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エルフっ娘と試験


 私は今、地獄を見ている。なぜエルフに生まれてきたのかをこれほど恨んだことはないというほどに。

 とういうより、なぜ、エルフだからって魔法が使えないといけないのか。別に使えなくったって生活に支障が出るわけじゃないんだし、そんな無駄な努力する必要ないよ、絶対に。

 今あってるこの試験も私にとっていらないものの1つに決まってる。こんなもの受ける必要なんて絶対ないんだよ。


「というわけで先生、私帰ります」


 私はそんな結論に達すると即座に実行しようとその場から立ち去ろうとした。

 だがここの先生はエルフの中でも魔法が得意なのだ。要するに魔法のプロフェッショナル…簡単に帰してくれるはずもなく、目の前に突然現れた見えない障壁によって私の行く道は阻まれた。


「どうして帰っちゃダメなんですか〜先生〜!どうせ私ができないことわかってるんでしょ〜!!」


「そんなことはありませんっ、ラクアさんも立派なエルフなんです。ラクアさんだけ特別扱いするわけにはいきませんっ」


 そう言った先生の顔を不機嫌そうな表情でジッと睨みつけると私は元いた場所まで戻った。因みにこの村では授業もすべて実習のため、試験の時も授業の時も机を使うことはない。その点においては読み書きを勉強しないから楽なんだけどね。

 でも魔法が使えない私にとっては読み書きの方が嬉しいんだけども。


「…で、今日はどんな魔法で恥晒せばいいんですかー先生」


「そんなこと言わないの、ラクアさんだって頑張ればできるんだから。初級魔法だって使える魔法増えたじゃない」


 先生は右手の人差し指で私のデコを小突くと、試験の内容を教えるためか、生徒たちの中心へ戻っていった。先生は魔法もできてとても美人な女性である。これほど完璧といえるエルフは滅多にいないだろう。それに比べて私は見た目も幼く魔法も使えない。これほどエルフっぽくない女性も滅多にいないだろう。


「ダメだ…自分で考えて哀しくなるよ」


 ちょっとだけでいいからリアムのようなでっかい魔法が撃てるようになれたらなぁ。私の魔力量じゃとてもあんなのできないけど…。あ、言うの忘れてたけどリアムは何度も飛び級していたのでもう魔法の教育は受けておりません。

 そのおかげで毎日毎日家でぐーたらぐーたら…、考えるだけで腹がたつよっ!

 

 私がそんな1人で愚痴っていると、先生が試験の説明を始めたのか、周りのみんなが先生の方へと体を向けたので私も合わせて先生の方へ体を向ける。

 まあ、私が先生の話を聞いたところで結局失敗するし、そこまで聞く意味ないと思うけど。


「今日は初級魔法、ファイアボールの試験です。ファイアボールを創り出したら、先生のだす水の的3つを全て撃ち落とすこと」


 私はその先生の話を聞いてさらに肩をガックリと落とす。いや、ファイアボールくらいの魔法だったら発動くらいならできる。だけどコントロールが全くできず…暴走させてた覚えが何度もあったからだ。

 運が良くても当たるの一個だけだろうし…やっぱりこっそりと帰ったほうが…。


「ラクアさん?帰しませんよ?」


「心の中読まれてたぁっ!?」


 こうなったら仕方ない…か。やるだけやってみるしか…。

 私はハァ…とため息を吐くと、逃げようとしていた足をピタリと止めた。

 そしてみんなが囲んでいる中央はと足を運んでいく。だってどうせみんなやるんなら1番最初にやっとほうが楽だし…。

 私は失敗することを前提に頭の中で言い訳しながら先生の前に立った。


「準備はいいですか?ラクアさん」


「いつでも大丈夫だよ。火の玉出すくらいなら…たぶん」


 私がボソリとそう呟くと、先生の合図があり試験がすぐにスタートした。

 先生の出した水でできた的が宙をふわふわと舞い、少し離れたところを空中で停止した。

 あれを狙い撃てば試験は終了ってわけだね…。私はとりあえずやってみようと頭の中で考えながら手のひらに魔力を集中する。

 この体の中にある魔力を熱素に変えて、火の玉を出現させるのだ。集中力が乏しい私にはこれだけでもなかなか辛い作業…。


「えぇと…じゃあいきますね」


「ええ、いつでもどうぞ」


 先生からの確認を得た私は左手で右腕を抑え、右手を的に向ける。そして熱素が大きくなっていくのを感じた時、私はそれを発射しようと右手に力を込めた。


「いけぇ!ファイアボールっ!」


 しかしそれはポンっという音を立ててただの煙へと変化する。

 その煙はモクモクと動いていき、水の的へポスッと当たって消えていった。

 一瞬の沈黙のあと、私はあまりの恥ずかしさに地面に両手をついた。


「まさかファイアボールも撃てないなんてぇ〜、もうお嫁にいけないよ!!」


「お、落ち着いてラクアさんっ、的には!的には当たりましたから!あと2つ当たれば合格ですから〜っ」


「もう嫌だぁ〜!私帰る〜!!」


 私はそう叫ぶと、先生が制止するのも振り切ってさっさとその場から立ち去っていった。

 それからあとでリアムに聞いたんだけど、あのスモークは一応ファイアボールの上位版の中級魔法なんだってさ。大量の煙で視界を見えなくするんだと。

 私のはポンっと音を立てる程度にしかでてなかったけどね…。

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