表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

エルフっ子と人間

 私はエルフだ。人間とあまり関わっていないためか今の社会状況だとか、そんなことはこれっぽっちもわかりません。

 人とはあまり関わらないほうがいいって昔から言い伝えられてはいるんだけど…。


「実際人もエルフも大して変わんないよね。なんでこんな離れた森の中に住んでるんだろ」


「それは…そりゃあ人とアタシたちじゃ魔力の量が…、いやごめんやっぱりなんでもない」


 ん?ラルちゃん今何か私にとってすごーく失礼なことを口走ったような気がしたんだけど気のせいかな?

 私が笑顔でラルちゃんの方へ顔を向けると、ラルちゃんはその逆側へと私の視線から逃れるように顔を背ける。あ、私の顔は笑顔だけどもちろん目は笑ってないよ?

 毎回言ってる気がするけどさ、私だって好きで魔力乏しく魔法も全然使えないわけじゃないんだよ。

 もう少し他の理由考えてくれてもいいのに。全くラルちゃんは〜。


「まあ、とりあえず落ち着いて…な?

あ、そうだここ村の入り口だし誰か来るかもしれないぞ?」


「もしかして人間が来たりして!?」


「いや、こんな辺境までくる物好きはいないと思うけど」


 ラルちゃんの一言で場は静まり、私とラルちゃんの間で無言の状態が続いた。

 私のワクワクした気持ちはたった一瞬で終わったのだ。なぜ一瞬で終わったかのかというと、それはラルちゃんから発せられた現実味ある言葉によって押し潰されたからだ。

 なんでこんな時までマジレスするのラルちゃん!!少しくらい「そうだね」みたいな感じで言ってくれてもいいんだよ!?

 思ったことをすぐ言うのはラルちゃんのいいところだけど悪いところでもあるよ…。


 そんなことを思いながら私はふと前の方へ目線を向ける。するとそこには何らかのシルエットがあり、こちらへ向かってきているようだった。みた感じ人形のシルエットだ。もしかしたら人間かもしれないよっ…もしかしてのもしかしての軌跡が今ここで起きるのかもっ…!!


「ラルちゃんラルちゃん!何らかのシルエットがこっちへ向かってきてるよっ!」


 私から急に肩を叩かれ驚きながらも、私が指差した方向へラルちゃんも目線を向ける。どうやらラルちゃんも驚いているようだ。


「本当だな…。まさか、まさかだけど人間がこちらへ向かってきてるのかぁー!?」


 私とラルちゃんはそのシルエットの方を注意深く見つめた。そのシルエットは何の迷いもなく明らかにこちらへと近づいてきている。片手には何らかの棒をもち、もう片方には荷物でも入っているのか箱型の入れ物を身につけていた。

 あれはどう見ても冒険者の格好…!!きっと人間に違いない。

 私とラルちゃんはジッとそのシルエットを睨み、注意深く見つめた。

 少しずつ近づいてくるそのシルエットはだんだんと姿を露わにしていく。

 顎から生えた無精髭、肩から腰にかけてかなりの筋肉質だ。そして極め付けにとんがった耳!

 やはりどこからどう見ても…。うん、どう見ても…。


「人間じゃないよエルフだよぉぉ!!」


「まあ、そう簡単に来るわけないよな…」


 私とラルちゃんはガックリと肩を落とすともう一度、人間にはではなかったシルエット、おじさんエルフへと目線を移した。

 担いでいた謎の棒はよく見たら魚を釣るための釣竿であり、箱型の入れ物はその釣った魚を入れる用のものだった。そのことを確認し終えた私はもう一度ガックリと肩を落とす。


「ねえねえおじさん、どうしておじさんはエルフなの?」


「いや突然そんなこと言われても困るんだが…」


 おじさんは私からの問いに戸惑いながらもそのまま立ち去っていった。

 まあ、現実そう甘くないよね。ラルちゃんの言うとおりだ…、私もわかってなかったわけじゃないけどさー、…やっぱり期待しちゃうよね。


「あー、一度でいいから人間見てみたいなー」


「アタシだって見てみたいよ。ま、どうしてもみたいならこの村でればいいんだけどさ」


 ラルちゃんはそう呟くと、どこか遠くを見つめるように、ぼーっと空を眺めていた。

 その目はどこか物足りないような、そんな雰囲気が出ていて、このままではいつかどこか消えていってしまいそうな…、そんな気がした。

 ラルちゃんがこの村から居なくなるなんて考えれないし考えたくもない。ラルちゃんが居なくなるなんて…そんな…。


「ダメだよラルちゃんっ!私を置いてかないでよぉ!」


「なんでそうなるんだよ!アタシはどこにもいかないって!!」


 耐えきれずにラルちゃんに飛びついてしまった私は、その勢いに任せて思いきり抱きつく。それに動揺したラルちゃんは顔を真っ赤にして私をドンと突き飛ばした。

 いや、ラルちゃんがどこにも行かないならいいんだけどさ、行くなら私も連れて行ってくれないとね!

 尻餅をついた私は「ごめんごめん」と手で謝りながら、もともと座っていた位置まで戻り、再び誰かこないか村の中入り口のほうへ目線を向けた。

 まあ、この後も人間なんて来なかったし、数分経って飽きた私たちはすぐにそこから立ち去ったんだけどね。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ