それぞれの殺意
美里は店へ戻り何食わぬ顔で客の相手を始めた。
注文を聞いてケーキを箱に詰めて代金を貰う。
美里は分かっていた。
宙のような殺し屋が本気でやれば自分のような素人なぞ瞬殺だろう。
しかしクズを殺すことを信条にしている美里にはプロも素人も関係ない。
殺し屋なんぞクズの中でも最低だ。
喜んで相手をしてやる。
それで負けても本望だ。
「そうねぇ、何か新しい武器が欲しいわね」
と美里は笑った。
「何のお話しぃ? お姉様」
声がして美里が意識を戻すと、レジ前にエイミが立っていた。
「エイミ、さっきね、あやうくマフィアに殺されるとこだったわ」
と美里が言うと、エイミが笑った。
「アキラは何をしてるのよ。お姉様を守らないで」
「美里が先に手ぇ出したんだぜ。それに俺はちゃんと守った」
「お姉様、中華系はやっかいよ。揉めないでね」
弟妹に言われて美里は肩をすくめた。
「はいはい、分かりました。エイミの組織は中華には頭が上がらなくて、アキラも尻尾巻いて隠れたいのね。覚えておきます」
美里の嫌味にエイミとアキラの目がつり上がった。
「お姉様!!!!!!」
「誰が尻尾巻いてんだ!」
「エイミはマフィアなんか怖くないし、お姉様がやりたいならお好きなようになさればいいわ。でもお姉様が黒龍会と揉めたら真っ先に狙われるのは藤堂さんよ? エイミとアキラはお姉様を守るけど、藤堂さんの事は面倒みれなくてよ?」
とエイミが言って、アキラは、
「それもいいかもな。藤堂がやられれば自由になれる」
と呟いた。
「分かったわ。ごめんなさい。身を案じてくれてるのに口が過ぎたわ」
美里はしゅんとなって素直に謝った。
「美里の死にたがりも大概だな」
とアキラが言いい、
「死にたくなんかないですぅ」
と美里が答えた。
「心配すんな、俺がきっちりと」
アキラが言った所で、
「何度も言うが店で物騒な話をしないでくれ」
と藤堂がカウンター内へ入って来て三人の話を遮った。
そしてアキラを睨むと、美里の身体を自分の方へ引き寄せて、
「アキラ、何がきっちりとだ。美里に近づかないでくれ。エイミ、君も毎日毎日やってきて暇なのか?」
と言った。
「あらあ、私のような気前のいい常連様に何て言いようですの」
「あんたにそんな事を言われる筋合いはねえ」
とエイミとアキラが不服そうに答えた。
「エイミ、君は大人しくチョコレートを食べて帰ってくれ。アキラ、君は従業員なんだから無駄口たたいてないで働く」
藤堂に言われてアキラはふんっと奥へ引っ込んだ。
エイミは笑い、ジョニーと美貴もお愛想笑いをした。
いつもエイミに付き従っている執事が財布を出して料金を支払い、美里に丁寧にお辞儀をした。
「いつもありがとうございます」
「お姉様、また来ますわぁ」
エイミは楽しそうに店を出て行った。




