プロローグ
夕日が地平線の彼方に沈とうとしている。
まだ名残惜しそうな夕日が照らすのは草原に展開された無数の兵士と大砲の数々。
そしてそびえ立つ丘の上に佇む複数の人。
「ついにここまできたか。」
と兵士の一人が呟く。
「あぁ、奴らをここで殺せば全て終わりだ。」
とまた別の兵士が応じる。
「狙うは丘の上」
「魔に属するものに文明の鉄槌を」
「「「鉄槌を」」」
一斉に大砲が火を吹く。
「
「ついにもう私と貴様の二人になってしまったか。」
燃え盛る火と降り注ぐ砲弾の中赤いローブを着たその女は余裕すら感じさせる笑みを向けて喋りかけてきた。もともと鮮やかな緋色だったそのローブは魔法使いとしては普通考えられない格闘戦による帰り血と周りに立ち込める煤によってもとあった鮮やかさを失っている。それでも女の爆ぜるような橙色をした髪は周りの踊り狂う炎の中でも負けずに輝いてる。
「おっと鍵となるこの子もあわせて三人だったな」
と、足元に横たわる少女に視線を向ける。少女は女と同じ橙色の髪をしていたが一房の銀色のかみが印象的だ。
「本当に良いのか?」
ここで初めてもう一人の男が口を開いた。男は黒いローブを着ていて肩に一羽の鴉を乗せている。気遣わしげな男の視線に女は「なぁにもう覚悟はできている。」
と足元に眠る少女を抱き上げ銀色の一房の髪を愛しそうに一撫でし口付けし
「それに、これはこの子の未来を守るため。そして何より私への罰。」
と笑みを浮かべた。
「でもこの子は一人になってしまう。」
男は絞り出すようにして声をかける。それに対し意外そうな表情を見せたあとほっとした表情になり
「大丈夫、あなたがいるから。」
と穏やかに告げる。
周りから聞こえる砲声が近づいてくる。
「そろそろ行ってくる。」
女は少女を男に預け背を向け立ち上がる。振り向いて一言
「私の炎はそう簡単には消えない。」
と告げて女は砲声のもとへ走り出した。
残された男は手元に横たわる少女を抱きかかえ
「ずるいんだよほんと」
と言い残し闇のなかに溶けるよう消えていった。




