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大守護のギルドマスター -魔王を倒し勇者に裏切られたFランク冒険者はハーレムを目指してギルドを作る-  作者: 鉄毛布


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48/82

一夜が明けて

 翌日になってリーナはカナメにべったりとくっついていた。


「えへへ……」


 そろそろ営業時間も始まろうというのに、受付カウンター定位置に立つカナメの腕を取って、離そうとしないリーナ。


「いい加減手を離せ。この格好でお客さんの相手をするわけにはいかないだろ」

「いいじゃない。見せつけてやれば」


 もしかしたらそれは、他の女の子にという意味も含まれているのかもしれない。

 カナメはリーナに軽くデコピン。


「あいたっ」

「特別扱いはしない。そういう約束だろ」

「はーい……」

「ところでリーナ。いきなり無断で外泊、なんてしてよかったのか? まさか聖騎士様が部下の一人も連れずに来たわけじゃあるまい」


 リーナは恥ずかしそうに笑う。


「実は……昨日は最初からそのつもりで来たの。部下はこの間の屋敷に待たせてあるわ。ちゃんと言ってあるから大丈夫」

「まじか……」


 ラキが楽しそうに笑った。


「リーナって、意外と大胆なところがあるよね」

「う、うるさいわね! それってつまり今までカナメに告白できなかった私を、皮肉っているのかしら?」


 相手がラキとなるととたんにムキになってしまうところは、全然変わっていなかった。

 ラキはラキでまったく気にした様子もなく微笑んでいる。


「それで、いつまでミルタにいられるんだ?」


 リーナは少し肩を落として表情を曇らせた。


「それが……実はすぐにでも帰らなきゃいけないの。この間の領土奪還作戦の功績が認められて、位階も上がるらしくて。その叙勲式に出なきゃいけないのよ」


 つまりリーナは、そんなに忙しい中、わざわざ時間を作ってカナメに会いに来たというわけだ。


「出世するのか」

「私としては……ほとんどカナメに助けられたようなものだから、複雑なんだけどね」


 謙遜ではなく本当になんとも思っていない様子だ。

 もっと喜べばいいのに、と思う。


「凄いじゃないか。たいしたもんだ」

「ほんと!?」


 パッと表情を輝かせるリーナ。


「なんだ、やっぱりうれしいんじゃないか」


 そこへ、ラキが言葉をすべり込ませる。


「違うよ。カナメが褒めてくれたからうれしいんだよね」

「ラキさんっ――!」


 キッとラキをにらみつけるリーナ。

 しかし図星だったのか二の句が継げないようだった。

 少しの間口元をごにょごにょさせていたが、あきらめたように言う。


「……うん。カナメに褒めてもらえるほうが……どんなに上位の聖騎士に褒められるより……ううん、国王陛下に褒められるより――うれしい」


(か、可愛い――!?)


 こんなに素直なリーナを見たことはない。今までのイメージとのギャップにカナメは思わず息を飲む。

 そのとき入り口のドアが開いた。


「お、リエラか。おはよう」

「おはようございます……」


 出勤してきたリエラはしかし、困った表情を浮かべていた。


「どうした?」


 理由はすぐにわかった。リエラの後ろからぞろぞろと、男たちが現れたのだ。

 軽装だが立派な鎧をビシッと着こなした三人の男たち。


「出勤してきたらギルド前にこの方たちが……」

「リーナ様」


 男の一人が口を開く。

 リーナはちらと彼らを振り向いて、盛大なため息を吐いた。


「はぁーー……。ここへは来るなと言っておいたはずよね?」

「リーナ様。そろそろお時間が……」

「あともうちょっと。もうちょっとだけ。お願い」

「しかし……」


 男は困り果てたような顔を、今度はカナメに向ける。

 カナメはリーナの肩に手を置いた。


「あまり部下を困らせるんじゃない」

「いや! 帰りたくない!!」


 リーナは泣きそうな顔をした。


「忙しいとは言っても年中無休ってわけじゃないんだろ? 会いたくなったらいつでも来い。休暇でも作って。歓迎するよ」

「でも……」


 カナメは懐から銀のペンダントを取り出した。

 <<守護の盾>>のギルド証。

 それをリーナの首にかけてやる。


「これ……」


 リーナはペンダントの紋章をまじまじと見る。


「いつでも、俺がいっしょだ」


 もうリーナとの間にわだかまりはない。リーナは聖騎士だから冒険者として<<守護の盾>>にいてもらうことはできないが、それでも気持ちの面ではすでに<<守護の盾>>の一員だった。

 リーナはペンダントをぎゅっと握って、それから大輪の笑顔を咲かせた。


「うん!」

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