あの子はだあれ
あの子は一体誰だろう。
影に隠れて見えていない三人の影が佇んで、恥ずかしがり屋か顔を見せない。
一人に近寄ってみるとその影は薄くなり、その人は小さな女の子で、タバコ屋のみよちゃんだと判った。
そしてそのみよちゃんの手を引き、竹馬をしている影に近寄ってみる。
それは隣の家で怒声をよく浴びているけんちゃんで、二人にあった事でなんだか子どもに戻った気がした。
周りを見渡すと、いつの間にかお寺に居た事に気がつき、子どもに戻っている事に気づく。
残りの一人はお寺のこぞうなのだが、三人の中にはいなかった。
「三人?」
みよちゃんにけんちゃん、そして誰だろう。
日が暮れて、二人の顔が見えなくなった後は月が綺麗だったのは覚えている。だけど、時間も場所も、顔も自分も判らないまま、月夜に照らされて埋められていたのはいつの記憶だ。