表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/69

第61話 VSケルベロス4

「リー君!?」


 突如乱入してきたリーリエルに、ミーナは驚きを隠せなかった。


「ふん、苦戦しているようだな、ミーナ」


「な、なんで、戻って……」

 

「知れたこと。

 この俺が、魔王四天王リーリエルが、こんな獣相手に逃げたとあっては廃るというものよ。

 ゆえに、叩き潰しに来たまで」


 不敵な笑みを浮かべるリーリエルに、ミーナはぽかーんと口を開けた。


「……そんな理由で戻ってきちゃったの?」


「何がそんな理由か。

 この俺が、舐められたままでいられるか」


「は…………ははは……あはははははひっ!?

 …………っく〜……いったぁ……」


 ミーナは笑い出して、痛みにうなだれた。

 貫かれた腹部から、激しい痛みがこみあげてきていた。


「使え」

 

 リーリエルが外套の下から革バッグを放り投げた。

 バッグは口が半端に開いており、瓶に入った数本のポーションがバラっとはみ出た。


「あ、ありがと」


 ミーナはすぐにポーションを拾って飲む。

 全回復には程遠いが、多少の癒しの効果はあり、幾分楽になった。


「おい、ミーナ。

 お前にアレを倒す手立てはあるか?」


「……悔しいけど、難しいよ。

 多少のダメージなら与えられたけど、相手が大きすぎて致命傷には遠すぎる。

 倒すとなると、どれだけの時間がかかるか……」


「ほう、手段はあるのか?」


「私、魔法は得意じゃないけど、この姿なら威力だけはあるから、直撃できればなんとか。

 でも、発動までにすごく時間がかかっちゃって…………って!?」


 ミーナが慌てて後ずさりする。

 急に動いたせいで、ポーションで和らいだ痛みが一気にぶり返した。

 悶絶して、ミーナはその場にうずくまる。

 背に生えた半透明の白色の片翼もしおれてしまった。


「時間はどの程度かかる?」


「私の技量だと、どうしても10分くらいは……じゃなくて!

 リー君、これ見えてる!? 翼! 私、翼持ち! 翼人族よくじんぞくなの!」


「それがどうした?」


「どうしたって………………それだけ?」


翼人族よくじんぞくはよく知らんが、お前が半天使なのは知っている。

 俺はその姿のお前に敗れたのだからな。忘れるはずがなかろう」


「私は半天使じゃないし、リー君と戦ってもいないんだけど……」


「わかっている」


 リーリエルは拳を打ち合わせて、腰を低くする。臨戦態勢に入った。


「10分か。

 いいだろう。その程度の時間、稼いでやる。

 それ以上ちんたらしているようであれば、俺がアレを倒す!」


 起き上がろうとするケルベロスに、リーリエルは自ら突っ込んでいった。


「……………………私の翼なんて、全っ然気にしてないじゃん」


 呆れたように言って、ミーナは思わず笑みをこぼした。

 リーリエルの反応は、ミーナが予想していた以上に予想通りであった。


 ミーナは立ち上がり、身を隠せる場所を探す。

 ミーナが使おうとする魔法は最上級のものであり、魔法が不得意なミーナが使おうとすれば、必要な魔力を練り上げるために多大な集中が必要となる。

 集中する間は隙だらけになってしまい、格好の的となってしまうだろう。

 しかし、周囲の木々はほとんどが爆砕していて、土が多少段差になっている程度であり、身を隠せるほどではなかった。


「待って~~~、待ってよ~~~~~~」


「ガヴちゃん!?」


 へろへろとした足取りで、ガヴリーが山を登ってきた。

 ミーナが駆け寄ると、ガヴリーは思わず抱き着いた。


「づかれだぁーーー。

 づーがーれーだぁぁぁ〜〜〜〜」 


「ガヴちゃん、大丈夫?」


「むーりぃ~~~~~」


 でろんっ、とミーナに完全に身体をあずけて、ガヴリーは愚痴をたれる。


「リーってば、いきなり急加速してボクを置いてっちゃうんだもん。ひどいよー。

 ボク、何度も待ってって言ったのに、完全に無視してくれちゃってさー。

 にしても、ミーナ無事だったんだね。安心したよ~」


「う、うん。一応は、ね」


「あれ? ミーナ、なんで金髪になってるの?

 なんか目の色も金色じゃない?

 え? ミーナだよね? ……うおっ!? 何それ、やばいじゃん!?」


 ガヴリーがミーナの怪我に気が付く。

 ポーションで多少回復したとはいえ、あくまで多少であった。

 血まみれのミーナに、ガヴリーは慌てた。


「こ、これは、まぁいろいろと……」


「そういうことは早く言ってよ!

 まぁ、任せておいて!! ボクの回復魔法で、ちゃちゃっと治してあげるから!」


「……ガヴちゃん、ありがとう」


「って、うおおおおお!? 羽!? 羽生えてる!? なんで!? え? え? 翼人族!? うそ、マジで!?」


(あ、忘れてた)


 リーリエルの反応があまりに微妙だったので、ミーナは堂々と翼を出したままにしていた。

 ガヴリーが、ものすごい勢いで後ずさっていく。

 ミーナは悲しさを感じつつも、妙に冷静になって、  


(……うん、これが普通の反応だよね)


 と、不思議な安堵感を覚えていた。


「あなた方は、やはり賑やかですね」


「え?」


 声に顔を向けると、ミーナの頭付近に小さな妖精が浮遊していた。

 否、それは妖精ではなく、ハーフエルフであった。


「……セルビオ、さん?」


「どうも~」


「なんで……あのとき、殺されちゃったんじゃ……?

 それに、その姿……?」


「これは僕の分身体です。ケルベロスに消滅させられたのもそうですけどね。

 いろいろとお話ししたいことはありますが、今は悠長にしている場合でもないでしょう?」


 はっとして、ミーナはケルベロスの方へと顔を向ける。

 散発的に爆裂音が聞こえてきていた。

 すでにリーリエルはケルベロスと戦闘に入っていた。


「……そうですね」


 ミーナはまっすぐに立ち、集中を始める。

 自身に宿る荒れ狂う魔力を安定させるため、歯を食いしばった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ