エルフっ娘とお着替え
1つ、私は皆様に秘密にしていることが…ある!
今日はそれを教えようと思ったんだよ。みんな気になっていると思うんだよね。その気持ち、私もわかる…わかるよ。
私はフッとわざとらしく息を漏らし、ニヤリといやらしい笑みを浮かべる。そして、大きく息を吸い込んだ。
「そう!!それは私の髪の色が金色であり!素晴らしいショートカットのサイドテールだということをだよっ!!」
私は大きく叫んだことに後悔はしていない。なぜならいつもと変わらないから。これが私の平常運転なのだからっ…!
あ、可笑しなエルフだとかそんな風に見られるとちょっとだけショック受けちゃうな…。
やっぱりこれ平常運転じゃないよ、私本当はもっとおしとやかな完璧エルフだから。
「ラクアちゃん?1人で何しているのです〜?」
ミントちゃん…1人でって言うの止めてくれたら嬉しいかな!?本当に私が可哀想なエルフになっちゃいそうだから…。いやもうなってるって言われても否定はしないけどさっ。
私が頭を抑えてうずくまっているとミントちゃんも私に合わせるように跼み、私の様子を覗くように顔を近づけてきた。ミントちゃんの表情から心配している雰囲気がよく伝わってくる。
ミントちゃんの心優しき配慮が今の私にグサグサと精神的ダメージを負わせているよっ…!
「まあ、これくらいで凹むほど私のメンタルは豆腐じゃないんだけどね!今日はミントちゃんで楽しんじゃうんだよ〜っ」
「た、楽しむって何をする気ですかぁ〜っ」
私は勢いよく立ち上がると、ミントちゃんの慌てる顔を見てニコニコしながら自分のクローゼットを開いた。
中には私じゃ着れないようなサイズの服や、逆にかなり大きめな服など色々な種類のものが収容されている。そう、これ全て!私が作ったのである!
私の家は昔から服を作ることが専門だったみたいで、そのせいか色々とその知識を教えてもらった私も服を作ることに関してだけは得意なんだよ。それで沢山作っていたらクローゼットの中がこんなことに…。
まあここまでで大体想像はつくと思うけど…、要するに私は…したいのだ。ものすごくお着替えさせたいのだ。いや、近くにさ、こんな可愛らしいお人形さんがいるというのに…お着替えさせないわけにはいかないと思うんだよっ!!
そして私は迷わずクローゼットの中から一瞬で何着もの服を選び出し、両手に構えた。
「ら、ラクアちゃん…?目、目が怖いです…?」
「動くなっ!大人しくしていれば何も痛いことはしないんだよ…」
戸惑うミントちゃんをそのままに、私は両手の衣服を掲げ、そのままミントちゃんの方へ飛びかかる。だが、そこで我慢できなくなったミントちゃんは私の飛びつきをひらりと躱し、壁まで逃げて距離をとった。
そこまでしなくても、冗談なのに…。そう私の思っていることもミントちゃんに届くわけがなく、ミントちゃんの瞳は既にうるうると、今にも流れ落ちそうなほどに潤っていた。
「いや待ってミントちゃん!?冗談だよぉ!!泣かないでミントちゃん〜!」
ここでミントちゃんも落ち着きを取り戻したのか、潤っていた瞳を袖で拭う。そして「本当?」と確認の問いを発しながら壁際からこちらへゆっくりと戻ってきた。
いやいや友達にそんなことしないよっ!ミントちゃんから見て私どういう認識なの!?
私今までにそんな酷いことミントちゃんにした覚えないよ。あるとしてもそれリアムにだよっ!
まあ近づいてくるミントちゃんを見て、とりあえずこれで私の思惑通りになるかと…そう思っていたのだが、突然ここで私の部屋のドアが空き、またしても私の期待はぶち壊された。
「大丈夫かミントぉ!!」
物凄い気迫とともに私の部屋に上がってきたのはラルちゃんだ。いきなり大きな音が聞こえたと思ったらそれもつかの間、物凄い勢いで入ってきた。堂々とした不法侵入である。
それにしても、ミントちゃんの危機をあれだけで察するとは…過保護過ぎだよ。ド過保護だよっ!!
「あ、あれ…ラクアとミント…2人で何をしてるんだ?」
衣服を両手に構えた私とその前に座っているミントちゃんを見て、自分の思ってた事態と違かったのか、ラルちゃんは戸惑いながらその場に立ちすくんでいた。
しかし、考えてみるとこれはかなり好都合である。だって、今までラルちゃんは何度も私からお着替えされることを拒んできたからね。もちろん私のクローゼットの中には身長の高いラルちゃんでもサイズの合ってる服はたくさんあるよ?だってそのために作ったんだから。
私は無言でその場を立つと、整理整頓されているクローゼットを開き、中から一瞬でラルちゃん用に作っておいた衣服を抱えるほど取り出す。
そして不敵な笑みを浮かべたままラルちゃんを見つめた。
ラルちゃんはその状況に感づいたのか、既に逃走体制に入っている。さっきまでの威勢はどうしたのか表情は半泣き状態。
でも今回は絶対逃がさないよっ!!
「ミントちゃん!ラルちゃんを捕らえるんだよっ!!今日という今日は逃さないんだからね!」
「了解です〜!」
「やめろぉぉ!!やめてくれぇ〜!」
ミントちゃんは標的が変わったのに気づいた瞬間、私に敬礼をし、無駄のない動きでラルちゃんの逃げ口を塞いでいく。
逃げようとしたところをミントちゃんに捕らえられたラルちゃんは、そのまま不気味に笑う私から逃れる事などできず…そのまま日が暮れるまで私のお着替えごっこに付き合わされるのだった。




