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大守護のギルドマスター -魔王を倒し勇者に裏切られたFランク冒険者はハーレムを目指してギルドを作る-  作者: 鉄毛布


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青空のきれいな日

「カナメ―、またニヤニヤしてる」

「ぐっ……」


 カナメは朝食のパンを危うく喉に詰まらせそうになった。


「はい、水」


 手際よく水差しからコップに注いで、手渡してくれるラキ。一息に飲んでカナメは言った。


「ふぅ。……別にニヤニヤなんかしてないだろ」

「ふうん」


 ラキはただ微笑むだけ。


(こいつ、知ってるのかいないのか……。めんどくせえ。言っちまうか)


 カナメとしてもいつまでも隠しておけるとは思ってない。それに別にラキに遠慮する必要なんてそもそもなかった。


「昨日サナとヤッた。その前はフェリンとスー。それだけだ」


(さて、どんな反応をするか……)


 スープの底の豆をスプーンですくいながら、ちらと目線を上げてラキを見た。


「知ってたよ。お部屋の掃除してるの、誰だと思ってるの? それに僕、となりの部屋だからね」

「あ……」


 このギルド建屋のすべてはラキ一人で掃除をしていた。もちろんカナメの部屋まで。


「ハーレムを目指すって言ったとき、お前は上手く行かないみたいなこと言ってたけど、アテが外れたな」

「あはは、そうだねー。やっぱりカナメだもん。女の子は放っておかないよ」

「……」


 爽やかな笑顔でそんなことを言われれば、言葉に詰まってしまう。

 嫌味で言ってるわけではないことは、ラキの目を見ればわかる。


「なんでお前までうれしそうなんだよ」

「そう見える?」

「ああ」

「だって……」


 ラキはそこで言葉を止めて、少しの間目を閉じた。


「ううん、なんでもない」

「ヘンなやつ」


 食べ終わって部屋を出ると、廊下でサナと出くわした。


「マスター! おはようございます」


 パッと顔を輝かせるサナ。


「おはよう」


 たたっとこちらへ駆け寄るサナだったが、その足がふいに止まる。


「あ……」

「おはよ、サナちゃん」


 カナメに続いて部屋から出てきたのはラキだった。 


「ラキさん……」


 サナはこんなことを言ってきた。


「マスターって、いつもラキさんといっしょにいますよね」

「ん?」


 サナは少し消沈した顔だ。


「まるで――……。えと、なんでもないです」


 何を言いかけたのか。

 が、昨日の今日だ。サナの言いたいことはなんとなくわかる。


「ラキとはなんでもないよ。ただのくされ縁だ。それにこいつは男なんだ」


 サナの目が丸くなる。


「は?」

「だから、男。れっきとした男性だよ」

「ええええええええええええーーーーーーー!!」


 サナの絶叫が建物を震わせた。


「あはは。別に隠してるつもりは、ないんだけどね」


 苦笑いのラキ。


「いや隠さなくたって、黙ってたら絶対に誰も気づかねえよ……」

「あ、そんなことないよー。ほら、サナちゃん。触ってみて。僕の鍛え上げた腕を見れば、すぐにわかるはずだよ」


 そう言ってエプロンドレスの腕をまくり上げるラキ。なぜかふふんと得意げな表情を浮かべている。

 現れたのはすべすべな肌の細い腕。


「え……あの……じゃあ、失礼します」


 そう言ってちょこんとその腕をつつくサナ。


「すごい……ぷにぷに。それにきれいなお肌。女の子みたい。ううん、なんていうかそれ以上かも。全然男性だなんてわからない……」

「がーーーーん。そんなぁ……。カナメーー……」


 哀れっぽい声でカナメを見るラキ。

 カナメは肩をすくめた。


「アホか……」


 サナはくすくすと笑いだした。

 つられてカナメもつい笑ってしまう。


「くくっ」

「ひどいよ二人ともー……」


 今日もそろそろギルドの営業時間だ。



--------



「ふぁぁ」

「あら? 寝不足ですか?」


 朝の業務をこなし、客足が途切れた昼過ぎ。つい眠気に誘われてあくびをしてしまったカナメに、リエラが軽い調子で声をかけた。

 心当たりがありまくりなカナメは思わずぎくっとした。


「みたいだよー」


 ラキがごく普通の調子で答える。


「マスター、真面目なのはいいですけど、働きすぎはダメですよ。夜中まで書き物をしてるって、この間も聞きました」


 少し怒った様子なのは本気で心配しているからだろう。

 仕事とは真逆の理由で寝不足なカナメとしては、なんだか申し訳ない。


「いや、大丈夫だよ。ありがとう」

「マスターーーーーーーー! たっだいまーーーーー!」


 ガチャンと音がして扉が開く。

 フェリンとスーとサナだ。今日も三人でクエストに行ってきたらしい。


「おう、お帰り。おつかれさん。ずいぶん早かったな」


 たしかクエストは人食いブラッドベアーの討伐だったはずだ。街道で死者が出て出された依頼。一度人の味を覚えたモンスターは何度でも襲いに来るから、絶対に駆除する必要があった。


「あそこは草原だからね。現場近くの草むらから次の獲物を狙ってたのをすぐに見つけられたよ」

「そうか」


 フェリンはリエラの前に立ってその手を取った。リエラは相手の手を取って目と目を合わせることによって、【鑑定】のスキルを使ってクエスト中に起きた出来事の一部始終を見ることができる。

 カナメは一瞬はっとした。


(リエラはその気になれば俺がフェリンたちを抱いた夜のことも見れるんだよな……)


 まあリエラに限ってそんなことはしないと思うが。それでもどうしたって胸の奥がむずむずしてしまう。

 フェリンはまったくそんな可能性など考えていないようにリラックスした顔で【鑑定】を受けた。


「はい、おつかれさまでした。ブラッドベアーの討伐、確認しました」


 リエラはいつも通りに鑑定を終えた。


(ま、そうだよな)


 カナメはほっとしてカウンターの下から報酬の入った布袋を取り出す。


「はい、これが報酬――え?」


 カウンター上に出されたカナメの腕を素早く取って、ぐいっと引き寄せるフェリン。そのまま前のめりになったカナメの頬へキスをした。


「えへへ。隙ありーっ!」


 いたずらっ子のように笑うフェリン。


「あ、ああ。やられたなこりゃ……」

「マスター……私も」

「え? あっ――」


 いつの間にかカウンターのこちら側に入ってきていたスーも、カナメの肩を掴んで背伸びをしてキス。

 サナはと視線を泳がせれば、スーの反対側に立ってカナメに体をぴったりと寄せていた。


「あらあら、三人ともいつの間にマスターとそんなに仲良しに……」


 さすがのリエラも目を丸くして驚いていた。


「そうだマスター。お昼ごはんまだ? 一緒に食べようよ。私の宿の一階、食堂なんだー。結構おいしいよ」


 カナメもその食堂には何度か足を運んでいる。


「しかし……」


 カナメが何か言う前にリエラがするりと言葉を滑り込ませた。


「行ってらっしゃい、マスター」

「僕たちも適当に済ませておくよー」


 カナメは引っ張られるようにして三人に連れていかれ、昼食を取ったのだった。

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