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大守護のギルドマスター -魔王を倒し勇者に裏切られたFランク冒険者はハーレムを目指してギルドを作る-  作者: 鉄毛布


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ミルタ防衛戦1

 ミルタの町の外は地獄となっていた。

 大地を埋め尽くすモンスターの群れは、数も密度も異常そのもの。

 もしミルタの市壁に張り付かれたら、どれほどの時間もちこたえることができるかわからない。


 <<守護の盾>>の面々はミルタ守備兵と協力してモンスターを食い止めようと戦っていた。

 北門南門に急ごしらえのバリケードを建設している間、モンスター侵攻方向正面の西門側を押さえて時間を稼ぐのが当面の目標だった。


 女性や子供、その他逃げる意思のある住民はすでにミルタよりさらに東の町を目指して避難を始めている。モンスターの進行速度を少しでも鈍らせることができれば、それだけ彼らのための時間が確保できるのだ。

 ミルタ守備兵はおよそ百余名。対するモンスターの数は十万を超えるかもしれない。絶望そのものだった。


「はあああああ! 【爆炎剣】!!」


 振りぬいたフェリンの剣圧が炎をまとってモンスターに叩きつけられる。

 ブラッドベアーやダークハンター、ホーンウルフたちがまとめて炎に巻かれる。

 【爆炎剣】はフェリンが覚えたばかりのBランクスキル。威力は高いがなにしろ消耗が激しい。フェリンはすでに肩で息をしていた。


 サナたちも奮闘している。

 スーの【ブリザード】がモンスターの群れをまとめて凍傷させて動きを鈍らせ、そこへサナが【ワールウィンド】で突っ込む。


「カアアアアッ!! 【剛風拳】!!」


 カエデの拳が凄まじい気流を発生させ、モンスターたちの動きを縛る。

 しかしモンスターの数が多すぎる。後から後から押し出されるように前へ進んでくるのだ。これではいくら動きを鈍らせたとしてもその侵攻を止めることはできない。


「なんという数じゃ……これでは……」


 カエデもすでにスキルを使いすぎてほとんど限界だった。


「うわああああああっ!」


 兵士の一人が叫んだ。

 わずかに前に出すぎたところを一気に数体のモンスターに襲いかかられていた。


「くっ、いかん。ええい邪魔じゃ!」


 兵士が襲われているのはカエデのたった数メートル横。しかし次から次にモンスターが襲いかかってくる状況。その距離は遠すぎた。


「仕方あるまい……アオオオオオオオオオッ!」


 天高く響き渡るカエデの咆哮。

 カエデの少女の体が急激に変化し、全身から灰色の毛が一気に生え伸びる。

 刀の居合い抜きで周囲のモンスターを両断しながら、一息で兵士の下へ飛び込んでいく。

 カエデは人間に変身にしているときより元の人狼の姿のほうが本来の力を発揮できる。

 自分の目の前に割って入ってきたカエデの姿を見て、助けられた兵士は悲鳴を上げた。


「ひいぃっ!」

「化け物ですまんの。これが私の本来の姿じゃ。だが――味方じゃ。信じてもらえるかの?」


 一瞬でモンスターを斬り捨てながら、ちらりと兵士を見るカエデ。その目も声もどこか哀愁を感じさせるものだった。

 兵士は青ざめた顔ながらも、なんとかコクコクとうなずいた。


「うわあああああああっ!?」


 少し離れた場所で別の兵士が叫んでいた。囲まれていた。

 兵士たちも決して練度が低いわけではない。モンスターの数、密度が異常すぎるのだ。町中の人間を教会に詰め込んだとしてもこれほどの密度にはなるまい。それほどモンスターたちがぐちゃぐちゃに押し合いながら溢れるように押し寄せてきていた。


 兵士がモンスターの群れに飲み込まれようとしていた次の瞬間。

 モンスターそれぞれの目に、正確に矢が突き立ってゆく。


「下がって! 早く!!」


 リミリーだった。

 兵士はお礼を言う暇もなく慌てて駆け出した。

 他の兵士たちも後退を繰り返して徐々に押し込まれてゆく。

 このままでは総崩れも時間の問題だった。


「くっ……」


 リミリーはよろけるように体勢を崩して、慌てて立て直す。


「あの、大丈夫ですか?」


 リミリーがいる後方弓士隊。その一人が心配そうに声をかけた。


「今日はちょっとスキルを使いすぎちゃったみたい。いやーさすがに無茶だったかも……」


 ミルタ西の村にクエストで出向していたリミリーは、そのスキルの特性で誰よりも早くモンスターの大軍の存在に気付いた。昨夜のうちから近隣の村々を回って避難誘導に駆けずり回っていたのだ。リミリーの疲労はこの場の誰よりも深刻だった。


「たまーに真面目にクエストに出たらこれだもん。こんなことならギルドでだらだらしていればよかったかも……」


 クールダウンが解消する度に連続で使い続けた【猟神憑依】の負担もリミリーに重くのしかかっていた。

 それでもリミリーは疲労を振り払うように首を振る。


「……でも大丈夫! まだまだいけるよ!」


 リミリーは新たな矢をつがえた。

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