飛翔する朝の日課
わたし、毎朝起きたらね、必ずやってる日課があるの
ベッドの裾の薄いタオルで、わたしの首を締めるんだ
最初のうちは何ともないけど、だんだん頭が熱くなる。
そのうち両目がとろんとしてきて、ふわふわ、ふわふわ、インフルエンザの子供みたいに熱っぽくなるの。
とくん、とくんって、首もとが疼いて、息がぜい、ぜい、音をたててくる。
何とも言えない気持ち。
そうなったら、一度、ふぁーって大きく息を吐くんだ。
そうすると、頭にあった血がきゅぅーって縮こまって、鼻がひくひくしてくるの
すごい。すごい。みんなは命が弾けていく音って、聞いたことない?
聞こえてくるんだ。ぷち、ぷち、ぷち、って、ちょうど鼻の奥と喉の奥の間くらいから。
生と死の境目の、綱渡りをしているみたい。どっちに落ちちゃうかは、自分次第。その瞬間が、一番の至福の時なんだ。
閉じていた目をうっすら開けてみると、視界は暗く、とろとろに濁っている。それはまるで溺れかけの子山羊のよう。
顔はかんかんに熱くなる。頭の先も、耳も。やがて、ぱーん!って弾けて飛んでしまうかもしれないほど。すごい。すごい。ただただ、すごい感覚。
でも、それでお仕舞い。意識が飛ぶ寸前で、私はタオルを緩めるんだ。その瞬間、ごおーって唸りをあげて、冷ややかな空気が全身を駆け巡る。
そのあとは、はあ、はあ、はあ、って、荒い息づかい。生きてるよね。息、してるよねって確認する時間なんだ。
それで、おしまい。孤独な一日がやってくるんだ。