エルフっ娘と花火
「さあみんな!花火とやらをぶっ放そうではないかっ!!」
「急にテンション高い上に、今ここに花火なんてないよ」
「それで諦めていいとでも思っているのかいロアちゃんっ!!」
食べ物の話題ではないせいか、全く興味を示さないロアちゃんはめんどくさそうに私からそっぽを向いた。
夏といったら花火、それはエルフだけのこの村でも慣例のお遊び…ではないけどやってみたいんだよ。
「花火がだめってなると、…肝試ししかないよね」
「いや、それはだめだよラクア。ボクは花火大賛成!花火決定!さあやろう!!」
みんなご存知の通りロアちゃんはお化け、幽霊が大の苦手。これぞまさに私の作戦勝ちなんだよ。
これでみんなで花火はできるはず…、ミントちゃんとリアムさえ了承してくれればだけど。
因みにいつもいるラルちゃんは用事があるためおやすみみたい。
「楽しそうだから私もやるです〜」
「どうせ俺には拒否権ないんだろうから何も言わん」
「では早速準備に取り掛かろうぞっ!」
こういうときは勢いが1番!やると決まった瞬間に私はその場から立ち上がり、炎の魔素を村中から集め始めた。
いや、正確には集め始めた瞬間にリアムによる鉄槌が下された。
現在私の頭には大きなたんこぶが1つ、かなりの存在感を放ちながら堂々と仁王立ちしている。
何もここまでしなくてもいいのに…、私だって一応か弱い乙女なんだよ?
「馬鹿お前、村全体を爆破するつもりか。馬鹿がつくれるほど花火は甘くねーんだよ」
「馬鹿って言った!今私のこと二回も馬鹿って言ったぁ!」
私が馬鹿だということなんて百も承知である。だがしかし!他人に馬鹿と言われることがどれだけ私の心を傷ませることか!
リアムが思いやりという気持ちさえ持ち合わせていれば今頃モテモテだっただろうに。
いやだって、見た目はイケメン、なんでも完璧にこなす天才、その上エルフなんだよっ!エルフ!ここ重要!
「ま、この性格だから…仕方ないよね」
「おい、ラクア。今お前が何考えてるかくらい簡単にわかるぞ。この野郎」
何やらリアムが私にお怒りのようだが、あえて聞いてないフリをする。
今の状況でわかってないのは恐らくミントちゃんだけ。頭の中花火のことでいっぱいなんだろうな…。
とても幸せそうな表情で1人だけ違う世界にいってるのが目に見えてわかる。
って、ロアちゃんもこれ食べ物のことしか考えてない表情だよ。私とリアムのやり取り全く耳にしてなかった感じだよこれ。
「まあ、リアムが童○なのはどうでもいいとして…、本題は花火なんだよ!」
「おい、どうでもいいことなら言う必要…ね、ねーだろ!」
「では赤面リアム君には花火役お願い致します。私の魔力操作じゃ花火なんて不可能らしいのでっ!」
リアムに仕事を押し付けると、絶賛自分の世界に入り込んでしまっているロアちゃんとミントちゃんを連れて外へ出る。因みに私たちがいた家は毎回お馴染みのリアム宅だ。
家からでると、あたりが真っ暗なのを確認して広い危険じゃない場所を探す。
ミントちゃんが良さげな場所を見つけたみたいなので私とロアちゃんもそのあとを追った。
「花火楽しみだね!」
「花火なんて聞いたことしかないけど、本当は火薬とか色々してやっとできる代物なんだよね。ボクたちだけでできるのかな…」
「いや、できるわけねーだろ。できたとしてなんちゃって花火だ」
最後に追って出てきたリアムがそう言うと、先頭にいたミントちゃんが急な踏みとどまる。
「今日は、星が綺麗なのです〜」
ミントちゃんが夜空を見上げ、指を指す。
私たちエルフの村は、魔法だけが発達していて文明は全くといっていいほど発達していない。
街の人間たちは電気や石油なんてものを使って動力を得ているみたいだけど、私たちはそれを全て魔力だけに頼っている。
そのせいか、夜の空はとても綺麗だ。
「確かに、今日は今月でも1番ってくらい星が見えるな」
「食べたい」
「いや、食べちゃだめだから」
4人揃って夜空を見上げる。180度夜空が覆っているこの場所はどこか神秘的で、いつのまにか花火を打ち上げることも忘れてしまっていた。
何もないこの村だけども、自慢できるところもあるんだなって…少し思った。
夜空が私たちを包んでいる気がする。
気づけば私は真っ青な青空の下で寝息をたてていた。