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はい!こちら、中学生パトロール隊です!!  作者: 華ノ月
最終章 そして、白い鳥たちは大空へ向かう
103/111

13.


 楓はそう言うと、颯希たちが調べている十二年前の放火事件の事を話す。


「……じゃあ、もしかして火の塊ってその放火と関係があるってことなのか?」


 楓の話を聞いて悠里がそう言葉を話す。


『可能性はあるかもしれないわね』



 その後は二言三言話し、電話を終わる。


 楓は少し考えると、颯希に電話を掛けた。


「もしもし、颯希ちゃん?実は……」


 そう言って、先程悠里に聞いた話をする。


『……分かりました。そのユリさんという方はもしかしたら知っている方の可能性があるので確認がてらその人の家に行ってきますね』


 そう言って電話を終わる。



「楓さんか?」


 颯希の隣にいた静也が電話の相手を尋ねる。そして、颯希が楓から聞いた話を静也に話した。


「成程な……。それで、今からあのカフェに行こうというわけか……」


「はい……。真相を確かめましょう……」


 こうして、颯希と静也はカフェに向かった。




「何?奴らが固まって動いている?」


 呉野からの報告を聞き、木津が驚くような声を上げる。


「えぇ。稀ですが、奴らは行動を共にしていることがあります」


「何かありそうだな……」


「奴らの行動を調べてみましょう……」


 こうして、木津と呉野はその人物たちの行動を追うことにした。




「いらっしゃませー。あら、こんにちは」


 カフェの入ってきたのが颯希と静也だと分かり有子が声を掛ける。


「こんにちは、有子さん。とりあえず、ミルクティーを頂けますか?」


 話を聞くためとはいえ、店に入って何も注文するわけにもいかないので飲み物をオーダーする。


 しばらくすると、飲み物が運び込まれてきて有子が颯希たちの前に綺麗に並べる。


「良かったらこのお茶菓子もどうぞ」


 有子がサービスのお茶菓子もテーブルに置く。


「ありがとうございます」

「どうもです」


 颯希と静也がそれぞれお礼の言葉を述べる。


「ゆっくりしていってね!」


「あの……すみません!」


 立ち去ろうとしている有子を颯希が慌てて呼び止めた。




ユリ『……じゃあ、その施設に行く方向で話が進んでるんだ』


ユウ『うん。いい加減前に進まなきゃいけないし……』


ユリ『そっか。良いところだといいね』


ユウ『そうだな』


ユリ『そういえば、レイは最近来ないね』


ユウ『そうだな。まぁ、別にいんじゃないかな?』


ユリ『そうだね』


 そんな会話がなされていった。




「そんな……そんな……」


 ベッドの上で蹲りながら玲が涙を静かに流している。あるモノを見て愕然となり、どうしていいか分からずに何もできないでいた。




「……放火事件?」


 颯希の言葉に有子が唖然とした様子で言う。


 颯希は有子を呼び止めると、バーベキューをしていた日に放火事件があった事を話した。更に、その放火事件のあった時は風が強く吹いていた時間があり、その風に乗って火の塊が飛んできた可能性がある事を話す。


「後、娘の友理奈さんはパソコンか何かを持っているのでしょうか?」


 ユリと友理奈が同一人物であることを確かめるために颯希がそう問う。


「えぇ、パソコンなら持っているわ」


「……一つ、お願いしたいことがあるのですが……」


 有子の言葉に颯希があるお願いをする。その時に、楓が悠里から聞いたという話をした。その話を聞いて有子は「聞いてみるわ」と言ってその場を離れていく。


「会わせてくれるかな?」


「どうでしょう……」


 有子が去っていき、颯希と静也がそう口にする。


 しばらくすると、有子が戻ってきて「ドア越しなら構わない」という事になり、颯希と静也が友理奈の部屋のドアの前まで行く。


「……初めまして、友理奈さん。中学生パトロール隊の結城颯希と言います」


 颯希がドア越しに声を掛ける。


 返事はない。


「まず、確認させてください。友理奈さんは『ハート・オアシス』というサイトでユリというユーザーネームではありませんか?」


「……何で知っているの?」


 颯希の問いに友理奈が小さな声で言う。


「ある事情で偶然知りました。十二年前のあの日、友理奈さんがバーベキューで火傷を負った日に、放火事件がありました。その日は強い風が一時的に吹いたそうです。可能性という段階ですが、友理奈さんは火の塊が自分に目掛けて降ってきたそうですね。その火の塊は恐らく、放火で飛んできた火の塊の可能性があります。もし……もし、そうだと分かれば場合によっては治療費が手に入る可能性もあります……」


「本当に……?」


「絶対とは言えませんが、私たちが真実を見つけられるように頑張ります。だから、友理奈さんも諦めずに、少しでも前に進んでください」


 颯希の懇願するような言葉に友理奈は何も言わない。部屋の中でその話を聞き、誰にも気づかれないように涙を流す。



 そして、颯希たちはそっとその場を離れた。




 カフェを出ると、颯希と静也は図書館に向かった。あの放火事件の日に風がどちらの方向に吹いていたかを調べるためだ。それが分ればそこから何か糸口が見つかるかもしれない。


 図書館に着き、ネットでその日の気象状況を確認する。


 すると、その日の夜に北から南に一時的に強い風が吹いたという記録を見つけた。あの放火場所から南という事は友理奈の自宅の方向でもある。


「……可能性としてはあり得るな」


 火災が起き、その火が一時的に強い風に乗って破片の一部が友理奈の身体に直撃したことを証明できれば友理奈はその放火事件の被害者として治療費が支払われる可能性がある。


「その放火事件が証明だという手掛かりを見つけてみましょう……」


「問題は、どうやってそれを証明するかだな……」


「……証明するためのアドバイスを受けに行きませんか?」


 颯希の言葉に静也は最初、頭にはてなマークを浮かべたが、誰の事かすぐに検討が付き、ある人物のアドバイスを聞きに行くことにした。




「……で、俺に何かアドバイスを聞きたいというわけなんだな?」


 アドバイスを貰う人物が椅子に座りながら腕を組んだ状態でカーペットに座る颯希たちを見下ろす。


「よろしくお願いします。お兄ちゃん」

「何か良いアドバイスを貰えませんか?透さん」


 颯希が事のいきさつを詳しく話し、透が話を聞いて「うーん……」と唸る。


「……そうだな。例えばだけど――――」


 そう言って、透がある事を話す。


「じゃあ、それが証明できればもしかして……」


「あぁ、可能性の話だけどな」


 透の話に颯希の中で希望が膨らむ。


「静也くん!それで調べてみましょう!」

「おう!!」


 颯希の言葉に静也が力強く返事をする。


 明日は土曜日という事があり、楓と共に楓の元クラスメートの家に行くことになっているので、その後でそのことを調べることにした。




 土曜日。

 颯希と静也は楓と合流すると、楓の元クラスメートの家に向かった。



 ――――ピンポーン……。



 インターフォンを鳴らす音が響く。しばらくすると、インターフォン越しに声がする。


『はい、どちら様ですか?』


 女性の声だった。


「あの!私、杉下と言うものですが、玲さんは御在宅でしょうか?」



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