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大守護のギルドマスター -魔王を倒し勇者に裏切られたFランク冒険者はハーレムを目指してギルドを作る-  作者: 鉄毛布


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帰還

 その後カナメは兵士たちから事情を聞き、マルガの外で待機していたテリューの部隊、ミドーの部隊とそれぞれ合流した。

 リーナの部隊の生き残りたちが証言して、テリューとミドーの裏切りは全軍に伝わることになった。


 証人の数が多かったこともあり、誰も異論を唱える者はいなかった。

 今回の作戦に駆り出された兵士たちがアールリーミルの正規軍ではなく、州兵傭兵冒険者の混成軍だったことが幸いした。最初から聖騎士に対して忠誠心がある連中ではなかったということだ。


 そして決定打となったのがテリューの部隊にいた側近の一人。

 彼は事前にテリューから裏切りの暴露を聞かされていたらしい。恐怖から今まで言い出せなかったのだという。


 パーテラ、マルガ、ロオウの三つの町の防備を安定させて、まずはこれを新たな防衛ラインとすることでまとまった。

 話がまとまると同時にリーナは倒れて昏睡に陥った。


 兵士たちの話ではこの四日間まともに睡眠がとれていなかったのだという。

 聖騎士二人を倒したカナメは兵士たちから軍神のように崇められ、倒れたリーナの代理として指揮をとるように懇願されたが、丁重に断った。


 リーナが回復する前に帰らなければ【大守護】のタイムリミットがきてしまうのだ。

 さすがにこんな北の地で取り残されてしまえば<<守護の盾>>に帰るのに時間がかかってしまう。

 カナメはリーナを兵たちに任せて<<守護の盾>>へと帰還した。


「ということがあったわけだ」


 話を聞き終えたリエラは感心したようにうなずく。


「聖騎士が二人も……。マスター、大丈夫だったんですか?」

「まあな」


 常識的に言えば聖騎士二人を相手にして命があるというのはまず考えられない。

 カナメにとってはその逆が当たり前だったというだけだ。

 そしてそれはラキにとっても同じ。


 普段やたらとカナメを心配するようなそぶりを見せるラキだが、こと【大守護】発動時には全幅の信頼を寄せている。今回も黙ってカナメを送り出していた。


「あまり無茶はしないで下さいね」


 リエラは苦笑い。

 カナメは軽口を飛ばした。


「俺にもしものことがあれば<<守護の盾>>の運営にも支障が出るかもしれない……ってことか?」

「もう……違います。私はマスターの心配をしているんです。聖騎士を相手にしようだなんて、普通ならありえないことなんですよ」

「わかったわかった。気を付けるよ」


 カナメとしては相手が誰であれ問題にもならないので、心配されすぎるのはむずかゆい。


「おつかれさま。はい、お茶」

「ん」


 ラキからカップを受け取って一口飲めば、心地よい香りとまろやかな苦みが口の中に広がる。


「聖騎士を倒してしまって、国ににらまれたりは……」


 リエラは一応国から派遣されている職員だ。やはり立場的にそのことも心配のようだ。


「大丈夫だろう。今回は完全にあの聖騎士二人の暴走だったんだ。証人も多いし、国から文句を言われる筋合いはない」

「それはそうですけど……あの、もし……もしもの話ですけど」


 リエラはまだ不安そう。


「なんだ?」

「もしも<<守護の盾>>の認可が取り消されたらそのときは、私は王都へ帰らないといけないと……そういう決まりになっているんです。そうなったら――」


 カナメは力強く笑う。


「そのときは国の、冒険者ギルド管理庁を辞めてうちに来い。国がなにか言ってきても気にするな。全部俺が何とかしてやる」

「マスター……」


 リエラの頬に赤みが差して、その瞳から大粒の涙があふれる。

 ぼろぼろと涙がこぼれ落ちて、リエラは仕事中なのも忘たかのように泣き出してしまった。


「うっ……ううっ、す、すみません。……私、うれしいです……あうううっ、うう……」

「ああ……いや、すまん。泣かすつもりじゃ……ええと……」


 ラキがリエラの後ろに回り込んで、その背中をそっと押した。

 カナメは飛び込んできたリエラをやさしく抱き留めて、その頭をなでてやった。

 しばらくして泣き止んだリエラは恥ずかしそうに笑った。


「すみません。仕事中なのに……私。こんなんじゃ職員失格ですね」

「だったら今すぐにでも<<守護の盾>>の専属になるか?」


 もちろん国の職員を横取りして専属になどしたら、一発で認可は取り消されてしまうので、これは冗談だ。

 リエラは困ったように笑う。


「もう、そんなこと言ってまた泣かそうとして」

「ははは」


 三人はお互いに笑い合った。

 場の空気がなごんだところでラキが改めて言った。


「でもカナメ、すぐに帰ってきてよかったの?」

「なにがだ?」

「まだ四つの町のうち最後の一つが解放されてないんでしょ?」

「大丈夫だろう。三つの町は安定したんだ。リーナなら残るカカルイユの攻略も必ずやってくれるさ」


 カナメは自信を持って言った。

 戦場で見たリーナの姿は、今までの彼女とは違っていた。補給のない前線で四日間も、あんなにボロボロになるまで戦う根性があるとは。リーナは本当に成長したと思う。


「リーナとまた会うことがあったら、ちゃんと(ねぎら)ってあげてね」

「どうだろうな。あいつは聖騎士だし、今回の功績が認められればまた出世するかもしれない。……もう会うことはないかもしれないな」

「そうかな? 案外早く再会できるかもしれないよ。なんとなくそんな気がする」


 ラキは冗談めかした口調でそんなことを言う。

 カナメは苦笑いだ。


「まさか」


 しかしラキの予感は、的中することになった――。


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