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「んじゃ、また明日学校でな!」
「チカ先輩。司をお願いします」
「うん。また明日ね」
「また明日」
サク、マサノリと別れて、オレはチカと住宅街を進んだ。
「はなせよ。ひとりで歩ける」
「ちょっとの時間で、倒れる・失神しかけるをやらかしたヤツが強がるんじゃないの」
オレはチカの肩を借りて歩いていた。
これも毎晩のことだけれど、ぶっちゃけ慣れない。
なんか超至近距離で香るシャンプーの匂いにどきどきする。
シャボン系の匂いって、なんで深呼吸したくなるんだろうか。
「あさってからはお盆だし、この子たちだって還せるでしょ」
別の意味で飛びそうになってた意識はチカの言葉で現実にもどった。
ああ、そうだ。明後日は盆入りだった。
一気にメンタルがやられる。
ただでさえ、だるい体にバーベルを乗っけられた気分だ。
「そのぶん、またこっちに入ってくるだろ。マイナスだっての。なんでそいつら頭に乗せてるんだよ」
「コツメカワウソみたいでかわいいじゃん」
チカの頭にはさっきのかまいたちが乗っている。
「いつもそれに入れておけって」
オレは彼女が腰からぶら下げているひょうたんを見やった。
いくら見た目が動物でも物の怪に変わりはない。
小さくても充分ケモノ臭いし、発する”気”は動物のそれとは違う。
むせ返りそうだし頭がぐらぐらしてくる。
オレにとっては気持ち悪いだけだ。
「シロガネさんじゃないけど、こういうかわいい系から慣れていけば免疫ができていくわよ」
(なんで見た目から入るんだよ)
これだから年上の幼なじみ女っていうのは、あつかましい。
駄菓子をよっぽど気に入ったのか、かまいたちは、さくさくと音をたててめんたいこ味の棒菓子かじっている。
ぼろぼろ食べカスの雨が降ってきているんだけど。
三匹の首には札が下げられている。
捕獲した物の怪の脱走防止用にシロガネが作ったものだ。
対象の物の怪に直接貼ったり、おびきよせるワナに貼ったりして使う。
さっきマサノリが使っていたのも同じものである。
「社さんと雨宮さんとこの」
通学路の坂道に差しかかった時、近所のばばあ二人組とすれちがう。
建前の挨拶を交わした。
少し距離ができたとたん、ばばあたちはひそひそ話を始める。