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エルフっ娘と崖


「ラクアちゃん、私はどうしてもあの花がほしいのです〜」


 ある日のこと、何を思ったのかミントちゃんは崖の上に咲く花を指差してそう言った。

 とりあえず1つ思ったのは、どうしてリアムとか魔法が使える人ではなく、私を連れてきたのかってことだ。だって私は全然魔法使えないんだよっ?ほしいって言われたって何もできないんだよっ?

 あんなに高いところにある花とてもじゃないけれど私には採れそうにない。


「私じゃどうしたってとれないよ!高すぎるよっ!」


 はっ…まさかこやつ、私に登れとでもいおうというのか…!!

 私が恐る恐るミントちゃんの方へと振り替える。するとミントちゃんは変わらぬ泣きそうな表情で花の方を指差しながら私の顔色を伺っていた。

 私の行動でこの顔が天使のような笑みに変わるか天使のような泣き顔に変わるってことなんだね…。

 まあどっちにしろ天使な表情なんだけど。


「よし、ではあの花を採るために頑張るのです〜」


「いやいや大丈夫だよ!私が頑張るからっ!!」


 急に崖をよじ登り始めたミントちゃんを制止し、私は慌てて側へ駆け寄った。しかしミントちゃんは私の言うことなど聞こえていないのか、必死に上へと登っていく。

 そうか…ミントちゃんは私に頼んでたわけじゃなかったんだね…。ただの独り言だったんだ。それを私は自分に頼んでるんだと…。


「私も!私も手伝うよっ!」


 そんなミントちゃんをただ眺めてるなんて私にはできないよ!!

 私はミントちゃんに続くように崖をよじ登り始め、崖の上にある花を目指して上へ上へと上がっていった。

 花までの高さにはまだまだ遠いけれど、ミントちゃんも頑張っているんだ。私がここで諦めるわけにはいかない。


「ミントちゃんっ!諦めちゃだめだからね!諦めなければそこにお花はあるからね!もっと…もっと熱くなるんだよミントちゃんっ!!」


「ら、ラクアちゃん熱いです〜。下から熱気がくるのです…」


 あれ、私張り切り過ぎてたかな…。すぐにミントちゃんのすぐ下まで追いつき、声援を送っていた私はそうふと思った。

 あんまり応援しすぎて逆にミントちゃんのやる気が削がれたら私が来た意味が…いや、私のせいであの花をゲットできなかったことになる。

 そうなってしまったら…ラクア、めちゃくちゃショックでございます。

 これはあれだあれ。無言で期待の視線を送ればいいんだよ。そうだよきっと。


 私は今さっきの反省を生かし、次は無言でただジーっとミントちゃんを眺めることにした。真顔で下から覗く私の姿はどこからどう見ても変態に見えるだろうっ!!

 しかしこれもミントちゃんのため、私が辞めるわけにはいかないのだっ…!!


 ミントちゃんが必死に花を目指して登り、その真下を私が無表情で眺めながら登る、そんな状態が数分続いていた。


「いや、何してるんだお前ら」


近くからラルちゃんらしき声が聞こえてき、それに驚いた私はミントちゃんを置いて1人だけ地面へと落下した。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


「ほう…、ミントが頑張ってるからラクアも応援していたってことか」


「そうなんだよっ!ミントちゃんがどうしてもあの花が欲しいって言ってたからっ…」


 私は未だに崖を登り続けているミントちゃんを指差し、ラルちゃんはその上にある一本の花に目線を移す。

 1人で崖をぐいぐいと登っていくミントちゃんを見て、数秒間がんばってるなーと感心しながら眺め、ラルちゃんもうんうんと頷いていた。

 が、そんな様子を見ていた私たち2人はすぐに青ざめた表情になり、お互いの顔を見合わせた。

 

「危ないよっ!私は頑丈だから落ちても平気だったけど、ミントちゃんが落ちちゃったら大変だよ!!大怪我だよぉ!!」


「さっきはラクアが下にべったりくっついていたから特に何も思っていなかったが…、このままじゃ落ちちゃうぞ!!どうしようラクア!!」


 そんなことを言い合ってる間にもミントちゃんはどんどん上へと登っていき、もう手を伸ばせば届くのではないかというところまで高いところに達していた。

 もう今から私が登ったところで追いつけそうにないし、ラルちゃんだってそれは無理だ。

 ついにミントちゃんが花に手をつけた時、私はふとあることに気づいた。


「そ、そうだ!私は魔法が使えないから何もできないけど、ラルちゃんの魔法ならっ…!」


「そんな私だってミントだけを正確に捉えて助けれる魔法の技術なんて持ち合わせていないぞ」


「うぇ、そうなのっ!?」


 ラルちゃんでもだめなら…もう手はないのかな…。

 私は諦めきった表情で地面に手をつく。そんな中、ミントちゃんはようやく花を手にできたのが嬉しかったのか、満面の笑みで私たちを見下ろしていた。

 そんな様子を見て、私たち2人も自然と顔が笑顔になる。


「そうだラクア。ミントも頑張って花を採るのとができたんだ。私たちもあきらめるわけにはいかないだろう…!?」


「そうだねラルちゃん、私たちが諦めるわけにはいかないよっ!」


 今あんなに笑顔なミントちゃんの表情を泣き顔に変えるわけにはいかないっ…!!

 私とラルちゃんはぐっと拳を握りしめると2人揃って崖を登り始めた。まだ間に合う…、まだ、今ならミントちゃんが落ちる前に追いつくことだって…!!


「2人とも急に崖を登り始めてどうしたのです?崖の上にあった花は私が手に持っていますよ〜」


崖を登ろうと崖に手をつけた瞬間、背後から聞こえたその声に私たちはゴホンと咳払いすると何もなかったように帰って行った。

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