第2話【ゴブリン】
ーー数日後。
アサトはアルデシリアが来る前にモンスターと一緒に食事をし、共にアルデシリア用の作業服を作る。
「相変わらず、君達は働き者だね?」
アサトは彼の腰くらいの小人達にそう告げると彼等と共にせっせと服を作る。
アサトは然程、手先が器用な方ではない。
その分は彼等が補ってくれるのでアサトは本当に助かっている。
そんなアサト達が一仕事終えると丁度、扉がノックされる。
アサトが玄関の扉を開けるとそこには鎧姿のアルデシリアが佇んでいた。
「おはようございます、アサト様」
「ええ。おはようございます、アルデシリア嬢」
二人は互いに挨拶を交わすとアサトの家の中へと入る。
中に入ったアルデシリアは彼の家の中で客をもてなそうとせっせと動く小人達を見詰めた。
「アサト様。この子達は?」
「ゴブリンですよ」
「えっ!?ゴブリン!?」
そう言われてアルデシリアは思わず、大きな声を出す。
その声に驚いて、ゴブリンと呼ばれた小人達が一斉に驚いて隠れる。
「アルデシリア嬢。彼等を驚かせないで上げて下さい」
「す、すみません。ゴブリンと云われるとお伽噺などでよくある悪いモンスターと云うイメージがありますので・・・」
「ああ。確かにその様な本もありますね?
ですが、見ての通り、本来、ゴブリンとは妖精の一種なんですよ。
彼等は警戒心が強いですが、人間の作業などをこっそりと手伝ったりしてくれるんです。まあ、いたずら好きで人間を困らせるゴブリンもいますが、基本的に人間に嫌悪感を抱くモンスターとは違いますね」
そう言うとアサトは隠れているゴブリン達に「大丈夫だよ」と優しく囁く。
そんなゴブリン達を見て、アルデシリアも驚かせてしまった事を申し訳なく思う。
「ゴブリンって、もっと凶暴で残酷なモンスターだと思ってました。
物語などのイメージだと緑色の気味の悪い小柄な生き物と言う感じなのですが・・・」
「ははっ。本当のゴブリンはそんな事はありませんよ。
実際にはこんな感じで人間味のある妖精です。
まあ、たまにビールやバターをダメにしてしまう子もいますけどね?」
アサトはそう言うと「そうだ」と先程の作業服の事を思い出し、ゴブリン達と一緒に作った服をアルデシリアに見せる。
「そんな彼等と一緒に作ったアルデシリア嬢用の作業服です。鎧姿だと警戒してしまう子達もいますので、ここで彼等と親しくしたいのなら、そちらにお着替え下さい」
「あ、はい。更衣室はありますか?」
「浴室の脱衣所でよければ、そこでお着替え下さい。
此方も急ぎでもありませんし、ゆっくりで構いませんよ」
そう言うとアサトはゴブリンが用意してくれる椅子に腰掛け、ハーブティーの入ったカップを啜る。
そんなアサトとゴブリンの姿を見ながら、アルデシリアは偏見は駄目なのだなと思いつつ、浴室へと向かう。
アサトはハーブティーを飲みながら一息吐くと褒めて欲しがっているゴブリン達に「ありがとう。助かったよ」と労って頭を撫でる。




