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大守護のギルドマスター -魔王を倒し勇者に裏切られたFランク冒険者はハーレムを目指してギルドを作る-  作者: 鉄毛布


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天使の涙

 転移ゲートを使って<<守護の盾>>に戻ってくるなり、セスティナは意識を失って倒れてしまった。

 遺跡では平気な様子だったが、やはり結界に囚われていた際に激しく消耗してしまっていたらしい。


 カナメはすぐに抱きかかえて三階の空き部屋に運んだ。

 ベッドに寝かせてほどなくセスティナは目を覚ました。


「ここは……」

「よかった。目を覚ましたか。お前、<<守護の盾>>に戻ってくるなり倒れたんだぞ」

「そうか。すまない……だがもう大丈夫だ」

「ダメだ。しばらく寝ていろ。あまり無茶をするんじゃない」


 そう言って、起き上がろうとするセスティナをベッドに押しとどめた。

 抵抗されるかとも思ったがセスティナはおとなしく枕に頭を沈めた。


「やれやれ……うちのマスターは心配性だな」

「なに言ってやがる。実際に危ないところだったじゃないか」

「たしかに。今回ばかりはさすがに私も半分あきらめかけていた。もうダメだろうと思ったよ。マスターは……私の命の恩人だ」


 真面目くさった顔でそんなことを言われてしまうと、かなり恥ずかしい。


「ギルドマスターとして当たり前のことをしたまでだよ。お前は俺の【大守護】を見たのは初めてだったか?」

「ああ。何度か話には聞いていたが……正直度肝を抜かれたよ。想像していたよりはるかに規格外なスキルなんだな」

「条件が厳しいからいつも使えるわけじゃないけどな。普段の俺はただの元Fランク冒険者だ」

「いや……仲間想いのいいギルドマスター、だよ」

「う……」


 カナメは思わず自分の頬を触った。


(こいつ、恥ずかしいことをさらっと言いやがって。それにこうして穏やかに笑ってると……めちゃくちゃ可愛いじゃねーか)


 普段は人を寄せ付けないような厳しい雰囲気をまとっているのに、こんな女の子らしい顔もできるなんて予想外にもほどがある。

 恥ずかしさを紛らわすようにカナメは話題を変えた。


「あー、ついでだから聞きたいことがあるんだが……。お前、こいつに心当たりはあるか?」


 カナメは一枚の紙を出した。

 例の、セスティナにかけられた嫌疑の書類だ。

 セスティナはカナメが掲げた紙をしばらくの間真剣な表情で見つめていたが、やがて紙から視線を外して天井に向けて腕を伸ばした。


「これだ」

「ん?」


 セスティナの視線を追えば、その指には指輪が光っていた。


「天使の涙……装備者の老化を止め、永遠の命をもたらすと言われている希少装備だ」

「そんなものが……」


 指輪には大きな水滴型の宝石が嵌められていた。涙、と言われればそう見えなくもない。

 セスティナは無造作に指輪を抜いた。


「あっ……外しちまっていいのか?」


 セスティナはにやりと笑った。


「なんだ? 私は別に装備で若さを保っていた老人ではないぞ。見た目通りの年齢だよ」

「ああいや、そういう意味じゃ……」

「それにこの指輪に永遠の命を保つなんていう力はない。偽物か、本物でも元々そんな力はなかったのか、伝説だけが独り歩きしたのか……私にもわからないけどな」


 そう言って外した指輪をぐいっとカナメに押し付けてくる。


「えっ?」

「持っていけ。そいつを渡せば国も納得するだろう」

「バカな……。受け取れるわけがない」


 リエラの話ではセスティナは希少装備を収集することに情熱を燃やしている。この指輪にも彼女の冒険の苦労が詰まっているはずだ。


 そしてもう疑う余地はない。セスティナは無実だ。悪意で違反を働くような人間が、こんなにさらりとした表情をして指輪を手放すはずがない。

 セスティナは自嘲気味に笑う。


「なに、初めてのことじゃない。私が身に着ける装備はどれも希少なものだが、それが運悪く権力者の目に留まれば、こうした嫌がらせを受けることはままあるんだ。永遠の命となればなおさらだ。古今あらゆる時代の権力者が等しく望むのは、決まってそれだからな」


 つまりセスティナが天使の涙を手に入れたことを知って、回収クエストは後出しで出されたということか。

 しかも天使の涙回収クエストの依頼者は国。アールリーミル神聖王国の権力機構の、かなり上に横取りをたくらむような人物がいるのだ。

 セスティナはふぅ、と息を吐いた。


「マスターの言った通りだな」

「ん?」


 セスティナは皮肉げに口の端を上げる。


「疲れたのでそろそろ休ませてもらいたい、ということだ。あなたの言う通り私は自分でも気付かないほど無茶をしていたようだ」


 それが言い訳だということはすぐに気付いた。

 が、一人になりたいというのならカナメはそれを邪魔する気はなかった。


「わかった。明日、もう一度話をしよう」

「ああ」


 カナメは部屋を後にした。

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