第68話 王都へGO
魔獣ケルベロスを倒した後。
リーリエル達はギルド、武具店、教会と方々を回った。
ギルドには護衛依頼を終えたこと、ケルベロスを倒したことをサラっと説明した。
ケルベロスについて詳細説明をしろと、ギルド職員のコリンに必死な形相で呼び止められたが、3人は体力も限界であったため無視してギルドを後にしていた。
リーリエルが魔法の杖を借りた武具店では、店主のゲルトがニッコリと出迎えた。
リーリエルが破壊した杖を見せると、気にした風もなくニコニコと満面の笑みを浮かべていた。
リーリエルは速攻で店を出たが、後方から「何してもらおうかなぁ」という愉し気な闇属性の声が漏れ聞こえていた。
教会に行くと、バルビナは3人の顔を見て、
「無事、解決したようですね」
と、目を細めた。
◇ ◇ ◇
翌日。
リーリエルとミーナはギルドの応接室にいた。ガヴリーは宿で夢の中にいた。
向かいにはコリンが座っている。
「……つまり、ケルベロスは依頼主がヴァログ山の奥地で召喚したもので、お前たちがそれを討伐した、と」
「召喚とは違ってそうだったなぁ。
ケルベロスは封印されてたみたいなんだよね。
セルビオさんはケルベロスに精神支配されてて、それで封印を解いたような感じだったし」
「なるほど。
まぁ伝説級の魔獣を召喚してと言われるよりは、封印を解いたと言われる方が頷ける。
……しかし、どうしたものかなぁ」
コリンが禿頭に手を置いてため息をつく。
ミーナは首を傾げて、
「なんか困ること、あるかな?」
「誰も見てないんだよ、ケルベロスをさ。
お前たち以外には」
「別に良くない?」
「よくないんだよぉ。
その辺の雑魚モンスターならどうでもいいんだがヨォ。
伝説級の魔獣を倒したとなれば方々が黙っちゃいないんだよ。
特に王国側は、これが事実であれば討伐を成し遂げた冒険者を称えないわけにはいかんだろう」
「あー、そういうものかもねー」
「それなのに事実かどうかが当事者だけの話ってのはなぁ。
せめてケルベロスの魔石が残ってれば、ハッキリするんだが。
なんで召喚されたわけでもないのに無くなっちまうんだ。
どれだけ貴重なシロモノだと思ってるんだよぉ」
リーリエルがつまらなそうに言う。
「ないものはない。ただをこねるな」
「こねたくもなるわい!
まぁ、魔力計器が振り切ってたのは間違いないし、まったくのウソってわけじゃないのはギルド側もわかっちゃいるんだがな。
…………そうだな、とりあえずはその線で話してみるしかないよなぁ。
っつーわけで、二人とも付き合ってもらって悪かったな。
なんかあれば、また声かけるからよろしく頼むぜ」
コリンがガタイに似合わず器用にウインクした。
そうして昼には、リーリエルとミーナは馬車の中にいた。
ガヴリーは宿で夢の中にいた。
「私、王都行くの初めてなんだよね。
城も街並みも綺麗なんだろうなー。
美味しい物とか、綺麗な服とかたくさんあるよきっと!
楽しみ〜」
ミーナは迎えの馬車の中でぷらぷらと足を揺らしていた。
向かいに座るリーリエルは頬杖をついて嘆息する。
「退屈だな。
俺もガヴリーのように寝ていればよかった」
「ガヴちゃんは消耗し切ってて起きられないんだからしょうがないの。
それに、私は旅行気分で楽しいけどな〜」
「この俺を呼び出したことも気にいらん。
用件があるなら足を運ぶべきは貴様らだろうに」
「王国が一冒険者に褒賞渡すっていうなら、王都に呼び寄せるしかないよ。
国としての威厳がなくなっちゃう」
ケルベロス討伐の件は、コリンを通じてギルドから王国へ伝達されていた。
眉唾ではないかとの意見も出たが、魔力計器が振り切った事実が決め手となった。
ケルベロスか、少なくとも同程度の魔力を持った存在が消失したことは明白であった。
「褒賞など別に欲しくもないがな」
「リーくんはそうかもだけど、ガヴちゃんは泣くんじゃないかなー」
「…………」
「寝言でケルベロスの魔石、めっちゃ期待してたもんね。
あれだけ幸せそうな寝顔を浮かべられると、実は魔石ないんだって告げる時のことを考えるだけで私の心も痛むよ。
ま、リーくんの中に入っちゃったし、しょうがないんだけどね。
リーくんの中にねー。リーくんのー」
「お前がよこしたんだろうが!」
「そうですけど何か?
あとリーくん、ゲルトさんに杖代弁償した方がいいと思うよ。
ゲルトさんの言いなりになりたいっていうなら、止めないけどさ」
「…………」
想像して、リーリエルは恐怖で身をすくませた。
「王都楽しみだねー、リーくん!」
「……くそったれが」
リーリエルは舌打ちして、寝たふりを決め込んだ。
「ねぇ、リーくん」
「なんだ」
「どうしてコリンさんに、魔石を吸収したこと言わなかったの?」
「説明が面倒だからだ。
下手に話せば、芋蔓式に俺の身体のことも勘付かれる可能性が出てくるからな」
「あ〜」
そこで会話は終わった。
そのうち本当に眠ったリーリエルの肩に、ミーナはぽすっと軽く頭を寄せた。




