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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
最終章 そして、白い鳥たちは大空へ向かう
106/111

16.


 回想。


「ねぇ、こんなのはどうかな?一か八かなんだけど、手紙を出すって言うのは?」


「「手紙?」」


 楓の言葉に颯希と静也の頭の上ではてなマークが浮かぶ。


「えぇ。確率はかなり低いんだけど、もしかしたら読んでくれるかもしれない。玲君って真面目なところがあるからそういうのをないがしろにするタイプじゃないし……」


 楓の提案に「うーん……」と颯希が唸る。


「でもさ、手紙だと差出人の名前がいるよな?知らない人の名前を使うわけにもいかないし、楓さんの名前を書いたらポストから出したのが母親の場合、捨てられる可能性があるんじゃないのか?」


 静也がそう疑問を唱える。


「だからね、その差出人の名前を『転校していった心の友より』ってしたらどうかな?それなら、母親も昔の玲君の友達が転校していって久々に手紙をくれたのかなって思うかもしれないじゃない?」


 かなり無謀な話のようにも思えるが、連絡を取る手段とすればそれしかないのかもしれない。今の時代ならSNSで何かしらの情報は掴めて連絡を取る手段も取れるが、それをやっていないとすれば、連絡の取りようがない。


「今はその方法しかありません。やってみましょう!」



 こうして、楓が手紙を書き、その手紙に自分の携帯番号とメールアドレスを添えて今の時代にはマイナーな方法だが、手紙を出すことにしたのだった。




「どうして……、あの人が……?!」


 手紙の差出人が分かり、玲が驚きの声を出す。


 その手紙にはこう書かれていた。



『玲君へ。


 かなりお久しぶりですね。高校の時にクラスメートだった杉下楓です。お元気していますか?突然の手紙に驚いたことだと思います。私は今、障がい者福祉施設の職員として働いています。あの頃、玲君は私にとって憧れでした。勉強も出来て弓道も得意でこんな素敵な人って本当にいるんだなって感じたんです。突然、海外に転校してしまった時は少し寂しくもなりました。今は、元気に過ごしていることを祈るばかりです。


 話は変わりますが、実は先日、玲君の家に伺いました。門前払いをされましたけどね。玲君が海外に行く直前に放火事件があったのをご存じですか?これは私の想像ですが、その放火事件で何かしら被害を受けたのではないかと心配して家に伺いました。もし、何か被害に遭い、苦しんでいるのだとしたら、少しでも手助けをしたいと思います。もし、その事件がきっかけで心を病んでしまっているのなら、救ってあげることができればと思っています。もし、この手紙を読んで何もなくても、一度話ができたら嬉しいのでご連絡ください。私の携帯番号とメールアドレスを添えておきます』



 手紙を読みながら玲が静かに涙を流す。


「杉下……さん……。僕に……とっても……杉下さん……は……憧れだった……よ……」


 その手紙を握り締めて涙声で嗚咽を漏らしながら囁くように言葉を綴る。


 そして、ひとしきり泣くと玲は楓にあるメッセージを送ることを決意した。




「あれ?あれって……」


 颯希と静也が校門を出たところで、迎えを待っている月子と月弥に気付く。


「月子ちゃん!月弥くん!」


 颯希が二人に声を掛ける。


「やぁ♪颯希ちゃんに静也くんじゃないか♪」


 月弥がいつもの調子で話す。その横にいる月子はいつもの表情に影を少し落としているように感じる。


「月子ちゃん、大丈夫ですか?」


 颯希が月子の様子を心配してそう言葉を綴る。


「えぇ、大丈夫よ」


 月子は微笑みながらそう答えるも、どこか暗い。


「そういえば、もう捜査はしていないのよね?」


 月子が十二年前の放火事件の捜査のことを聞く。


「はい。あんなことがあったのでもう捜査をするのは止めています……。また、危険な目に合ってもだめですし……」


 颯希が申し訳なさそうな表情でそう言葉を綴る。


「ごめんなさいね……。私たちの提案であんな危険な目に遭わせてしまって……」


 月子が頭を下げながら言葉を綴る。


「いえ!大丈夫なので、頭を下げないでください!本当に大丈夫ですから!!」


 頭を下げる月子と月弥に颯希が慌てた様子でそう伝える。


 そうこうしていると、月子と月弥の迎えの車が到着して、その車に乗り込み、「またね」と言って去っていく。


 その様子を颯希と静也は見届けると、自分たちは捜査のために足を進めた。


「……どうする?そろそろ例の現場に行くか?」


「そうですね……。そろそろ私たちも行動を開始しましょう」



 ――――トゥルル……トゥルル……。



 そこへ、颯希の携帯電話が響き電話に出る。相手は楓からだった。


『返事が来たわよ!』


 楓が電話越しにそう伝える。


「じゃあ、今から合流しましょう!」


 颯希がそう言うと電話を切り、颯希の家で楓と合流することになった。




「月弥、月子の調子はどうだ?」


 家に帰り、月弥がリビングでくつろいでいると父親が声を掛けてきた。その隣には母親もいる。


「良い……とは言えないかな?例の誘拐があったとはいえ、それだけではないような気もするし……」


 月弥がそう話す。


「実はね、例のことを月子にも話そうと思っているのよ。もしかしたら、安心するかもしれないしね……」


「え……。あの事を……?」


「そうよ……」


 母親の言葉に月弥が驚くような表情になる。


「でも……、今の調子が良くない状態で話したら不安定になるんじゃ……」


「逆に月子は安心すると思うわ……」


 月弥の心配の言葉に母親がそう言葉を掛ける。


 そして、母親が知登世に月子を連れてくるように伝える。知登世は「分かりました」と言うと、月子の部屋に向かった。


 しばらくして、知登世が月子を連れてリビングにやってくる。


「パパ、ママ、話って何?」


 月子が戸惑っているような表情でそう問う。


「実はね……」


 そう言って、両親はある事を話し始めた。




「颯希ちゃん!玲くんからとんでもない返事が来たの!!」


 楓は颯希の部屋に入るなり、どこか興奮状態で言葉を綴る。


「これなんだけど、見て!!」


 楓がそうやって、届いたメッセージを颯希と静也に見せる。


「これは……?!」




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