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第四話 モテ期到来の予感!

 有名になって嬉しかったのは最初のうちだけだった。

 

 俺の存在が知られたことで、俺の正体を世間が気にし始めた。

 ゲスなワイドショーはプロレスラーやスタントマンにインタビューをしている。

 

 まさか、普通にサラリーマンをやってる小太りな男がヒーローとは誰も思うまい。(自分で顧みて悲しくなる)

 

 

 気をつけなきゃいけないのはマスコミよりもそこら辺にいる普通の人だ。

 移動しながら変身していたが、もしかして俺の顔を見た人がいるかもしれない。

 返信後の姿は目立つので、動画や画像がネット上に載り始めているが、変身途中は幸いまだ動画などは無いようだ。


 

 最初によく考えれば良かったんだが、顔バレすると私刑を行った罪に問われる事になる可能性もある。(実際その可能性に言及したコメンテーターもいた)非常にマズい。

 

 今後は人前で変身しないようにしないとな。

 とはいえ、出動が遅れるとこの間の子供のように怪我人を出してしまう。

 だからと言って、職場で変身するわけにもいかん。

 どうしたもんやら……。

 

 

 

 

 ところで、サクセスフューチャーの仕様変更対応はなんとか峠を越えた。

 今後も無理難題を押し付けられる可能性はあるが、こちらの体制も六人体制(うち一人は見習いだが)なので心強い。


 今日から新人の川合奈保子にプログラミングを教えていく。教官は俺だ。

 次の開発の大まかな仕様を伝える。

 川合はズブの素人なので、設計書に記載された言葉の意味からレクチャーしなけりゃならない。

 

 とはいえ、女子との会話は楽しいものだ。

 和気あいあいと研修は進む。

 女子の真っ直ぐな瞳で見つめられると、イケメンな自分をイメージしてしまう。

 と、ともに俺は尿意をもよおした。

 

「ごめん、ちょっと外すわ」

 

 トイレに駆け込む。

 用を足して手を洗い、鏡を覗き込む。

 そこには、フツメンの俺の顔ではなく、若干美化された俺の顔があった。

 

 な……なんじゃこりゃ!?

 

 どうやら勝手に組成魔法が発動して俺の顔が変形していたらしい。

 魔法ってなんて便利なんだ!

 

 イケメン化した俺は自信を持って川合にプログラミングのイロハを教えた。

 いっそこのまま男女のイロハも教えてやろうか!……童貞だけど。

 

 

 川合がふと俺の右手に目をやる。そこにある腕輪(魔法石)に気づいたようだ。

 

「唐澤さん、これ可愛いですね。彼女さんにもらったんですか?」

 

「いやぁ……俺、彼女いないよ」

 

「えー、意外ですね」

 

 なんだこれ?これなんだ?

 俺の生涯の中でこんな甘美な会話あったか?(いや、ない)

 これがイケメンフェイスのなせる業なのか!

 

 唐澤亮、三十三にしてモテ期到来の予感だ。

 

 

 

 

 今夜の俺は気分がいい。

 仕事を上がったあと、組成魔法で色々試してみた。

 身体の肉の再構成もできるようで、無理のない範囲なら見た目もかなり変えることができる。

 これなら顔バレの恐れからも解放される。

 

 俺は顔立ちをドラマの俳優に似せて、外を歩く。

 そしていつものように察知魔法を発動した。

 

 キタ!

 強い悪意、殺意。

 でも、今日のこの感覚はいつもと少し違う……。なんだろう?

 

 ともかく、俺は現場に向かって走った。

 

 俺の足は港にある倉庫の前で止まった。この中に何があるんだ?

 倉庫の通用口を開けようとする。鍵がかかっているようだ。

 

 仕方ないので力ずくでこじ開ける。

 

 バギッバギッ

 

 思いの外大きい音が出たが気にしない。恐れるものなんてないんだから。

 

 次の瞬間、手に強い衝撃を感じた。

 衝撃を感じた箇所を見る。

 

 小指と薬指が無くなっている。

 流れる血液。

 何が起こったんだ?

 

 目の前に刃物を持ったタンクトップ姿の大男が立っている。

 そうか、指を切り落とされたんだ。

 

 大男は刃物を振り回し襲ってくる。口からは泡を吹いている。

 俺はその攻撃を避けながら、回復魔法で傷を治した。魔法が使えなかったら一生モンの怪我だった。

 

 襲いかかる大男に火炎魔法を放った。

 大男が怯む。その隙に突いてパンチを叩き込む。

 大男は倒れた。

 

 しかし、まだ殺気は消えていない。それどころか強くなっているようだ。

 俺は倉庫の中に駆け込んだ。

 

 

 目の前の光景に俺は息を呑んだ。

 ドラム缶の中に入れられぐったりとした裸の女性、そこに流し込まれるセメント。それを囲む男たち。

 

「お前ら!何をしているんだ!」

 

「んだテメエは?」

 

「俺は闇に走る光!

 魔法戦士ブラックシャイン!」

 

「あ、こいつ今ネットで話題の!」

 

 男の一人が俺のことを知っていた。が、慈悲の対象にはならん!

 俺は男たちの方に走る。

 

 男たちは手に黒いものを取り出した。あれは、ピストル!

 

 身体強化魔法を最大出力にする。

 銃口から飛び出す銃弾が、ドッチボールくらいの速さで飛んでくる。

 俺はそれをすべてかわし、火炎魔法を放った。

 

 体に炎が燃え移り、慌てふためく悪党たち。

 俺は混乱のなか、女性を抱きかかえてその場から走り去った。

 

 

「ん……んん……」

 

 走ってる最中に女性が意識を取り戻した。

 

「え、なに?あなただれ?」

 

「君を助けに来たヒーローさ」

 

 俺は女性を降ろすと、組成魔法で服を着せてやった。

 

「さらばだ!」

 

「ちょっと待って!」

 

 女性が引き止める。

 

「私、行く所ないの。お願い……助けて」

 

 その必死の懇願に負けて俺はその女性を自分のアパートまで連れて帰った。

 女性はカスミと名乗った。

 

 俺は変身を解いた。

 

「カスミ、まずはシャワーを浴びな。セメントは肌に悪いぜ」

 

「ありがとう、何から何まで」

 

「良いってことよ」

 

「あの……」

 

「なに?」

 

「もしよかったら、一緒に入って。怖くて……」

 

「ん、仕方ねぇな」

 はい!よろこんで!と内心思ったがね。


 浴室でマジマジとカスミを見る。

 黒く長い髪に、赤い唇。はっとするような美人だ。

 倉庫の中で見たときはわからなかったが、カスミは相当な巨乳だった。

 腰は細くくびれ、臀部はふっくらとしている。

 思わずつばを飲み込んだ。

 

「体がこわばってうまく立てない」

 

 しゃがみ込むカスミを洗ってやる。

 

「うふふ、くすぐったい」

 

 やっと笑った。

 温かい湯がカスミのこわばった体も心もほぐしたようだった。

 

 その夜はカスミをベッドに寝かし、俺はソファで寝た。

  

 こうして、正体不明の女性カスミとの生活が始まった。

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