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今日もモンスターと平穏に過ごします  作者: ほっこりしたい元社畜猫
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第1話【クビ】

「アサト。悪いけれど、今日でお前はクビだ」


 赤い髪の青年の発言にアサトと呼ばれた青年はやっぱりかと思いつつ、ため息を吐く。その理由は自身でも解っている。


 アサトはモンスターと戦う事を一切しないからだ。


 彼の世界でもモンスターと云う概念はある。

 そんなモンスターと戦う事をしないアサトが見限られるのは当然の事であった。


 だから、それに関して自ら、異を唱える事はない。


「俺達としても、お前と別れるのは胸が痛いけど、勇者候補に上がっちゃったからな。

 今までのようにモンスターと仲良くって訳にはいかないんだよ」

「仕方ないさ、ファルケン。ただ、俺としても君達と冒険が出来ないのが残念だ」


 アサトは赤い髪の青年ーーアサトのいたチームのリーダーであるファルケンにそう言うと互いに握手してハグをして肩を叩き合う。

 この世界にも魔王と呼ばれる存在はいる。


 なので、戦いに不参加な彼はお役御免になっても仕方ない事なのだ。

 しかも、モンスターと仲良くするなど、本来はあろう筈がない。

 アサトは寂しそうに此方を見るファルケンと同じ髪の色をした少女と何か物言いたげな白い髪の眼鏡の女性に顔を向けた。


「マシューとスージーも達者でな?」

「はい。アサトさんもお元気で」

「貴方と冒険出来て良かったわ。

 帰って来たら、吉報を届けてるわよ」


 アサトに向かって、二人が頷くと彼は三人に背を向けて去って行く。


 こうして、アサトの冒険家としての幕は閉じるのであった。



ーー


ーーー


 それから数ヶ月後、アサトは田舎に戻り、平穏な日々を送っていた。

 その傍らに様々なモンスター達がいる。


 ありふれた世界でなら、モンスターは敵と云う概念が強いだろう。

 それはこの世界でも同じである。


 だが、アサトの中心に集まるモンスターはどれも彼に襲い掛かる事はせず、寧ろ、アサトになついていた。

 アサトの冒険時代のクラスはビーストテイマーである。

 正確に言えば、モンスターフレンドと呼ばれるテイマーとは違うーーその名の通り、モンスターと仲良くなれるクラスなのだ。


 なので、彼の周りには必然的にモンスターが集まる。

 しかも、アサトはモンスターの面倒まで見ているのでモンスター達も彼に完全に心を許している。

 そんなモンスター達と生活するアサトの前に一人の少女が他の鎧を纏う騎士と共にやって来た。


 甲冑に身を包んだ如何にも女騎士と云う姿のショートカットの金髪の美少女に彼は頭を掻く。


「あっと、何か御用ですか?」

「貴方がアサト・リヒテルさんで間違いないですね?」

「あ、はい。そうですが?」

「お初にお目に掛かります。私はこの近辺の新たな領主となった娘のアルデシリアと申す者です。

 折り入って、貴方にお願い事があります」


 その物々しい言い方にアサトは少々に不安になる。

 この分だと、モンスターを世話をする彼が奇異の目で見られている可能性が高い。

 最悪、「この村を出て行け!」と言われてしまうのかとも思っていた。


 しかし、アルデシリアの次の発言で彼は驚く事となる。


「私、ファンなんです!」

「へ?」

「勇者ファルケンの語るモンスターテイマーであるアサト・リヒテルの心暖まる物語にはいつも感動させられていました!」

「え?伝説?」


 この娘は何を言っているのだろうと思いつつ、アサトは思っていたが、ファルケンの名が出た事で自分も彼等の英雄譚に加えられているのだと気付く。


(そうか。彼等は今でも勇者として頑張っているのか・・・)


 ファルケン達との事に思いを馳せるアサト。

 そんなアサトにアルデシリアと名乗る少女は勢い良く頭を下げた。


「お願いします!是非、私にもモンスターさんと仲良くなる方法を教えて下さい!」


 アサトは目を丸くした。


「構わないけど、領家の娘さんがそんな事をして良いのかい?」

「はい!父には相談済みです!」


 アルデシリアの言葉に色々と考えた末に気のいいアサトは快く承諾する事にした。


 疑問は尽きないが、このアルデシリアと名乗る少女の熱意を無下には出来ないと思ったのもある。


 こうして、アサトの新たな生活が始まる。

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