表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大守護のギルドマスター -魔王を倒し勇者に裏切られたFランク冒険者はハーレムを目指してギルドを作る-  作者: 鉄毛布


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/82

リーナの意地

 現れたのは聖騎士二十二位、ミドー。


「ミドー殿まで……そんな……」


 ミドーはゆっくり時間をかけてリーナたちの前まで歩いてきて、口を開いた。


「チャチな結界だな」


 ハンマーを一振り。


 ゴバアッ!!


「うわあああああっ!」

「ひぃぃいいいいーーーーー!」

「ぎゃああああああっ!」


 兵士たちの叫び声。

 大地を揺さぶるような凄まじい一撃が、リーナの【白刃結界】を打ち破った。


「ミドー殿……なぜこんなことを」


 ミドーは彫りの深い無表情をリーナに向ける。


「貴様が死ねば席が空くのだよ。聖騎士八位、ヨーセフ様のご子息のな」

「なっ――」


 絶句するリーナにミドーは淡々と告げる。


「九十九位はすでに埋まり、百位の候補者も決まっている。どうしても早急に空席が必要になったというわけだ。貴様は本来聖騎士に選ばれるはずではなかった。魔王討伐などという余計な真似をされたために予定が狂ったのだ」


 つまりミドーはより上位の聖騎士のご機嫌を取るため、リーナを生贄に差し出そうというのだ。

 ミドーとテリューが組んだのはお互いの利害が一致したためだろう。

 リーナは二人の策略にハメられたのだった。


「私を陥れるためだけに、二千もの兵を犠牲にしたというの? 兵たちにはなんの罪もないというのにっ……!」


 弱気に侵食されかけていたリーナの瞳に、再び強い光が宿る。

 許せなかった。

 自分だけならともかく多数の兵を無駄死にさせるような所業は、絶対に――。


「そうでもしなければさすがに疑うだろう? なに、今回の作戦に駆り出されているのは属州から集めた者たちだ。アールリーミルにはなんの痛手にもならん。むしろ表向きルメルニリア州を救いながら、協力各州の力を削ぐこともできて一石二鳥というわけだ。せいぜい栄光あるアールリーミル神聖王国の役に立って死んでくれたまえ。ふっ、くくく……。はーっはっはっはっはっは!」


 響き渡るミドーの哄笑(こうしょう)

 無表情の仮面を剥がした内に秘められていた、これがその本性だった。


「この野郎っ……殺してやる!」

「許さねえ! 絶対に!」

「お前は人間じゃない……悪魔だ!」


 憤る兵たちを無視して、ミドーは再びいつもの無表情に戻ってリーナに冷たく宣告する。


「さて、自分が死ぬ理由は理解できたかね。では――さらばだ」


 ミドーの振り上げたハンマーが、ついにリーナに振り下ろされる。

 その瞬間――。


「あまり私を、ナメないでいただけますかしら?」

「むっ!?」


 ドゴオッ!


 ハンマーの轟音。

 しかしそれはリーナを捉えたものではなかった。

 【受け流し】を発動させたリーナの剣がミドーのハンマーの軌跡をずらし、地面を叩かせたのだ。

 リーナは一陣の風となって、ミドーとの間合いを一瞬でゼロにする。


 【瞬歩】。剣士のBランク移動スキル。

 【瞬歩】からの【重剣】【連剣】【剛剣】を乗せた【疾風剣】。さらには【陽炎剣舞】の残像の追撃。

 【斬神】の身体能力ブーストをかけた超連撃。

 ミドーはハンマーの()を盾にするように構えるが、それを鎧ごと断ち割らんと多重に重なる剣戟と衝撃が襲う。


 ズガガガガガガガガガガガガッ!


「ぬおおおおおおおおおっ!?」


 ドドォッ!


 ミドーは無様に吹っ飛ばされて、鎧の背で地面を削ることになった。

 倒れたミドーの鎧を踏みつけて、その喉元に剣先を突き付けるリーナ。


「私を<<剣聖>>と呼ぶ人は多いですけれど……よもやその二つ名、虚仮威(こけおど)しだとでもお思いでしたか? こと一対一の戦闘において、たとえ相手が上位の聖騎士であろうと……遅れを取るつもりはありません」

「ぐうっ……まさかこの期に及んでそんな力が残っていたとは。だが……」


 リーナの顔がしかめられる。


「なんですの……体が……動かない」

「クックック。さすがは<<剣聖>>といったところですか。しかし一対一とは……私のことを忘れるとは侮辱が過ぎる」

「テリューっ……!」


 振り向けば、テリューがリーナに手のひらを向けていた。

 体の自由を奪うスキルかなにかを使っているのだ。


「ククク……すぐに我が【不死兵団】の一員に加えて差し上げますよリーナ殿……」

「よくやったテリュー。では今度はこちらの番だ」

「きゃあああああっ!」


 体に走った衝撃に、リーナは悲鳴を搾り取られる。

 いったいなにが起きたのか理解が追い付かない。

 突然全身に、痺れるような痛みが走ったのだ。

 ゆらりと起き上がったミドーの体は、バチバチと青白く光る雷をまとっていた。


「私は聖騎士二十二位。<<雷帝(らいてい)>>のミドー。我が一撃は――神の(いかずち)!!」


 獅子のたてがみのようなミドーの髪は、紫電を帯びて逆立っている。雷をまとう黄金のハンマーを振り上げるその姿は、本当に神話の神のように見えた。

 リーナは全身が痺れて動けずにいた。


(ここまで……ですの? カナメと約束したのに……必ずやりとげるって……それなのに……カナメ……)


「あの世への土産にするがいい。受けよ!! 【神雷撃(しんらいげき)】!!」


 死を覚悟して目をつぶったリーナに、衝撃はいつまで経ってもやってこなかった。

 代わりに聞こえてきたのは場違いな声。


「あー……このおっさん、誰?」


 カナメだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ