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エルフっ娘と宿題

皆さんは夏休みの宿題は終わりましたか?自分はまだです(((o(*゜▽゜*)o)))

「暇だね〜」


「暇だな〜」


「暇です〜」


「暇だよ〜」


「いや暇じゃねーだろ」


 私たち4人の最後にそうツッコミを入れたリアムはどんと紙のようなものを私たちの目の前に突きつけた。しかし、私はそれから目を反らすようにしてラルちゃんの方へ顔を向ける。


「そういえばさ、明日って何の日だったっけ」


「さあな、ミントなら知ってるんじゃないか?」


 無視されたリアムはかなり不機嫌そうな表情をしている。いつもなら私たち四人を見た瞬間気絶するくせに今日は何なんだろうね。

 全く…リアムはかまってちゃんなんだから。私が構ってあげないと寂しくてそうなっちゃうんだね。

 でもね…、リアムがその紙を捨てるか破るか隠すか燃やすかしないと私は構ってあげないよ?

 だってそれは…。


「お前らいい加減にしろよ!!今日で夏休み最後じゃねーか!!宿題終わってんのか!!?」


 ついに我慢の限界がきたのか、リアムはそう叫ぶと私に手に持っていた紙の束を思い切り突きつけた。その紙が私の顔面に張り付き、私は一瞬呼吸困難に陥る。

 因みにリアムは既に学校を卒業した身であり、宿題などそんなもの課せられていない。そう、リアムが手に持っているのは私の課題そのものなのである。

 リアムが怒っている理由もそれであり、私の課題の紙には何1つ文字は書かれていない、綺麗な新品であった。


「だから4人で現実逃避してるってのにさ〜、うるさいなーリアムは」


「現実逃避すんじゃねぇ!現実見ろ阿保」


 リアムは現実を突きつけながら私をそう罵ると、次はラルちゃん、ミントちゃん、ロアちゃんの順に周りを見渡した。口笛を吹いてそっぽを向くロアちゃんはまず終わっていないのだろう。すぐにリアムの怒りの矛先の餌食となった。

 無言で魔法を発動させるリアム、とても高度な技を一瞬にしてやってみせると、その発動させた魔法、水属性の魔法でロアちゃんは地面を濡らすことなくびしょ濡れとなった。


「い、いきなり何もするのさ!ボクのお菓子が水分でモッサモサに…」


「知るか。宿題を未だに終わらせてないお前が悪い。今すぐ始めろ。今すぐだ!!」


 こうなったリアムはもう誰にも止められない…。怒りに身を任せてしまっているため、あのようにいつ魔法が飛んでくるかわからないのだ。反抗など考えないほうがいい。


「おいラクア、手が止まってるけど…宿題する気あんのか?」


「は、はいぃ!!」


 リアムが木属性の魔法で瞬時に出現させたテーブルの上に私は宿題を乗せ、鉛筆を握った。問題は全くもってこの通り、お手上げ状態だけども。

 あとロアちゃんは今さっき宿題を取りに家へとダッシュで戻っていった。リアムが千里眼を発動させてしまってる以上、逃げることなどできないのが厄介なところだ。


「そういやラルちゃんはもう宿題終わってるの?」


「まあ、最近終わったくらいだな。毎日少しずつしていたからな」


 流石THE真面目なだけあるなぁ。私はそんな毎日勉強する根性ないよ。もし勉強が嫌いじゃなかったとしても飽き性の私にはとても無理だね。

 私はそんなラルちゃんのことを考えるとすごいなと感心して宿題の方へ目線を落とした。

 だが全くわからない。手が動かない。どうしようもない…。うん、やっぱ現実逃避するしかないよね。


「ねぇリアム、ちょっと休憩して…」


「いやまだ鉛筆握っただけじゃねーか。わかんねーとこあるなら教えるから言えよ?」


「ですよね〜…本当っ!?」


 激昂状態のリアムだからぶっ叩かれる自信あったのに、だいぶ落ち着いてきたのか、返される返事は親切なものだった。今ならもしかしたら逃げれるかもしれない。

 私が席を立とうとすると、リアムから頭を手で押さえつけられた。


「でも、逃すとは言ってねーからな?」


「で、ですよねぇ〜」


 私はリアムの腕の力に反抗することなく床に正座という姿勢に戻ると、もう一度宿題という名の紙の束に目を向ける。そして、リアムの方を向き口を開いた。


「この、初級魔法のとこの問題がわかんない」


「…わかんねー…のか」


 そして私とリアムの間に一時の沈黙が流れる。恐らくリアムには簡単すぎて何故わからないのかが逆にわからないのだろう。今までリアムと一緒に過ごしてきてこのようなことは何度かあった。だから覚悟はしていたけど、実際にこの状況になってしまうと少々傷つくものがある。

 いや、ここでリアムがわからない私を馬鹿にしてこの場を終わらせるならまだいい。でもリアムはこの簡単な問題のどこがわからないのか必死に考えようとするのだ。私のレベルに合わせようとするのだ。

 私にとってこれほど辛いことはない。


「ロア、ただいま戻りましたァッ!!」


 部屋で沈黙が続く中、ロアちゃんの大きな声が何度か響き、ロアちゃんはその後何事もなかったようにテーブルの置いてある場所へ移動し、自分の席へとついた。

 因みに今回何も話してないミントちゃんであるが、彼女は夏休みの初日に宿題を全て終わらせていたらしい。そして、今回全く喋らなかったのは怒ったリアムが怖かったからだと。

 この後リアムがミントちゃんに謝りに行ったようだけど、その話はまた別で。



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