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エルフっ娘とトラウマ

女の子に囲まれるということが必ずしも幸せというわけではないのです。

「なんで俺の家の前に集まってんだよ!!」


 ロアちゃん、ミントちゃん、ラルちゃんを連れて突撃しようと考えてた矢先、突如二階から聞こえてきた声に私は少々怯んだ。

 まさか入る前に勘づくなんて、いくら魔法の天才と呼ばれるリアムでもここまで察知能力が高いとは思ってなかったよ。

 まあ、それでも突撃することには変わりないんだけど。

 私はミントちゃんラルちゃんロアちゃんの3人を手招きすると、リアムの家の入り口の隣側にべたりと張り付く。

 そして、近くには誰もいないことを確認するとそこからは簡単、私たちは「せーの」の掛け声とともに家の中へ一斉に上がり込んだ。それだけで勢いは止まらず、リアムの部屋まで猛ダッシュで走っていく。


「お前らが来たらいつも俺の部屋がめちゃくちゃに散らかるんだよ!!入ってくんじゃねー!!」


 私たちが部屋に入ろうとしたところ、勢いよく閉まるドアに私たちは行く道を阻まれる。そのドアの後ろにリアムはくっついているのか、ドア越しに荒い息が聞こえてきた。

 何もそこまで拒否反応しなくてもいいのに…。


「お前らに女にいじられ続けてきた俺の気持ちがわかるかよっ…」


 説明しよう!!リアムは今まで私たち4人と遊び続けたことにより女性に囲まれることにトラウマが植えつけられていたのだ!!

 女性1人に対しては大丈夫らしいけど…、どうしてだろうか。遊ぶときもリアムの髪型いじってみたり、いろんな服着せたりしてただけなんだけどなぁ…。

 私たちの前にたたずむ扉は必要以上に力強く閉められており、どうやら開けようにも開けられそうにない。


「どうやらこのままだと追い返されちゃいそうだよ…」


「だな…何か策でもあればいいんだが」


 私に続き、そう発言したラルちゃんは腕を組んで目の前にある扉をジッと見つめた。

 せっかくここまで来たのにこのまま帰るなんて面白くないよね。さすがはリアムを追い詰めた4人だけあって同じ考えを持っていたようだ。

 4人ともジッと扉の方をジッと見ていると、ロアちゃんが1人、こっそりと立ち上がった。

 そしてロアちゃんはそのまま音を立てずにこっそりと扉のドアノブに手をかける。そのあまりに完璧な動作に私たちは息を飲んだ。

 

「今だぁぁぁっ!!」


 その一言と共に、口に咥えられていたシュークリームがべちゃりという音を立てて地面に落ちた。

 そして、リアムが気を緩めた瞬間を狙ったためか、ドアノブは簡単に回転し、ドアは勢いよくリアムの部屋の中へと押し出される。

 ふと下を見ると、リアムが床に大の字に張り付いていた。いきなり押されたせいか、ドアを押さえていたリアムはドアが開かれる反動と共に前へ吹っ飛ばされたようだ。


「ふっふっふ…観念するんだよっ!」


 私はそう言うとリアムの目の前に仁王立ちした。なんだか前にも見たことあるような光景である。まあ特に気にすることではないだろう。

 それに今日はちゃんとリアムの用事があってきたんだよ!正確にはリアムのお母さんからの依頼みたいなものだけど…。


「り、リアムくん大丈夫ですか?」


 そんな私たち3人がリアムを見下ろしている中、ミントちゃんだけがリアムに救いの手を出し差し伸べた。

 リアムはまるで天使を見るような目でミントちゃんの手を取ると、ミントちゃんに隠れるようにして私たちから目線を外す。

 ミントちゃんを盾に使うとは…リアムも堕ちたもんだね!見損なったんだよっ!

 

「かかれーっ!リアムを外に引っ張り出すんだよっ!!」


「「おおーっ!!」」


 私がそう一声あげると、ラルちゃんとロアちゃんは声を合わせてリアムに掴みかかった。

 これを見ると私たちが乱暴してるように見えるかもしれないけど、仕方ないのだ。これもリアムのお母さんから言われたことだから…。

 引きこもってるリアムを外に連れ出してって頼まれたからね!

 だから外に連れ出すためには何でもしていいともリアムのお母さんから言われているんだよっ!!


「ちっ…、こいつら俺を太陽の下に晒そうとしてやがんのかっ…」


 ラルちゃんとロアちゃんが掴みかかってくるのをリアムは横に転がりながら華麗に躱す。セリフも格好つけた言葉を使っているが、足元がガクガクと震えているので何ともガッカリな…ガッカリとしか言いようのない状態である。

 ミントちゃんを除いた私たち3人がゆっくりと歩みよる度にリアムのその震えは増していき、顔もだんだんと青ざめていくようだった。


「こ、こここれ以上近づくんじゃねーぞ…。いやお願いだから近づかないでっ…近づ…」


 ここで私は気づいた。

 私たち3人が囲んでいくことによってリアムのトラウマを呼び起こしているということに。

 そして、私たち全員が気づいた時はもうリアムは限界だったのだろう。アワを吐きながら床に尻餅をつき、動かなくなったのだ。

 これはおそらく気絶しているなと私は何となく察した。私たちはその様子を上から見下ろすと、このリアムの有様に少々罪悪感がこみ上げてきた。

 昔私もリアムのことなんて考えずに無理やり遊びに付き合わせてたからな〜、リアムがこうなったの私にも責任あるよ…。

 私はロアちゃんラルちゃんと顔をあわせると、3人が同時にうんと頷いた。


「とりあえず外出せって言われてるし外出しとこうか」


 私たち3人に容赦などなかったのだった。

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