プリエール
「お姉さま、もうお昼だよ?お昼寝しましょ?」
「ええ、そうね。」
こうしてある日の昼、ある館の中で、2人の姉妹が昼寝をしていました。
2人とも、部屋はほとんど真っ暗にしてありました。
そしてその姉が見ていた夢。
それは、5百年ほど昔の話で、
まだその姉妹が人間だった頃の話です。
ある日。意図せずに不思議な能力を使ってしまった2人は、実の両親から恐れられ、暴力を振るわれる毎日を繰り返していました。
でも、その中でも、食事を持ってきたりしてくれる優しいメイドがいました。
怪我の手当などもしてくれるとても優しいメイドでした。
そしてまたある日。
両親に暴力を振るわれた後、ふと、姉は窓の外を見てみました。
すると、曇っていましたが、空が真っ赤に染まっていたのです。
さらに外を見続けていると、いつも見ている月よりもふた周りほど大きな月が、紅く染まっていたのです。
それを見た瞬間、姉の中で何かが弾けました。
その弾けたものとは、怒り、悲しみ、嫉妬などの負の感情と。
ーーー魔力
でした。
そしてその弾けたもの全ての感情に任せ、背中に生えた翼を使って、月を背に飛び、自分達を罵り、嘲り、暴力を振るった、使用人などの全ての人を魔法で殺めました。
『っ!ぅぅううぁぁああああああああ!!!』
そして元いた部屋に戻ると、妹の方が実の両親を殺していました。
『私…』
何か言いかけましたが、姉がその先を言わせずにギュッとしてあげたのでした。
その後、もう何もかも信じられず、何もかもを失い妹しかいなくなり、殺めた人だらけの廊下を歩いていると、カラン…と音がしました。
見てみると懐中時計を蹴ったようです。
そして、その懐中時計は、優しくしてくれていた一人のメイドのものでした。
それに気付き横を見ると柱に持たれかけて座りながら死んでいるそのメイドがいました。
そして、姉はそのメイドが私たちにとても優しくしてくれたことを思い出します。
『ああ…あ…あ…ああああああああああ…!』
そして、もう死んでいる彼女を抱きしめます。
そして思います。
“彼女も私たちと同じでなにか能力を持っていて、私たちだけのメイドだったなら”と。
そして。
瞳に涙をためている姉の頬にそのメイドの手が触れる。
『…お…じょ…う…さま…泣か…ないで…下さい…』
そしてーーー
「っ!」
姉は起きました。
横ではあのメイドがハンカチで自分の涙を拭いてくれていました。
「…ありがとう咲夜。…紅茶、お願い。」
「分かりました、お嬢様。」
そして咲夜と呼ばれたメイドは部屋を出て行きました。
姉は、(…今こうしていられるのは…私が咲夜の運命を変えてしまったから…なのよね…。少し申し訳ないわね…。あの時、懐中時計を蹴っていなければ今の私はいないわね…。ああ。咲夜は人間だというのにあれからずっと…ごめんなさいね…咲夜。)
そして、そのうちに妹を連れた咲夜が戻り、姉妹仲良く紅茶を飲んだのでした。