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 堅牢な城門を抜けた先。

 リーリエルとミーナは城の中へと通されていた。

 二人を先導するのは案内役のメイド。

 腰まで伸びた黒髪をたなびかせ、楚々として歩いていた。

 幾度か扉を抜けた後、メイドが扉をノックし、


「ミーナ様、リーリエル様をお連れしました」


「ああ、入れ」


 どうぞ、と通された部屋の中には執務机と金髪の青年が一人。

 微かに笑みを浮かべて腰掛けていた。

 メイドがリーリエル達を椅子に促す。


「久しいな、というには早すぎるか」


「デグレア、だったか」


「獣王国の件では世話になった。

 いずれまた会うことになるだろうとは思っていたが、こうもすぐとはな」


「その節はお世話になりました。

 もしかして、私たちの応対するのってデグレアさんですか?」


「そうだ。名だけの王子にしか会えず、残念だったな」

 

「いやー、むしろよかったっていうか。

 知らないお偉いさんとか出てきちゃったら、すごく緊張しちゃいそうでしたからー。

 ね、リーくん」


「王族などに興味はない」


「…………そうか」


 軽口を真っ向から否定され、デグレアは一瞬詰まった。

 ミーナもリーリエルも余計な肩の力は抜けており自然体であった。

 その様子から、建前ではなく本心からの言葉であるのは明白である。

 デグレアは一度咳払いして、


「ケルベロスの討伐は、本来国を挙げて讃えるほどの偉業だ。

 それこそ王から言葉を賜るものだがな。

 ……早い話、真にケルベロスを討伐したのかと一部で疑われている。

 確認したのが討伐者のみで、人的被害はなく、山が荒らされたに過ぎない。

 ギルドでも言われただろうが、伝説級の魔獣を相手にその程度の被害で終わるわけがないと唱える者が後を立たなくてな。

 言ってしまえば、お前たちが優秀過ぎたのが仇になったわけだ」


「私も初めて見たし、あれが絶対ケルベロスで間違いない! とは言えないですからね。

 あの魔獣が自称してただけかもしれないし」


「仮にそうであったとしても、ギルド保管の魔力計器が振り切ったとの報告は受けている。

 かの魔獣と同程度の魔獣だったことに変わりはない」


 デグレアは立ち上がり、直立不動となる。


「ミーナ殿、リーリエル殿。

 迅速な魔獣討伐により、王国民への危害を未然に防がれたこと、感謝する」


 深々と礼をすると、ミーナは慌てて手を振った。


「や、私たちもたまたま戦うことになっただけですし!

 そんな気にしないでください。

 ねぇ、リー君?」


「くくく。

 此奴ほどの男が頭を垂れる様など中々見られるものではない。

 こんなところまで来た甲斐はあったようだな」


「なにちょっと嬉しそうなの、リーくん!?」


 不敵に笑うリーリエルにすかさずミーナはツッコミを入れた。




 その後部屋には食事が用意された。

 王室の料理人が腕によりをかけたシロモノは、リーリエルとミーナの舌を大いに唸らせた。

 細かい作法などお構いなしの2人であったが、デグレアも端に佇むメイドもヤボな指摘をすることはなかった。

 執務室は。王城とは思えないほどリラックスをしていた。

 食後の紅茶を口にして、デグレアが思い出したように、


そういえば、報告では討伐者は3人と聞いていたが、もう1人はどうしたのだ?


あいつは寝ている。


……寝て?


ガヴちゃん……えと、ガヴリーは限界超えちゃってたんで、まだ宿で休んでもらってます。

後衛タイプの魔法使いなので、そこまで体力ないんです。


そういうことか。

ならばその者にも礼を伝えておいてくれ。

深く感謝しているとな。


はい。


王国としての謝礼はギルドから受け取るように。

それなりの額は用意した。

しかし、お前達、よくケルベロスを倒せたものだな。

相手は伝説級の魔獣、真にしろ偽にしろ、少なくともAAAランク級の力は有していただろう。


え、えーっとぉ、ま、まぁすっごく大変でしたけど、みんなで力を合わせて何とかなった感じです。はいぃ


翼人族としての力を解放してゴリ押しましたとは言えず、ミーナは脂汗かいて言葉を濁した。

その様子を見てデグレアが薄く笑う。


ふ、安心しろ。

何もお前達の手の内を晒せと言うつもりはない。

単なる好奇心……


いいだろう、隠すことでもない。

興味があるならその目で確かめてみろ


デグレアの言葉を遮り、リーリエルが不敵に笑い立ち上がった。




訓練場の一画。

リーリエルとデグレアが対峙している。


くっくっく、血が滾るわ


拳を合わせ、やる気満々のリーリエル。

デグレアは眉間に皺を寄せた。


やる気があるのは結構だが、あまり壊してくれるなよ。

魔法を使う際は十分配慮してくれ。

場合によっては、お前たちへの報酬から差っ引くことになるからな


デグレアの釘刺しに、うむ、とリーリエルは頷いた。

周囲では下級騎士達が鍛錬をしていたが、チラチラと2人に視線を向けていた。

デグレアはデルムガルド王国の王子であり、王国随一の騎士と評されている。

そのデグレアが剣を抜き、可憐な少女(仮)を前に立ち合いをしようとしているのだ。

騎士達の気がそぞろとなるのも無理はない。

辺りを見回して、デグレアはため息をついた。


……気になる奴は見学して良い。

他者の戦いを見るのも訓練のうちだ


わっと歓声が上がり、騎士たちが我先にと場所取りを開始する。


やっちゃえリーくーん!


と、呑気な応援が響いた。



……まったく、どうしてこうなったのだろうな?


お前の好奇心が原因だ。

強さを測るのなら、やり合うのが一番手っ取り早いだろう。


それはそうだが……まあ、いいか。


すぅっと、デグレアの目が細くなる。


俺としても渡りに船ではある。


目に見えるほどにデグレアからのプレッシャーが増した。

その圧に、リーリエルは思わず歓喜の声を上げそうになった。


始めっ


下級騎士の掛け声と共にリーリエルとデグレアが地を蹴る。


打撃術ストレングス!!


間合いを詰めながら、リーリエルが魔法で両手を強化する。

デグレアが何気なく振るった縦斬りを、リーリエルは左手でガードする。

見た目とは裏腹に重い一撃に対し、


ちぃ、やるではないかっ!!


リーリエルは嬉しそうに舌打ちしながら右拳を突いた。

若干バランスを崩しながらの一撃は余裕でかわされる。


はっ


短く息を吐き、デグレアが鞭のように剣を振るう。

あらゆる角度から迫る連撃に、リーリエルは両手で守りを固めた。

と、これまでの斬撃から一転、デグレアが剣を引き最短距離で突く。


(ここだっ!!)


喉元めがけ迫る剣を、リーリエルは身体を傾けて紙一重で躱わす。

同時にカウンターとなる形で鳩尾めがけて全力の一撃を放った。


(捉えた


ミーナの目にはそう映ったが、事実は異なっていた。

デグレアはバックステップして、リーリエルの必殺の一撃から逃れていた。


……なっ!?


リーリエルとミーナが同時に驚愕する。

激しい攻防に間が生まれ、騎士たちからは歓声が上がった。


初見の突きを躱すどころか、合わせてカウンターを仕掛けてくるとは。

目も反応も判断力もいい。

強気な決断ができるのは戦い向きの性分と言える


呑気に感想など吐きおって。

その余裕、いつまで持つか見ものだな


リーリエルは背に冷たい汗をかいていた。


……あのタイミングで後方に跳んだだと?

あれだけの鋭い突きを繰り出した直後に後方へ?

馬鹿な! ありえん!


ゴクリと喉を鳴らす。

たった一度の攻防で、リーリエルはデグレアの強さを嫌というほど感じ取っていた。


強いとは思っていたが、この漢。

これほどとは……


隙のない構えをするデグレア。

間合いに入れば、即座に斬り捨てる光景が見えるようだった。

リーリエルにとって、どこにも攻め手がないように思えた。

そうしてリーリエルは無力感苛まれ我知らず、


…………くははは。


嗤った。





ドンっと地を蹴り、リーリエルが加速する。

瞬時に間合いを詰めてくる様子に、デグレアは「ほぅ」と漏らした。


力の差は見せたつもりだったが、臆することなく攻めてくるとは。

心技体の心は相当なものだな。

……だが


自分の手足のようにデグレアは自在に剣を振るう。














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