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グゥールとライン編〜人生のわかれ道(ライン視点)

ちょうどひだまり本編の#6でバックヤードツアーに行く前の時空設定。

ラインとグゥールの出会いです。

今は昼休み。教室の中に人は滅多にいない。(四年前からこれは変わんないよなぁ。)

俺はライン。五年生の男子だ。兄貴分のグゥールと、本好きの友達マノンと、春の終わりごろに魔法界から引っ越してきたひだまりと同じクラスなんだ。

「うわ〜、あっちぃ〜!!こよみじゃあ、春って言うけどもう夏だよな〜。」俺は手をうちわ代わりにしながら教室の中に入って行った。「なぁ、聞いてるのか!?」教室の中に怒鳴る声が響き渡る。(なんだ?)俺は声の聞こえた方に視線を向けた。そこには四、五人の男子に囲まれて恐縮したように縮こまった一人の男の子がいる。それを見て、俺は一つの記憶が蘇ってきた。



「おい!代わりに掃除しておけって言っておいたのに、なんでしてないんだ?」

「・・・」俺はずっと黙っていた。できれば自分から誰かにこの事を言えたら良かったが、小心者の俺には到底出来なかった。

今は昼休みで、みんな外に行ってしまっている。だから、誰にも気づかれずに、

ずっとこれが続いてしまうのだと思っていた。

だが、その考えは覆された。

「お前ら何やってんだ!?」突然シーンと静まった教室内に怒鳴るような声が聞こえた。(だれだろう?)俺が頭の上にハテナマークを浮かべている間のほんの数秒で、俺の周りにいた男子たちはいなくなり、助けてくれた男の子が近づいてきた。見た目で言うと、すごくやんちゃな子に見える。(見た目で判断しちゃいけないよな。助けてもらったんだし。)「あの・・・助けてくれてありがとうございます。」「ん?・・・あぁ、良いって。それにしても大丈夫か?・・・って、そういえば名前はなんて言うんだ?」他の人から見ればヘラヘラした態度だったかもしれない。だが、俺にはそんな風には見えなかった。今だったらつっこんでいたかもしれないが。

「・・・僕、ラインって言います。」

「ふぅん。ライン、かぁ。俺はグゥール。こう見えても、サッカーやってんだ。強いんだぞ!・・・ライン。お前、サッカー出来るか?」(こう見えてもサッカーやってんだっ、て・・・どう見てもやってそうな人が言うセリフじゃないよ。)本当ならこのまま今の言葉を言えてたら良かったが、この時の俺には無理だった。

「一応、できます。」「ホントか!じゃあ、今からさっそくやんないか?」満面の笑みで俺に近づいてきた兄貴に、俺は「え?でも、昼休みってサッカーしちゃいけないんじゃ・・・?」と頭にはてなを浮かべて兄貴に問う。すると、兄貴は痛いところをつかれたような顔をして「ま、まぁ、いいだろ?バレなきゃ。」と言った。(いやいやよくないよ。絶対にバレるだろうし。危ないし。)俺がそう思っているうちに、どう解釈したか知らないが、答えはイエスと理解したらしい。「よし!行くぞ!!」兄貴はそう叫ぶと、俺の手をむんずと掴んで一気に走り出した。教室から廊下に、廊下から靴箱に・・・。最初は突然引っ張られてびっくりしたし、息が切れてきつかったが、だんだん楽しくなってきて、いつのまにか俺が兄貴を引っ張る形で走っていた。「ほら!早く!!」「お、おい!!元気になったからって、早すぎだろ!!!」「あはは。すみません。」全然申し訳ないと思ってなさそうな声でそう返事をすると、兄貴は「笑いながら言うかよ。」と苦笑して言う。正直、笑っていたなんて自分でも全く気付かなかった。(初めてだな。こんな気持ちになったの。)俺はフッと笑うと、「靴、取りに行きましょう。」「ん?あぁ、そうだな。」そして俺たちは靴とサッカーボールを持って運動場に出た。「よーし!やるか!」張り切ってそういう兄貴に「もう一度聞きますが、本当にするんですか?」「あぁ!!ここまで来たんだからやるに決まってるだろ?」兄貴がそう言った時だった。

[キーンコーンカーンコーン]と予鈴がなった。「あ・・・。」俺たちはその場で顔を見合わせた。「・・・なっちゃい・・・ましたね・・予鈴。」「あ、あぁ・・・。」俺と兄貴の間に沈黙がながれた。

その沈黙を破ったのは、『ブハッ』と吹き出す俺たちの声だった。俺と兄貴はそれがむしょうに面白くって、お腹を抱えてずっとずっと笑い続けた。

「・・・なぁ、ライン。お前、俺の弟分にならないか?」おずおずというように俺の顔色を伺いながら兄貴がそう聞いてきた。こんな顔ができるもんだなと今なら思う。(どうしようかな。助けてもらったけど・・・さすがに弟分はちょっとなぁ・・・・・でも・・・)俺は兄貴を真っ直ぐに見つめた。俺を求めてくれている目。今まで学校にいる時、一度も向けられる事の無かった・・・。俺はその時決めた。クッと顔を上げると、「なります!僕!!」と意を決して叫んだ。すると、兄貴は眩しいくらいの笑顔で「おおぅ!!ホントか!?じゃあ、ライン。お前、これからは俺のことは"兄貴"って呼べよな。ほら言ってみろ。あーにーきー。ほら早く。」「えぇ〜。今ですか?」「あぁ、そうだよ。ほら。」ひじで俺を小突いてくる兄貴。色々少しいじったりしたいところだが、残念ながら今はそんな時間はなかった。現実は甘くないとつくづく思う。「・・・あの〜、残念ですけど、ちょっと掃除に遅れますよ。」「ん?・・・あ"ぁ"!!ライン!!早く行くぞ!!!」「は、はい!!」兄貴は俺の返事をしたのと同時に校内に大急ぎで入っていった。

「やれやれだね・・・"兄貴"ったらさ。」俺は一人そう呟いた後、兄貴の後を追って走っていった。


「・・・懐かしいな。」俺はそう呟くと、前を向いた。そこには当時の俺と同じ状況に置かれた男の子と四、五人の男子がいる。(助けなくちゃ。)俺は思いっきり息を吸うと、あの時の兄貴みたいに

「お前ら何やってんだ!?」と叫んだ。

すると、四、五人の男子がこちらを見た。「なんだよ?」「・・・お前、誰かは知らないが、やられる側の気持ちも考えずにそういうことはしちゃいけない。」「は?何言ってんだよ?なんか勘違いしてないか?」腰に手を当ててそういってくる男子に俺の中でプチンと何かが切れた。「・・・何いってるんだ・・・だと?それはこっちが言うことだよ。何言ってるんだ?しらを切るな。こっちは見てんだよ。」最後の方は、自分が思うより低い声が出た。「は、はい!!!す、すみません!!」四、五人の男子たちは途中、声が裏返りながらそう謝ると、いそいそと教室から出ていった。俺はそれを確認すると、縮こまったまま呆気にとられている男の子の所に歩いていった。

「大丈夫か?怪我はしてない?」男の子は一瞬ビクッとした後、「は、はい。大丈夫です。・・・助けてくれてありがとうございます。」と頭を下げながら言った。「いいんだよ。」「・・・あの、なんで助けてくれたんですか?」本当によくわからないというようにこちらを見てくる男の子の言葉に俺はフッと微笑んで、「俺も、ある人にこうやって助けてもらったから・・・かな。」と言った。外を見れば、あの日と同じ、青い空が広がっている。


きっと・・・いや、絶対にいつまでも忘れないと思う。俺の人生を変えた人・・・大事な兄貴分との思い出を。

みなさんこんにちは♪月夜です!!

この度、「ひだまり〜私に親友ができました〜」に入れれなかったお話を、こちらに投稿します。どうぞ、本編とともによろしくお願いします☆★

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