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もしかして

「おはよ。朝ごはん出来たよ」


 カナメは翌朝、ぽやぽやっとした声に起こされた。


(朝……もうそんな時間か。昨日は夢みたいな……あんな……ってこの声!?)


「うおっ!?」


 ガバッと跳ね起きたカナメは素早く部屋を見回した。


「どうしたのカナメ?」


 ラキだ。

 他の人間は……いない。ほっと安堵の息を吐いた。

 どうやらフェリンとスーはちゃんと部屋に戻ったようだ。


「ああ、いや……なんでもない」


 思わず額に手をやるカナメ。ラキはおかしそうに笑った。


「あはは、ヘンなの」


(昨日のあれは……マジで夢じゃないよな?)


 カナメはラキと朝食を食べる間も、ずっとそんなことを考えていた。

 我慢しようとしても自然と頬が緩んでしまう。


(たしかに俺は女の子と仲良くなる目的でギルドを作った。だけど三人で……なんてことになるとは思わなかったな)


「カナメ、なにニヤニヤしてるの?」

「ニヤニヤなんてしてねえよ」


 不審げな眼差しを向けてくるラキを適当にあしらってパンに食らいつく。

 朝食を食べ終わって適当に準備を済ませて部屋を出たところで――フェリンたちと出くわした。


「あははっ! マスターーーーーーー! おっはよーーーっ!」


 どんっ! と勢いよく背中に抱き着かれた。


「マスター……おはよう」

「あ、ああ。おはよう」


 スーも、わずかにだが笑顔を見せてくれた。


(こいつが笑ったの、初めて見たかもしれないな。……笑うとめちゃくちゃかわいいじゃねーか)


 いつもはひまわりのように明るく元気なフェリンの後ろについて歩いてるイメージだけど、スーもやっぱり女の子としてとてつもなく魅力的だった。


「おはよ、二人とももうすっかり大丈夫みたいだねー」


 ラキはいつもと変わらないぽやぽや笑顔。


「うん! マスターのおかげで!」


 四人は連れ立って一階へ降りた。

 フェリンとスーはさっそくクエストを選んでギルドを出発した。

 選んだのはミルタ周辺の哨戒警備。いきなり地味なクエストだが、たぶん反省のつもりだろう。

 元気よく飛び出していった二人を見送った後、ラキが言った。


「よかったね、二人とも元気になって」

「だな。そういやサナは?」

「そろそろじゃない? あ、来た」

「おう、サナちゃん。おはよう」


 声をかけるが何かがおかしい。

 サナは一瞬階段上から顔を出して、すぐに引っ込めてしまったのだ。


「あれ? どうした?」


 たっぷり数秒、間を開けてからようやく降りてくるサナ。


「お、おはよう……ございます」


 カウンター前まで来るものの、下を向いて目を合わせてくれない。


「サナちゃん?」

「はっ――ひゃい!」


 おかしい。明らかに変だ。


「ええと……クエスト! お仕事しなきゃー……なんて」


 いそいそと壁の掲示板のところへと行ってしまう。

 どことなくよそよそしさを感じる。


「サナちゃん、もしかして昨日の――」


 戦闘がトラウマになってしまってるんじゃ、そう言おうとした。


「きっ、昨日!? 昨日ってなんですか!? 私なにも知りません! 見てません! あああっ! これ! このクエストお願いします!!」


 掲示板のクエスト概要書を一枚取ってまくしたてるサナ。


「ああ、わかった。気を付けてね」

「はい! それじゃ行ってきますーっ!」


 ダダダっと外へ走り去ってしまうサナ。


「カナメ、サナちゃんになにしたの?」

「なにもしてねえよ……」


 してはいないのだが……。


(まさか、な……)


 思い当たるフシは、ないわけではなかった。

 入れ替わるようにリエラが出勤してきた。


「おはようございます。……あら? マスターどうかしましたか? なんだかお疲れ顔ですけど」

「いや、大丈夫だ……」

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