか焦げ臭いにおいがしませんか?」


 呉野が風に乗ってきた匂いに顔をしかめる。


 そして、顔を上げると微量の黒煙が立ち上っていた。


「ま……まさか……?!」


 その黒煙は男たちが戻ってきた方向からだった。


「呉野!!消防車と救急車を呼べ!!」

「はい!!」


 呉野が急いで消防車と救急車に電話を掛ける。木津は男たちが逃げ出さないように近くの太い木に全員を拘束させた。


「呉野!行くぞ!!」


「はい!!」


 木津と呉野は急いでその場に向かった。




「くそっ!どうすりゃいいんだ?!」


 静也がある程度身体が動くようになり、周りの火を見て言葉を吐く。


「颯希!しっかりしろ!!」


 颯希は先程の頭を床に叩きつけられた衝撃でまだぼんやりしている。


「……こんなところで死なせるかよ!!」


 颯希を抱きかかえて、出口がないかを探す。しかし、出入り口は何処も封鎖されており、何処にも出れるような場所がない。


「くそっ!どこか無いのか?!……ゴホッゴホッ!!」


 煙で息がむせ返る。どこか安全な場所がないかを必死に探す。


 その時だった。



「……あれは?!」



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