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大守護のギルドマスター -魔王を倒し勇者に裏切られたFランク冒険者はハーレムを目指してギルドを作る-  作者: 鉄毛布


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ギルドへの帰還そして

 <<守護の盾>>に戻ったカナメはリセッタを三階空き部屋に連れて行き、ベッドに寝かせた。【疑似生命流体】で命をつなぎとめているリセッタは表面上大丈夫そうに見えていてもすぐに治療する必要があった。


 瓦礫の中から救出したリセッタの四人の護衛のうち三人は二階の大広間に寝かせている。

 治療には【ヒール】を使うことができるサナが当たった。

 寝ているところを突然起こされたサナはだいぶ混乱していたが、さすがというかすぐに治療に取り掛かった。

 ラキも手伝っての必死の治療は夜通し続いた。


 翌朝。リセッタの眠るベッドに寄りかかるようにして床で寝ていたカナメは、目が覚めると同時に【大守護】の効果が切れていることを確認した。

 リセッタのけがは【ヒール】で癒され、危機は去ったということだ。

 カナメの肩に寄りかかるようにしてサリアも寝ていた。


「ん……ふあ……」


 サリアが目を覚ました。

 慌てたように顔を上げて、カナメから距離を取るサリア。


「あっ、申し訳ございません。とんだご無礼を……」

「いや、構わないけど。それよりリセッタは」


 ベッドのリセッタを覗き込むカナメとサリア。

 リセッタが目を覚ました。


「あ……お兄ちゃん。サリアも……」


 サリアの目から大量の涙があふれ出す。


「リセッタ様……リセッタ様ぁぁぁーーーー!! うああああああーーーー!!」

「ちょっ、やめてよサリア。別に昨日だって意識を失ってたわけじゃなかったでしょ」

「だって【ヒール】使いの……サナさんが命があるのが奇跡だって……だから私、うううううっ!」


 普通なら死んでもおかしくないほどの重症も【疑似生命流体】ならば命をつなぎとめておける。一度説明したはずだがそれでもサリアは心配だったのだろう。それほど主に対して忠誠心のある少女なのだ。


「お兄ちゃんも……本当にありがとう。お兄ちゃんは私の命の恩人だよ」


 カナメは頭をかいた。


「お前にお兄ちゃんお兄ちゃんって言われ続けて俺も、いつの間にか……妹ができたみたいな気持ちになっていたのかもしれないな。だから放っておけなかった。それだけだよ」

「私、ずっとお兄ちゃんが欲しかったの。お兄ちゃんみたいなお兄ちゃん……私の理想のお兄ちゃんだよ」


 頭がこんがらがりそうな言い回し。


「なんだそりゃ」

「あはは」


 リセッタは楽しそうに笑った。


「じゃ、とにかく今日は休め。けがが治ったとは言ってもまだ安静にしておいたほうがいい」


 治療スキル【ヒール】とえいども万能ではない。失われた血を作れるわけではないし、疲労が取れるわけでもない。今は万が一を考えて様子を見る必要があった。


「はーい」


 素直にうなずくリセッタ。

 カナメはリセッタとサリアを残して部屋を後にし、その日は通常のギルド業務に戻った。

 リセッタの護衛の四人も一命を取り留めた。


 そして夜。

 ギルド業務が終わってカナメが再びリセッタの部屋を訪れると、リセッタは一人ベッドの上に身を起こしていた。


「あ、お兄ちゃん!」


 ぱっと表情を輝かせて笑顔になるリセッタ。


「よう。そういや従者の少女はどうしたんだ?」

「下でラキさんのお手伝い。今日は私たちのぶんのご飯も作ってくれるって……さすがに一人は大変でしょ? サリアはああ見えて家事全般は得意なんだよ」

「そうか。じゃあ晩メシはいつもより期待できるな」


 笑いながらベッド脇にイスを寄せて腰を掛ける。

 リセッタは少し顔をうつむかせた。


「お兄ちゃん、私のこと妹ができたみたいって……あれ、本当?」


 今朝カナメが言ったことだ。


「まあ、なんとなくそんな気がしただけだよ。それに、お前を助けるとができたのもそのおかげかもしれないしな」

「【大守護】の発動条件……守りたいと思う気持ち……」


 カナメはぎょっとした。リセッタにそのことを話したことはなかった。


「実は私、知ってたんだ。お兄ちゃんのことを調べて、それで……」


 沈んだ声。

 まるで懺悔するかのように苦しそうなリセッタ。

 そういえばビリーに捕まっていたリセッタはいつもの人懐っこい口調ではなく、威厳ある一国の姫らしい言葉で自分を見捨てろと言っていた。ならば普段のリセッタは演技をしているのか。


 違う、とカナメは思う。

 今のリセッタがカナメから【大守護】を引き出すためだけに作られた偽りの演技だとは、到底思えない。


「俺は構わないけどな」


 リセッタの顔が上がる。カナメをまっすぐに見つめる。


「俺の前では、好きなほうのお前でいればいい」

「私、お兄ちゃんを利用して――」


 カナメはリセッタの口に手を当てる。その先は言わせない。


「気にしないって。そんな小さいこと」


 リセッタの瞳から涙があふれる。


「お兄ちゃん……私、私……ううっ……」


 勢いよくカナメに抱き着くリセッタ。

 カナメはイスごとひっくり返りそうになるところをなんとか持ちこたえる。


「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん! うううああああーーーーーっ!!」


 カナメはリセッタを抱きとめて、やさしくその頭をなでてやる。

 部屋のドアが開いた。


「リセッタ様ー! 夕食の準備が整いましたよー……って、ええええっ!?」


 抱き合うカナメとリセッタを見て固まるサリア。


「し、ししし失礼しましたーーーーーー!!」


 入ってきたときと同じ勢いで閉まるドア。


「はは。誤解されちまったかな?」


 リセッタはカナメの胸に顔を埋めたままぽつりと言う。


「いい。お兄ちゃんとなら……」

「えっ」


 顔を上げたリセッタははにかんだ笑顔を浮かべた。


「えへへ……大好き」


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