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大守護のギルドマスター -魔王を倒し勇者に裏切られたFランク冒険者はハーレムを目指してギルドを作る-  作者: 鉄毛布


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ラキの幸せな日2

 そしてある日、ラキがいつものように森に出かけて――事件は起こった。

 モンスターが現れたのだ。

 真っ赤な目をした巨大な蛇。キラースネークだ。とぐろを巻くその巨体は人間よりも大きくて、ラキの体など一飲みにできそうだった。


「ひっ……ひぃっ、うわああああああっ!」


 無我夢中で逃げ出すが、すぐに転んでしまう。

 大きく口を開けるキラースネーク。


「やめろおおおおおおお!」


 横から飛び込んできて蛇の頭を棒で叩いたのは、カナメ。

 しかしキラースネークは効いた様子も見せず、尻尾の一振りでカナメを吹っ飛ばしてしまった。


「あ……あ……」


 ラキの体に巻き付いて徐々に力を込めていくキラースネーク。


「うわあああああああっ!」


 あまりの激痛に悲鳴を上げてしまう。

 このまま締め上げて自分を食べるつもりなのだとわかった。

 そのとき、倒れていたカナメが起き上がった。


「やめろ……ラキを離せ!!」


 カナメの体が白く輝いたように見えた次の瞬間、蒸気のようなもやが吹き上がり、キラースネークに絡みついた。

 キラースネークはもやに体をバラバラにされて死んだ。


「すごい……。カナメ……今のは?」


 カナメはぼんやりとして自身の手を見ていた。


「わからん。突然頭の中に声がして……【大守護】って言っていた。それが俺のスキルらしい」


 カナメは心配そうな顔をしてラキを抱え起こした。


「大丈夫か?」

「うん。なんとか……」


 カナメは小さく息を吐いて笑った。


「よくわからないけど、これが俺の力なんだとしたら……冒険者になれる。お前をずっと……守ってやれる」


 ラキはどくんと大きく胸が高鳴るのを感じた。


「僕も……ついていって……いいの?」

「冒険者になりたいって言ってたのはお前だろ? 当たり前だ」


 ラキはうれしくてたまらなくなって、どんどん視界がぼやけていって――。


「おっ、おい……なんで泣くんだ。……まいったな」


 慌てるカナメと泣き続けるラキ。

 結局このときのラキはなかなか涙が止まらずに、カナメを困らせ続けることになってしまった。



--------



「ラキっ!! しっかりしろ!!」


 カナメは<<守護の盾>>の裏庭で倒れているラキを発見して驚いた。いつも昼前にはロビーに戻って来るのに、遅かったので気になって見にきたのだ。


 急いで抱え上げて、ラキの部屋に運んで寝かせる。

 額に手を当てる。熱はないようだった。

 ラキの目が開いた。


「あれ……カナメ? ここ……僕の部屋? なんで?」

「お前、裏庭で倒れてたんだぞ。大丈夫か?」

「あはは……ごめんごめん。今日はぽかぽか陽気だったからね。眠くなっちゃったのかな」


 カナメはため息を吐く。


「お前、無理しすぎなんじゃないのか? 正直俺も反省してるんだ。仕事を押し付けすぎたってな。このでかい建物を一人で掃除して、それで洗濯や炊事まで……悪かった」


 カナメは頭を下げた。

 <<守護の盾>>設立当初はあまり余裕がなく、ラキに甘えてしまったところがあるとカナメもわかってはいた。それでもラキは楽しそうにしているし、ついつい今日までそのままにしてしまっていたのだ。普通に考えればラキの仕事量は多すぎた。

 ラキは慌てたように言う。


「そんなことないよ! 全然! 大丈夫だよ」

「いや、本当に……無理だけはするな。お前の負担を減らす方法、なにか考えてみるよ。俺はお前をこき使うためにギルドを作ったわけじゃない」


 カナメとの冒険でラキは【大守護】を発動させるために度々無茶をすることがあった。カナメは冒険自体は好きだったが、ラキのそういった自己犠牲的な行為には強い抵抗感があった。

 <<守護の盾>>を作った目的は女の子にモテたいという理由もあったが、ラキに無茶をさせないためでもあったのだ。


「カナメ……」


 ラキの瞳から涙がこぼれる。


「どうした? やっぱり具合が悪いとか?」

「違うよ。やっぱりカナメは……カナメは……。ううん、なんでもない。実はね、昔のことを思い出してたんだ」

「昔……」

「ほら、子供の頃の……カナメと森で会ったときのことだよ」

「ああ……」


 カナメは苦笑い。

 正直あの頃のことは、あまり思い出したくない。

 なぜならカナメは、あのときはまだラキを女の子だと勘違いしていて、不覚にも見惚れそうになってしまったからだ。


 毎日森でラキと遊んでいたのも、半分は可愛い女の子とデートしてるような気持ちがあった。

 それからしばらくしてラキの家に招かれて夕食を共にしたとき、ラキの両親から衝撃の事実を聞いてしまった。

 いつもうちの息子と仲良くしてくれてありがとう、と。


 カナメはショックで寝込んでしまったくらいだ。

 しかも大見得切って守ってやるだなどと言ってしまったが、その後すっかり健康になったラキは、めきめきと才能を開花させて拳闘士としてランクアップしていったので、正直カナメとしては複雑な気持ちだった。


「お前の泣き虫はあの頃からちっとも変ってないな」


 恥ずかしさを誤魔化すためにそんなことを言った。

 ラキも恥ずかしそうな苦笑い。


「あはは、ほんとだね」


 カナメは毛布をラキの肩まで上げて、ぽんと叩いた。


「じゃあ、とりあえず今日は休んでろ。午後の仕事は気にしなくていい」

「でも……」


 ラキは不満そうだ。


「いいから」


(たまには俺がメシでも作ってやるか……)


 そんなことを考えながらカナメは部屋を後にした。

 結局その日の夜はカナメお手製のハンバーグになった。火が通り過ぎて肉汁が抜けてしまい形も悪く、お世辞にもいい出来とは言えないものだったが、ラキはうれしそうだった。

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